消費者庁 疾病リスク 低減トクホ 来年度に調査事業計画 (2018.9.6)


 疾病リスク低減型の特定保健用食品(トクホ)に関する調査事業を来年度(2019要求に新規調査事業として予算を計上しており、認められれば調査に乗り出す。トクホと機能性表示食品のすみ分けが課題になっていることもあり、機能性表示食品では認められていない疾病リスク低減表示の運用拡大を視野に入れた調査事業となりそうだ。

 この調査事業では、海外の疾病リスク低減表示制度の状況を調査したり、それに関連するエビデンスや国内外の疫学研究などを収集したりする計画。これにより、今後の制度設計や、新たに疾病リスク低減型トクホの関与成分として加える候補成分に関する基礎的調査を行いたい考えを同庁は示している。

 疾病リスク低減型トクホの関与成分として現在認められているのは、カルシウム(骨粗しょう症リスクの低減)、葉酸(二分脊椎など神経管閉鎖障害を持つ子どもが生まれるリスクの低減)の2成分にとどまる。カルシウムはこれまでに10製品余りの許可実績があるものの、葉酸はゼロ。トクホ制度に疾病リスク低減型が設置された05年以来、制度の活用は進んでいないのが現状だ。

 一方で、海外に目を向けると、米国では栄養表示教育法などの法律に基づき、ビタミンD(骨粗しょう症のリスク低減)、食物繊維(がんのリスク低減)、抗酸化ビタミン(同)などでも疾病リスク低減表示が可能。EUも植物ステロールなどついて認めており、日本でも疾病リスク低減型トクホの関与成分を増やす余地は十分にある。

 機能性表示食品の届出件数は既に1300件を超え、トクホでも許可実績のないヘルスクレームが出ていることもあり、許認可制であるにもかかわらずトクホは存在感の低下が指摘されている。消費者庁関係者によれば、許可申請件数も減少傾向にある。こうした現状を受け、トクホ許可の調査審議を行う消費者委員会からも、「『トクホの存在意義がどこにあるのか』という話になりかねない」と今後を懸念する声が上がる。

 消費者庁では、疾病リスク低減型トクホの運用拡大を図ることで、トクホ制度と機能性表示食品制度の違いをより鮮明化させ、両制度のすみ分けを進める方向性を考えている模様だ。

 セルフケアによる健康維持増進や未病の考え方を国民に広げようとする政府の方向性とも合致する。トクホを取り扱う業界関係者も、「ビタミン・ミネラルを機能性表示食品制度の対象に加えようとしたときと同様に反発の声が上がり、厳しい議論になることも予想されるが、(疾病リスク低減型トクホを)広げていくべきだ」と話している。

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