厚労省検討会 営業許可見直しの議論開始 (2018.8.9)


 厚生労働省は1日、「第1回食品の営業規制に関する検討会」(座長・五十君靜信・東京農業大学教授)を開き、改正食品衛生法で盛り込まれた営業許可制度の見直し、届出制度の創設について、具体的な検討を開始した。11月中にも原案を作成する予定で、12月まで全国ブロック説明会や意見募集などを行った後、来年2月には取りまとめを行う見通し。これまで許可業種に該当しなかった健康食品関連事業者がどう扱われるのか。議論の行方が注目される。

 検討会の座長には、厚労省のHACCP検討会座長などを務めた東京農業大学の五十君靜信教授を選任。以下、委員は、大隅和昭・日本惣菜協会事務局長▽岡崎博・仙台市食品衛生協会専務理事兼事務局長▽加藤光夫・フーズデザイン社長▽河村成彦・北海道食品衛生課長▽高田則子・福岡県食の安全総合調整監▽高橋郁美・全国保健所長会副会長▽富松徹・食品産業センター技術環境部長▽中村重信・東京都食品監視課長▽中村好一・自治医科大学教授▽山口由紀子・相模女子大学教授▽横田明美・千葉大学大学院准教授――という構成になっている。

 現在、食品衛生法では政令により、34の業種が許可業種とされており、都道府県知事により施設基準が定められ、営業に際しては知事の許可が必要となる。34許可業種は1972年以来、変わっていない。

 改正では、近年の食品事業の実態に即して、業種区分の統合・新設や施設基準の見直しを行う。
 例えば、スーパーでは、飲食店や魚介類せり売りの営業許可ほか、各種食品製造業、乳類、食肉販売業など多くの許可が必要となっている。こうした実情から、販売業に関しては、扱う食品や業態に応じて、新たに創設する届出制度の届出業種、許可業種に区分する。これにより、許可業種の販売業の中には、届出で済むものも出てくる可能性がある。

 また、届出制度はHACCPが導入されることを受けて創設されるが、これまで許可業種の対象外となっていた製造業種については、一定の要件をもとに許可業種に追加、あるいは届出の対象業種とする。届出制度に関しては、すでに一部自治体が条例で導入しているが、そうでない自治体も多く、全体として把握する仕組みがない。

 1日の検討会で厚労省から示された今後の検討方針では、許可業種の新たな要件および見直しの方向として、①食中毒リスクが高いもの②規格基準等が定められているもの③食品事故・食中毒発生状況等を踏まえ特に配慮が必要なもの④製造業、販売業の現状に応じた区分新設・統合⑤施設基準が類似の製造業の統合⑥飲食店営業の許可見直し(惣菜や弁当などを調理、製造・販売している現状)――などを挙げている。

 また、営業届出の対象となる業種の範囲については、①許可業種以外の製造・販売業種②公衆衛生への影響が少なく、届出不要な営業③一次産品の加工・販売の取り扱い―などを示している。

許可業種を再検討 健康食品業界どうなる?
 営業許可制度の見直し、届出制度の創設では、多くの課題、ポイントがあるが、健康食品業界にとって焦点になるのは、これまで許可業種に指定されてこなかった健康食品関連事業の扱いだ。

 1日の検討会では、健康食品に関して特に話題にはならなかったが、東京都の中村重信・食品監視課長は、都の条例でいわゆる健康食品関連事業者を許可業種としていると説明した。

 中村課長によると、都条例では「粉末食品製造業」を許可業種に規定しており、「その中には顆粒、錠剤、カプセル状の食品も含まれ、これらはいわゆる健康食品も抱合されている」(中村課長)という。

 本紙の取材に対して中村課長は、「健康食品業という分類はしていないため、粉末食品製造業に健康食品企業がどの程度あるか分からない」とし、「粉末食品製造業全体では2017年3月末時点で許可件数は203件となっている」と語った。その上で「いわゆる健康食品が新たに許可業種となるか、届出対象となるか、まさに検討会で議論することになるのではないか」と述べている。

 食品衛生法の営業許可制度のひとつの特徴は、自治体が条例で独自に許可業種や届出業種を追加している点。これは地域の事情を考慮したものだが、その半面、自治体によりばらつきがあり、HACCP導入に伴う届出制度の創設と自治体条例での許可・届出業種をどう調整するかもひとつの課題となる見通しだ。

 1日の検討会では、「現在は自治体でそれぞれ条例を定めているが、条例を“広域的”に考えていくのもひとつ(の手段)ではないか」(自治体委員)との意見も出されている。東京都のように、条例で健康食品企業を許可業種に規定している自治体もある。健康食品企業を許可・届出業種とするのか、あるいは条例をベースに健康食品企業を多くの自治体が許可業種に指定するのか、今後、ひとつの検討課題になる可能性がありそうだ。



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