食衛法改正 骨子案 パブコメ開始 来月7日迄 (2018.1.25)


 厚生労働省は19日、今期通常国会に提出予定の食品衛生法改正の骨子案をまとめ、意見募集(パブリックコメント)を開始した。健康食品については、健康被害を未然に防止するため、特別の注意を要する成分を含む食品の健康被害情報の報告を義務付ける。「特別の注意を要する成分」の選定は、薬事・食品衛生審議会や食品安全委員会で議論される見通しだ。15年ぶりとなる今回の食衛法改正により、事実上、厚労省は健康食品業界への監督強化に乗り出すことになる。

 改正骨子案は本紙6面に掲載の通り。16日に開かれた薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会の議論を経てまとめられた。

 改正骨子案へのパブリックコメント受付け期間は2月7日までで、約3週間と短い。異例のケースといえよう。意見募集後、厚労省は食衛法改正案としてまとめ、今期通常国会に提出する方針。提出は会期後半になるとの観測も出ている。

 今回の食衛法改正は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、全ての食品事業者を対象とするHACCPの制度化、広域的な食中毒対策、食品リコール情報報告制度の創設、国際整合的な食品用容器・容器包装の衛生規制などが目的だが、昨年7月13日に国民生活センターが公表したプエラリア・ミリフィカを含む食品に関する注意喚起を背景に、健康食品による健康被害の未然防止も目的に加えられた。

 具体的な議論は、厚労省が昨年9月に設置した「食品衛生法改正懇談会」でスタート。同懇談会は同年11月にとりまとめを行っている。

 厚労省は同懇談会において、健康食品に関する「課題」として、①関連事業者の把握、監視指導②危害事例の収集・処理体制の充実強化③消費者に対する健康食品に関する知識の普及啓発──の3点を提示。

 これを受けて懇談会のとりまとめでは、健康食品に関して、健康被害防止の観点から、「リスクの高い成分」を含む健康食品等について、製造工程管理や原材料の安全性確保のための法的措置を講じること。事業者から行政への報告の制度化を含む健康被害の情報収集・処理体制を整備する――の2点を提言として盛り込んだ。

 このため改正骨子案では、前述の「リスクの高い成分」を「特別の注意が必要なものとして厚労大臣が指定する成分」と位置づけ、これを含有する食品を製造・販売する事業者に、死亡や重大な疾病など健康被害情報の報告を義務化することが明記された。

厚労相が成分指定
 改正骨子案に添付された資料では、「厚労大臣が指定する成分」について、健康被害情報や文献情報など収集し、薬事・食品衛生審議会、食品安全委員会などで議論を行い、パブリックコメント募集後、厚労大臣が指定することとしている。

 また、懇談会とりまとめで提言された「製造工程管理や原材料の安全性確保のための法的措置」に関しては、今回の食衛法改正での対応ではなく、告示の改正で厚労大臣が指定する成分を含有する食品の製造管理(GMP)や原材料・製品の安全性の確認を制度化する。

 一方、改正骨子案では、現在、食衛法の政省令で指定されている34の営業許可業種の見直し(自治体の条例で対応)を行うほか、許可業種以外の事業者も把握できるようにするため、新たに営業届出制度を創設することも盛り込まれている。

 現在の営業許可34業種が決められたの1972年で、以後、見直しは行われておらず、健康食品製造・販売業は含まれていない。厚労省は前述の懇談会に提示した課題で、「健康食品関連事業者の把握、監視指導」を挙げているため、HACCPの制度化と相まって、健康食品製造業も創設される営業届出制度の対象となる可能性がある。

考察 「特別の注意」に歯止め必要
 「特別の注意を要する成分を含む」──改正食品衛生法には、そのような健康食品に限定した新たな規制が盛り込まれる方向となった。

 具体的には、そうした健康食品の製造・販売事業者に対する健康被害情報報告の義務化。また、改正法には盛り込まず、現行法の告示を改正する形で、適正な製造・品質管理の実施に関しても事実上の義務化を図る方向性も示された。GMPをはじめ原材料および最終製品の安全性確認が求められることになる。

 この骨子案の土台となった食品衛生法改正懇談会の取りまとめでは、保健機能食品も含めて「いわゆる健康食品」と一括りにしている。特別の注意を要する成分が含まれていれば、機能性表示食品なども規制対象になると想定される。加えて、そうした成分が含まれていれば、食品の形状に関係なく規制対象となる可能性も考えられる。

 新たな規制が加わることで市場がより健全化される面もある。ただ、大いに気懸りなのは、特別の注意を要する成分、またの名を「リスクの高い成分」あるいは「要管理成分」(厚労省)の指定が、どのような根拠と判断基準をもって行われるかだ。「特別の注意を要す」と言われる以上、それに指定されてしまえば、風評被害を呼ぶ可能性も無視できない。

 厚労省は、「アルカロイドやホルモン様作用成分」と具体例を示しつつ、そのうち「一定以上の量の摂取により健康被害が生じるおそれのある成分等」が指定の検討対象になるとしている。
 成分等の「等」とはそうした成分を含む原材料を指すのだろう。だが、仮に、ホルモン様作用成分を含む原材料の一定量以上の摂取によって健康被害が生じるおそれが確認されたとしても、それは個別製品が抱えた問題である場合も考えられる。指定までには食品安全委員会など有識者からの意見聴取とパブリックコメントの手続きを踏むというが、あいまいな指定基準が拡大解釈されれば、検討対象が際限なく広がっていくおそれがある。

 規制の歯止めとなる規制が同時に求められる。健康食品産業協議会など各業界団体は引き続き厚労省との意見交換を続け、消費者と業界の双方にとって最適な落としどころを探ってもらいたい。そもそも、「特別な注意を要す」などと指定された成分を含む健康食品を一体誰が売り、誰が買うのか、という根本的問題さえ解決していないのだ。



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