サプリ形状に限定し調査 国セン「品質」、厚労「摂取状況」 (2018.10.25)


 カプセルや錠剤などといったサプリメント形状の健康食品に対象を限定し、品質や国民の摂取状況を調べる調査が今後実施される。品質調査は国民生活センターが今年度行うもので、「開封後の品質変化」を調べる。摂取実態調査については、現時点では未確定だが、厚生労働省が来年の国民生活基礎調査の中で行う見通しだ。調査結果は、サプリ形状の規制強化の検討に向けた基礎的資料とされる可能性がある。

〝開封後〟に商品テスト
 国民生活センターは今年度、錠剤・カプセルのサプリ形状に限定し、開封後の品質変化を調べる商品テストを実施する。機能性表示食品もテスト品目になりそうだ。

 健康食品の商品テストは通常、市場から買上げた未開封品が対象となる。サプリ形状に限定するのも異例だ。国センは12日、調査に協力してくれる一般消費者の募集を徳島県で始めた。

 この商品テストは、徳島県庁に拠点を置く消費者庁「消費者行政新未来創造オフィス」の今年度プロジェクトの一環。国センは同オフィスに参加しており、今年6月、徳島を実証現場とした先駆的な商品テストの一環として、サプリ形状の「品質等に関する実態調査」を行う方針を明らかにしていた。

 この実態調査の一環として、サプリ形状に限定した開封後の品質変化を調べる商品テストを実施する。調査項目をはじめ品目数、結果公表時期などが気になるところだが、国センは「結果公表まで明らかにできない」(商品テスト部)としている。

 推測すると、配合成分の含量が開封後も表示値通りかなどを調べる分析試験を実施したり、錠剤やカプセルの欠けや割れなどの変形、あるいは崩壊性などといった形状的品質不良の有無を調べたりするものと考えられる。

 ただ、調査対象は「開封後」のサプリ。そのため、業界関係者からは「品質を調べるといっても、購入者の保存の仕方で変わる。変形などがあっても品質不良とは一概には言い切れない。なぜ開封後なのか。意図がよく分からない」とテストの意義に疑問の声も上る。

 国センが12日から始めた調査協力者の募集要項などによれば、募集対象者は徳島県在住の一般消費者で、募集人数は50名程度。開封後1カ月から1年程度、賞味期限が2019年1月以降、半分程度(20粒以上)残っている、使用履歴に関して聞き取り可能──などを必須条件に使用途中のサプリを提供してもらう。一人が複数のサプリを提供できるのだとすれば、調査対象品目数はそれなりに大きなものとなりそうだ。

 調査時期は11月から12月の予定。その後分析試験などを実施するのだとすれば、結果がまとまるのは早くて今年度内、調査品目数が多ければ来年度以降とみられる。

 国センによれば、前述の実態調査の一環として現在、サプリ形状健康食品の利用実態、品質的な問題点を検証する全国規模のアンケート調査も進めている。他に、広告表示や、健康食品GMPの認証取得状況なども調べる計画。国センでは一連の調査から、サプリ形状健康食品の選択や利用における注意点などを掘り起し、全国への周知・啓発を実施したいとする。

病者の利用実態把握へ
 統計法に基づく国の基幹統計調査の一つである「国民生活基礎調査」は厚生労働省が所管する。同省は来年の同調査の内容を一部変更し、サプリ形状健康食品の摂取実態を把握したい考え。調査の変更は総務省統計委員会の部会(人口・社会統計)で承認を得る必要があるが、同調査で使う「健康票」に、「サプリメントのような健康食品」の摂取状況を尋ねる質問を新設する。

 同省が12日の同部会に提出した資料によれば、「サプリメントのような健康食品」とは、「健康維持・増進に役立つといわれる成分を含む、錠剤、カプセル、粉末状、液状などに加工された食品」を指し、外観や形状などから一般に食品と認識されるものは対象外とする。同省としてサプリメントを定義付けてみせた格好だ。

 一方で、エナジードリンクや乳酸菌飲料、ヨーグルトのほか、クッキーなどの栄養を補助する食品などは対象の外に置いた。

 国民生活基礎調査の調査世帯数はおよそ28万世帯に上る。その中でサプリ形状健康食品の摂取状況を調べる狙いは何か。前述部会の公表資料によれば、厚労省は次のように説明している。

 「健康食品の摂取状況を既存の調査項目である『性』『年齢階級』別に観るとともに、『自覚症状』や『通院状況』との関係を見ることで、病気やけがなどで具合の悪いところがある者や、通院している者が、健康食品を使用している実態を把握する」

 同調査で新設予定のサプリ形状に関する質問事項は1問のみ。摂取しているか、いないかを尋ねるだけものだ。そのため、サプリ形状の摂取による健康被害の実態などを調べることはできない。ただ、通院状況など他の質問への回答とすり合わせることで、体調不良を感じているにも関わらず通院、服薬を行わない一方で、サプリは摂取している人の実態を把握することは可能になる。

 厚労省は、健康食品による健康被害を未然に防止するため、6月に公布した改正食品衛生法の中に、健康食品をめぐる新制度(規制)を盛り込んだ。特別の注意を必要とする成分を厚労大臣が指定するなどといった新たな方策を取り入れている。

 そのため、厚労省がサプリ形状健康食品の摂取実態を把握したい背景としては、食衛法による新規制の運用を円滑に進めるための狙いがあるとも考えられる。

 一方で、医薬品医療機器等法の観点からの規制強化の思惑を持つ可能性も全く考えられないわけではない。医療を受けるべき人が健康食品の広告宣伝に接したのをきっかけに通院や服薬を止めてしまう──。そうした事態が実際起こっているのだとすれば、それも「健康被害」だと指摘する声が最近、薬事行政に近い関係者からも上がっている。


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