自民部会 食衛法改正案を了承 政府 今月中にも閣議決定へ(2018.3.8)


 自民党の厚生労働部会(部会長・橋本岳衆議院議員)は5日、部会を開き、「食品衛生法等の一部を改正する法律案」(食衛法改正案)を了承した。これを受けて政府は、早ければ9日にも閣議決定。国会に提出する見通しだ。改正案のうち、健康食品に関係する「特別の注意を必要とする成分等を含む食品による健康被害情報の収集」については、部会で特に意見は出されなかった。改正案は予算関連法案ではないため、4月頃に衆議院で審議がスタート。今次国会で成立する見込みだ。

 5日の自民党厚労部会で示された食衛法改正案の概要は次の通り。
 ①広域的な食中毒事案への対策強化(厚生労働大臣が広域連携協議会を設置)②HACCPに沿った衛生管理の制度化(中小事業者には規模や特性に配慮)③特別の注意を必要とする成分等を含む食品による健康被害情報の収集④国際整合的な食品用器具・容器包装の衛生規制整備(安全物質のみ使用可)⑤営業許可制度の見直し、営業届出制度の創設(現行の許可業種以外も届出制)⑥食品リコール情報の報告制度の創設(自主回収は自治体に報告義務)⑦その他(輸入乳製品・水産食品に衛生証明書の添付義務化、自治体の食品輸出の事務規定を創設等)
 これらの内容は、すでに厚労省が1月16日からパブリックコメントを受け付けた改正骨子案で公表されたものと同じだ。

 このうち健康食品に最も関係する③については、改正案の主に第八条で規定された(表参照)。
指定成分を含む食品を扱う事業者は、健康被害の情報を都道府県知事など自治体に届け出ることを義務として規定。医師や薬剤師も健康被害の把握に努め、自治体に情報を提供することが、努力義務として規定されている。

 前述③の部分の仕組みを整理すると次のようになる。まず「特別の注意を必要とする成分等」を、厚労省の薬事・食品衛生審議会や内閣府の食品安全委員会で審議し、パブリックコメントを経て、厚労大臣が指定する。

 指定する成分の例としては「アルカロイドやホルモン様作用成分のうち、一定以上の量の摂取により健康被害が生じるおそれのある成分」などを挙げている。

 指定された成分を含む食品を製造・販売する事業者に対しては、既存の食品衛生法の告示により、製造管理(GMP)と原材料・製品の安全性確認を義務化する。

 指定された成分を含む食品に関して、消費者から健康被害情報が製造・販売事業者に寄せられた場合は、事業者は都道府県の保健所などに届け出ることを義務化するほか、消費者から医療機関に情報が寄せられた場合も、医療機関は努力義務として自治体・保健所などに情報提供する。

 届出を受けた都道府県などは、厚労省への報告が義務化される。そして、厚労省は薬事・食品衛生審議会などの議論を経て、販売禁止、改善指導などの措置を実施する。

 ただし、健康食品の健康被害情報について、厚労省では、引き続き通知により、任意に情報収集ができることとしている。これらの内容に関して、5日の厚労部会では出席した議員から特段の意見は出されなかった模様だ。

 改正案では、前述⑤の営業許可制度の見直し、届出制度の創設も、健康食品業界にとっては、今後の注目点となりそうだ。現在、食衛法の政省令で34の営業許可業種(自治体が条例で対応)が指定されているが、健康食品製造・販売業は含まれていない。厚労省が昨年設置した「食品衛生法改正懇談会」では、「健康食品関連事業者の把握、監視指導」も課題に挙げられており、健康食品事業者が、営業許可業種に指定されることも考えられる。

 改正案の施行期日は、法案成立後の年内中が想定されている。ただし、前述の①広域的食中毒事案は、公布日から1年後、⑤営業許可制度見直し・届出制度と⑥食品リコール情報報告制度は3年後と規定した。③「特別の注意を必要とする成分」については、早ければ年内にも薬事・食品衛生審議会などで議論される可能性もある。

 自民党の厚労部会が了承したことで、早ければ9日の閣議決定というスケジュールもあり得る。
 今回の食衛法改正案は予算関連法案ではないため、衆議院での審議開始は4月頃となることも想定され、早ければ5月ゴールデンウィーク後には成立する可能性もある。今次国会の会期末は6月20日で、現時点では食衛法改正案の審議日程確保が厳しい状況ではないが、「働き方改革法案」の大幅修正や森友問題のあおりを受けて、国会審議に影響が出ることも否定できない。


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