買上調査 特保1品 関与成分量不足 ニッスイのイマーク(2018.4.12)


 消費者庁は9日、2017年度に実施した特定保健食品(トクホ)と機能性表示食品(機能性)の買上調査結果を公表し、トクホ1品目で関与成分含量が必要量に満たなかったことを明らかにした。

 このトクホの申請企業は原因について、定量分析方法の違いを挙げる。許可を受けたのは05年3月と15年前。同庁は許可申請時の提出資料に基づき分析を行ったが、同社は許可後に分析方法を更新。その方法に従えば問題はないと言うが、同社は分析方法を変えたことを同庁に報告していなかった。

 発表によれば、関与成分含量が表示値を下回ったトクホは、EPA・DHAを関与成分にした日本水産の「イマーク」(清涼飲料水)。EPA・DHAを関与成分にした同社のトクホ「イマークS」とは別の商品。

 「イマーク」は、1本100㍉㍑あたりにEPA600㍉㌘、DHA260㍉㌘を含有するトクホとして許可を受けていたが、同庁が買上調査を委託した分析機関の試験では含量が不足。どの程度不足していたのかについて同庁は「度合いの問題ではない」(食品表示企画課)として明らかにしていない。ただ、大幅に少ないわけではなかった。

 ニッスイによると、商品中EPA・DHAの品質管理のための定量分析にガスクロマトグラフィを用いる点は現在も変わらない。ただ、許可後に有機溶媒を変更した他、「静置から遠心分離に変えた」(広報担当者)。12年7月許可の「イマークS」はその方法で定量分析を行っていると言い、「イマーク」の許可当時と比べて精度の高い定量分析が可能だとしている。

 DHA・EPAの開発に長年携わった経験のある業界関係者によると、ここ15年でDHA・EPAの定量分析方法に大きな変更はないと言う。「どこの分析機関も(日本油化学会の)『基準油脂分析試験法』に合わせて分析しているだろう」。ただ、「食品中の分析は難しい」と指摘した上で、「この商品(イマーク)は飲料。確かに、遠心分離したほうが水と油にきれいに分かれ、(EPA・DHAの)回収率も高まる」とし、ニッスイの説明に一応の納得感を示す。

 しかし、だとしても定量分析方法の更新を消費者庁に伝えなかったことは明らかな失態と言えそうだ。

 同庁は、「分析方法を変える場合は変更届を出してもらう必要がある」(食品表示企画課)と指摘。現時点では「許可の取消しありきとは考えていない」(同)としており、関与成分量が不足していることを知りながら販売を続けていたなどといった悪質性の高い事案とは認めていない模様だが、ニッスイからの原因調査報告を待って、今後の対応を決める方針だ。実体としては表示値を満たしていたとしても、分析方法変更の報告を怠った事実をもって、トクホに求められる適正な品質管理を怠ったと判断されれば、処分を受ける可能性もあり得る。

 なお、ニッスイは「イマーク」の製造販売を今年2月中に終了している。買上調査結果との関連を疑う見方もあるが、同社は理由について「イマークSへのシフトが進み、直近ではだいぶ(販売)数が減っていた」(広報担当者)ため、「イマークS」への一本化を以前から決めていたと説明している。同庁によると、17年度の買上調査は昨年10月から着手。委託先から調査報告書が提出されたのは先月末だった。

調査対象100品目 「機能性」は実質問題なし
 17年度買上調査の対象はトクホ40品目(31社)、機能性60品目(32社)の計100品目(57社)。消費者庁によると、機能性でも機能性関与成分量の不足が1品について確認されたが、生鮮食品だった。

 天候などに成分含量が左右されやすい生鮮食品は、表示値を下回る可能性がある旨の表示を行っていれば表示値割れが容認されている。そのため同庁は、当該品目の名称などを明らかにしていない。機能性表示食品は実質的に問題がなかったことになる。ただ、当該企業から品質管理体制をヒアリングする方針。

 同庁は機能性表示食品制度の施行以来、買上調査を毎年度実施。これまでの調査では表示値を下回る商品が毎回複数見つかっていた。ただ、その後届出者から追加資料を提出してもらうなどした上で再分析を実施。その結果、「不適性のものは今のところない」(食品表示企画課)と言う。




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