トクホ、製品情報全面公開へ (2018.6.7)


 現在販売中の特定保健用食品(トクホ)の製品情報公開が進むことになりそうだ。現状では一部製品の公開にとどまる国立健康・栄養研究所データベース(DB)の運用方法が改められる見通し。消費者庁のDBを通じて多くの情報が開示されている機能性表示食品と同様に、一般消費者を含めた第三者が製品情報を確認しやすくする狙いがあるようだ。

 消費者庁は5月30日、昨年度実施した委託調査事業「特定保健用食品の安全性・有効性に係る情報公開の拡充に向けた調査事業」の報告書を公開した。委託を受けたインテージリサーチが有識者で構成する検討委員会を設置してまとめたもので、報告書では、現在販売中の全てのトクホの製品情報について、国立栄研DBに掲載するよう提言している。

 報告書によると、国立栄研DBに現在掲載されているトクホ製品情報は現在、「事業者よりDB掲載の申請があったトクホ製品のみ掲載。終売等の把握、更新は未対応」であり、掲載は企業の任意。

 ただ、調査で行ったグループインタビューやヒアリングの結果、消費者と専門家の双方から「全てのトクホ製品が掲載されたほうがよい」とする意見が上がった。そのため現在販売中トクホ全品の情報を今後掲載するために、「製品情報提出の義務化を含めた方策を検討する必要がある」としている。

 この調査事業は、国立栄研DBでのトクホに関する掲載情報の追加、修正を図るための基礎資料を得る目的で行ったもの。調査の背景には、消費者委員会が昨年1月に公表した、健康食品の表示広告の適正化、トクホの制度運用の見直しに向けた「建議」もある。この建議では、現在販売中トクホ全品の製品情報公開を「義務化」し、公開情報の内容充実を図るようを求めていた。

 報告書では製品情報の掲載内容についても提案している。掲載情報を消費者向けの概略ページと、専門家向けの詳細ページに分割する案を示しており、消費者向け情報として新たに「適切な利用方法」、被験者数や対象者などの試験概略や試験結果を簡潔に記した「安全性に関する評価」および「有効性に関する評価」を掲載することを提案。また、専門家向け情報としては引き続き「関与成分の分析方法」などを掲載する案を示している。

 報告書によると、国立栄研のトクホDBは、もともと専門家向けに作成されたものであるため消費者認知度は低く、掲載情報にしても「消費者向けとはいい難い」などの課題がある。一方で、専門家の認知も「半数程度」にとどまるといい、DB拡充にあたっては「消費者の認知向上を図るとともに、専門家へも周知徹底する」必要性を指摘している。

条件付きトクホ必要性を疑問視
 一方、報告書では、「現在許可品目が1つのみ」である条件付きトクホについて「ほとんど知られていない」と指摘したうえで、消費者、専門家の双方から「制度として不要ではないかとの意見が多く出された」として必要性を疑問視している。

 ただ、企業からは「米国の条件付きヘルスクレーム等との国際的な協調の観点から導入された制度として重要であり、今の制度を改善し継続することが望ましい」との意見が出されたという。

 しかし検討委員会からは、「業界として必要な制度なのであれば許可品目が一定数は現われているはず」との意見が上がった。そのため、報告書では、「申請状況や制度改良のための費用、期間等も踏まえながら、制度の再検討を行う必要があると思われる」としている。

 検討委員会の委員を務めたのは、国立栄研の石見佳子氏や梅垣敬三氏、日本栄養士会の迫和子氏、国立医薬食品衛生研究所の畝山智香子氏ら8名。


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