主婦連・元事務局長 報告書公開求め国提訴 (2018.3.8)


機能性表示食品制度が新たなトラブルを抱えた。消費者庁が実施した機能性関与成分検証事業の報告書が開示されないのを不服とした消費者団体関係者が、2月27日、国を相手取った情報公開請求訴訟を東京地裁に起こした。報告書には、個別の商品名や機能性関与成分名を明記した買上調査結果が盛り込まれているとみられる。

 訴えたのは、消費者団体「主婦連合会」の元事務局長の佐野真理子氏。加えて、健康食品の規制強化を求める活動で知られる市民団体「食の安全・監視市民委員会」代表の神山美智子氏ら弁護士3名が原告代理人として脇を固める。

 佐野氏らは、消費者庁が2015年度に実施した「機能性関与成分に関する検証事業」の報告書のうち、機能性表示食品の名称▽機能性関与成分の名称▽検証結果▽考察内容▽問題点──の情報開示をめぐり国と争う構え。

 同庁は、これまでに機能性表示食品の検証事業を複数のテーマで実施し、報告書を公にしてきた。一方で、制度施行以来毎年度行っている機能性関与成分に関する検証事業の報告書は現在のところ非公開。ただ、個別の商品名などは伏せる形で、検証結果の概要を明らかにしている。

 佐野氏は16年10月、消費者庁に対し、同報告書の開示請求を行っていた。これを受けて同庁は一部開示を決定したが、それも不服とした佐野氏は昨年2月、行政不服審査法に基づき、全面開示を求めて審査請求。だが、総務省の情報公開・個人情報保護審査会も、一部開示が適法かつ妥当と判断し、同庁を支持した。そのため、佐野氏らは提訴に踏み切ったとみられる。

消費者庁「事業者の利益害す」
 消費者庁は、機能性関与成分の検証事業で、届け出られた機能性関与成分の分析方法を検証したり、市販商品の機能性関与成分の含有量を検証し、表示値との妥当性を評価する買上調査を行ったりしている。いずれも、「分析方法に係る届出資料の質の向上及びより適切な事後チェックを行うために必要な基礎資料を得る」(同庁)のが目的という。

 今回佐野氏が報告書の開示を求めている15年度の同事業では、同庁によると、15年4月から9月末までに届出のあった機能性関与成分164成分(延べ)について、届出資料記載の分析方法(定量・定性)の妥当性を検証、また、17商品(6成分)を対象にした買上調査を行っていた。

 報告書は、遅くとも16年5月までにまとまっていたと考えられる。同庁は、同月に行われた「機能性関与成分の取り扱い等に関する検討会」(第5回)で、検証結果の概要を初めて公表。その際、買上調査の結果、機能性関与成分の含有量が表示値を下回っていたり、逆に、過剰に含まれていたりなど、「品質管理上の問題点が見つかった」(同庁)ことを明らかにしていた。

 その一方で報告書を開示しない理由について同庁は、佐野氏からの審査請求を諮問した審査会の答申書および佐野氏の代理人によれば、次のように説明している。
 「届出事業者の特定につながり、届出に問題点や不備があるとの印象を与え、当該事業者の信用を低下させ、正当な利益を害するおそれがある」、「事後監視の判断基準やガイドライン上のどの点を中心に事後監視を行っているかが推知され、事後監視を免れるような食品を製造するといった違法、不法な行為を容易にし、事後監視での問題点の発覚が困難になる」──。また、同検証事業を委託している分析機関の名称が公になると、「検証方法等に関する種々の要求及び働きかけがなされ」、検証の中立性や公平性が不当に歪められるなどとも説明している。

買上調査 再検証で問題なし
 それに対して佐野氏の主張はこうだ。
 「(消費者が)正しい情報を与えられないまま、自らの責任で選択しなければならないことになり、生命・身体への危険につながることもありうる」「どの点を中心に事後監視を行っているのかを積極的にオープンにし、国のルールに基づいた適切な届出とはどのようなものであるかをはっきりと示す。それによって科学的根拠に基づく適切な内容の届出を促すべき」──。

 ただ、昨年4月18日開催の消費者委員会本会議で消費者庁が説明した機能性表示食品制度の施行状況によれば、15年度の買上調査で「問題点が見つかった」と指摘された全ての商品について届出者に追加資料を求めて再検証した結果、その全てに「問題がないことが確認された」という。そのため、同事業を委託した分析機関による当初の分析が適正とは言えなかった可能性が示唆されるが、報告書には、再検証結果に関する記載はないものと考えられる。

 同庁によると、51商品を対象にした16年度の買上調査でも表示値を下回る商品が複数確認されており、17年度調査についても同様に見つかっている公算が高い。

 一方、当初の検証結果が覆った15年度の事例がある以上、同庁が報告書の開示に慎重になるのも当然と言えそうだ。公にすれば消費者の誤解や憶測を煽り、風評被害を引き起こす可能性がある。司法の判断が注目される。



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