第3次GL改正 エキスの届出指針公開 運用開始 1年後の見通し(2018.4.12)


 消費者庁が先月28日に機能性表示食品の届出ガイドライン(GL)を改正してから約2週間が経過した。第3次改正となった今回の改正について消費者庁は、「かなり大幅な見直し」(食品表示企画課)と説明している。実際、エキス・分泌物の取り扱い指針も追記し、機能性関与成分の対象拡大を実行した。ただ、エキス・分泌物の運用には届出データベース(DB)の改修も必要なため、届出が可能となるのはしばらく先。制度施行時とは大きく異なり、関係企業は落ち着いて対応準備に取り組める。

同等性評価 求められる各種試験 反応に温度差「厳しい」「当然」
 エキス・分泌物(エキス等)の正確な運用開始時期については今後の通知を待つ必要がある。ただ、同庁食品表示企画課は、同庁の今年度予算のうち約2700万円を充てるDB改修に必要な期間について、来年3月末までとの見通しを示している。早まる可能性もなくはなさそうだが、運用開始は1年後となる公算が高い。

 エキス等を糖質・糖類とともに機能性関与成分の対象に加えることは、16年末に報告書がまとまった「機能性関与成分の取り扱い等に関する検討会」で決まっていた。DB改修後改正GLを見ると、エキス等の届出指針は報告書を踏まえた内容。報告書の公表当時、業界からは対応の難しさを指摘する意見が多く上がっていた。そのため、改正GLに対しても同様の声が上がる。

 エキス等の届出指針の肝は安全性・機能性に関する「同等性」の評価だ。改正GLによれば、「規格の評価、パターン分析等」によってその実行が届出者には求められる。加えて、届出商品が錠剤やカプセル形状の場合、「崩壊性試験及び溶出試験による最終製品として」の同等性評価も行い、「届出資料中に分析結果を示す必要がある」。

 また、評価した同等性を「担保」するための品質管理も求められる。改正GLではエキス等を機能性関与成分にした食品の品質管理について、「機能性の担保の観点から、崩壊性試験、溶出試験および製剤均質性試験を実施し、製剤としての同等性を確認すること」とある。しかも、それらの試験は「日本薬局方に規定されている方法に準じることとする」。

 日本薬局方は、医薬品の品質適正化などを図るための規格基準書。それを持ち出されたことに、驚きの声を上げた関係者もいた。

 エキス等に関しては、こうした同等性を評価・担保するための各種試験結果を届け出ることになる。そのため「DBの大掛かりな改修が必要になる」(食品表示企画課)のだが、実際に届け出る際に「どこまでやればいいのか、どうやればいいのか、GLだけではよく分からない」。ある植物抽出物企業は、GLの曖昧さをこう指摘する。

 消費者庁は、第3次GL改正で生鮮食品の取り扱いを大きく改めた。先月28日に一部改正した質疑応答集(Q&A)でも生鮮の項目を新たに追記し、考え方を手厚く示した。そのため、エキス等についてもQ&Aで指針を補足する可能性が高い。ただ、その際に課題になるのは公表時期。企業が運用できなければ対象を広げた意味はなく、来年3月末ではあまりに遅い。

 一方で、改正GLの公表を受け、対応準備を本格化しつつある植物エキスメーカーも出ている。これから1年を掛けて届出体制を整える構え。

 他方で、「臨床試験を行っていない原材料は届け出られないかもしれない」とし、自社のエキス等を使った臨床試験論文がない場合、研究レビューによる届出が実質的に不可能になる可能性を懸念する声も聞こえる。その場合、同等性を評価するには、研究レビューで採択した文献で使われたエキス等のサンプルを入手し、同等性の評価を行う必要があるためだ。改正GLでは、サンプル入手が難しい場合の対応として、「最終製品を用いた臨床試験の実施により、機能性評価を行う」としている。

 また、本来であればエキス等と呼ぶべき機能性関与成分が、既に複数届け出られている点も無視できない。同等性を評価・担保する試験が、そうした既存の届出にも求められる可能性がある。その場合、「溶出試験などに向かない剤形だってある。この制度が持つポテンシャルを狭めることにならないか」。ある受託製造企業の研究開発担当者はこう不安視する。

 ただ、「エキスに本来求められるべきことが求められるようになるだけだ」という意見も。そう語る植物抽出物メーカー幹部は「エキスが追加されたことを歓迎する」とも話している。

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