食薬区分運用見直し 個別判断で届出可能へ (2018.2.8)


 機能性表示食品制度の対象拡大に絡み、食薬区分の運用見直しに関わる審議を昨年11月に始めた規制改革推進会議の医療・介護ワーキンググループ(WG)は1月30日、2回目の会合を開き、所管する厚生労働省と消費者庁から回答を得た。両省庁で新たなスキームを構築し、個別判断のうえで、医薬品に該当しないと確認できれば、専ら医薬品リスト収載成分でも機能性関与成分として届出を可能にする。運用開始時期は未定だが、厚労省は「消費者庁と相談し、なるべく早く進めたい」としている。

 食薬区分の運用見直しをめぐっては、健康食品産業協議会など業界団体が、専ら医薬品成分でも一定要件を満たす場合に限り、例外的に機能性表示食品や特定保健用食品の関与成分として取り扱える規制緩和を要求。これを受けて同WGは、今期の主要審議事項の一つに取り上げていた。

 この日の会合には、前回11月20日の初回会合に引き続き、厚労省監視指導麻薬対策課長、消費者庁食品表示企画課長が出席。厚労省は前回会合で食薬区分の運用を見直す姿勢を示しており、今回の会合では機能性表示食品について、具体的な対応策を明らかにした。専ら医薬品成分を機能性関与成分にした届出資料が提出された場合でも、一律に医薬品医療機器等法に基づく医薬品とは扱わず、消費者庁が厚労省に照会し、医薬品に該当しないかを個別に判断。該当しないと確認されれば、届出書類の確認を開始──というスキームを示した。

 この新たなスキームは今後、両省庁それぞれの関係Q&A(質疑応答集)で措置する考え。機能性表示食品の届出ガイドラインを改正するのでは手続などで時間が掛かるため、スピーディに改訂できるQ&Aで対応する方針とみられる。

 会合は非公開だが、事務局の規制改革推進室によると、両省庁が示したスキームをめぐっては、一部の委員が「(医薬品に該当するかどうかの)判断基準がぶれないことが大事」「こういう成分はダメとかの(判断基準)を明示すべき」と指摘。これに対して厚労省は「はっきりしたほうがいいと思うものは順次Q&Aに盛り込む」と述べた。

 ただ、厚労省は判断基準について、「(具体的な成分名などを)Q&Aに盛り込んでしまうと、判断が固定化してしまうリスクがある。実際はケース・バイ・ケースになる。白黒はっきりしているわけではない」などとも述べ、明確な基準を示さず弾力的に運用したい考えを示した。「常識に基づき判断する」とも繰り返し述べた。

 しかし、常識は立場によっても異なるといえ、判断基準が玉虫色にされる懸念がある。厚労省は常識の中身について言及していない。

 一方、製造工程で専ら医薬品成分を抽出、濃縮している場合のほか、食品由来でないものを添加している場合も個別判断になるが、委員が「お茶」を引き合いに出し、見解を問う場面もあった。これに対して厚労省は「それは構わない。常識で判断する」と回答したうえで、「度を超える添加や抽出、濃縮がダメなのであり、『度』がどういうものかについては常識で管理する。それが個別判断ということ」と述べ、いずれにしても「ケース・バイ・ケース」だと説明。また、サプリメント形状の食品については「少し議論になったが、(厚労省は)対象外とは言っていない。要は、形状の問題ではなく加工の程度の問題との話だった」(規制改革推進室)としている。

 この日の会合でWGの委員は両省庁の回答に一定の納得や満足を示したといい、審議は今回で終了する見通し。今後については、Q&Aの中身や実際の運用状況をフォローアップしながら、運用の見直し状況と、その成果を検証していくものとみられる。

     ◇
 専ら医薬品成分をめぐっては以前、成分名こそそれに該当する一方で、成分本質そのものは大きく異なる成分が機能性関与成分として届け出られて消費者庁が受理、これが業界内外に波紋を呼び、結果的に撤回につながった経緯がある。食薬区分の運用見直しを通じ、撤回された届出が救済されるとともに、グルタチオン、タウリン、SAMeなどを含む抽出物等が、機能性表示食品として届け出られるようになることが期待される。


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