進まぬ受理 増える撤回 事後チェックが追い打ち (2018.8.9)


 今年度の機能性表示食品の届出受理件数が例年と比べて大幅に減少している。今後もこのペースで進めば、今年度の受理総数は200件を下回り、過去最低を更新することになる。そのうえ、届出の撤回が増加傾向にあり、実質的な届出件数の伸びも大きく鈍化。加えて撤回件数はさらに増える可能性がある。ここにきて消費者庁が、機能性関与成分に関する検証事業に基づき、追加資料の提出などを届出各社に求めているためだ。

受理件数 例年の3割
 今年4月1日以降を届出日とする2018年度の届出は、6月1日以降に順次公表されているが、8月7日時点の公表件数は37件と低調。企業からの届出書類の提出件数が減少している可能性もあるが、前年度同時期と比較すると3割程度にとどまり、極端な落ち込みを見せている。昨年度は、17年8月4日までに、110件以上が受理されていた。

 今年度の月次受理件数をみると、1ヵ月あたりおよそ15件のスローペース。今後もこのペースで進めば、今年度の受理総数は200件を下回ることが確実。年間受理総数が過去最も少なかった制度施行初年度(15年度)の310件を大きく割り込む形で、過去最低を更新することになる。

 また、昨年度に続き今年度も届出の撤回が増えているため、届出件数の実質的な伸びも大幅に鈍化している状況だ。4月1日以降の撤回件数は、今月6日時点で少なくとも15件に上る。そのため今年度の届出純増数は、20件あまりにとどまる極めて低い水準となっている。

 昨年度(17年4月~18年3月末)の撤回件数は、少なくとも計57件に上った。今年度の現時点比で約4倍と多いが、今年度の撤回件数は、昨年度と同水準、あるいは、それ以上に達する可能性がある。制度を所管する消費者庁が7月中旬以降、17年度に実施した「機能性関与成分に関する検証事業」結果に基づき、追加資料の提出を届出者に求めるなどしているためだ。

検証事業で撤回増加傾向
 制度施行以来、同庁が事後監視の一環として毎年度実施している、この機能性関与成分検証事業は、届出された分析方法で実際に第三者が分析(定量・定性分析)できるかどうかなどを調査、検証するもの。検証結果を受け、届出を撤回する企業が毎年度現われている。

 同庁食品表示企画課が今年6月の消費者委員会本会議で説明したところによると、15年度の検証事業では、検証対象146件(15年4月から9月末届出分)のうち、有識者らが資料の内容が不十分と判断した68件に追加資料の提出を依頼。このうち62件は変更届で対応できたものの、6件が撤回した。

 また、16年度については対象379件(15年1月から16年9月末届出分)のうち242件に追加資料の提出を依頼。その結果、変更届が144件、撤回が13件あったという。検証対象が増えるに従い撤回件数も増加している格好だ。

 同庁が8月8日までを回答期限に追加資料の提出を求めた17年度の検証対象については、16年10月1日から17年9月30日までの1年間に届け出された634件に上るという。追加資料の提出依頼件数は不明だが、検証対象件数の増加に伴い、昨年度比で2倍近くに達している可能性もある。

 そのうえ、16年度検証事業への対応も全てが済んでいるわけではない。追加資料の提出を依頼した242件のうち85件については、届出の変更、撤回のいずれの対応も取っていないという。追加資料提出を依頼したのは昨年5月ごろ。これまでの間、同庁は有識者を交えて追加資料への対応を検討していたとみられ、この中からも撤回する届出が出てくる可能性がある。

 制度運用状況を詳細にウォッチしている業界関係者はこう懸念を語る。「今年度は撤回件数が受理件数を上回る可能性すらあるのではないか」

受理減の背景にルール変更か
 今年度の届出受理件数が例年と比べて極端に少ないのはなぜか。届出経験の豊富な業界関係者からは、「以前に受理されたのと同じ内容の届出が受理されなくなった」と指摘する声が複数上がる。以前からあった指摘だが、今年3月28日の届出ガイドライン第三次改正以降、そうした指摘が一層強まっている。

 「当該食品に表示する機能を有する成分が両成分のみであることを明確に説明した資料を提出すること」。17年度の機能性関与成分検証事業で消費者庁が追加資料の提出を届出者に求めた一部書面の中には、こうした依頼が含まれる。業界一般には「エキス」「抽出物」と呼ばれる機能性関与成分を届け出た企業に対する依頼、と言うよりも指摘だろう。

 こうした指摘は、事後監視にとどまらず、同庁による届出書類の事前確認の過程においても、ここにきて頻出しているとされる。

 同庁は第三次改正ガイドラインの施行にあたり、実際の運用開始は届出データベースの改修後としたが、制度対象に新たに加えるエキスに関する届出指針を開示。これを受け、これまで受理してきた抽出物に対する考え方を、いよいよ改めた可能性がある。追加資料の提出依頼を受け取った届出者は、「これ(=届け出た機能性関与成分)は本来、エキスではないのかと言いたいのだろう」と推測する。

 ただ、今年度も、一般的には「エキス」と呼べる機能性関与成分の届出が複数受理されている。届出書類の内容に何らか違いがあるのかもしれないが、制度運用に一貫性が無いと指摘されても仕方なさそうだ。

 また、機能性関与成分がエキスであるかどうかにかかわらず、受理が常態化していたような届出でさえ、差し戻しが相次いでいるとも言われる。摂取対象者と、表示する機能の科学的根拠とする論文の被験者の整合性を厳しく問い始めたことなどが要因となっているようだ。
 企業の抱える不満が一層高まっている。

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