ビルベリー エキス価格、前年並みか 果実、2年続けて収穫不振 (2018.10.25)


高止まり しばらく我慢
 機能性表示食品の原材料ともなるビルベリー果実エキスの価格は来年も高止まりのまま推移しそうだ。北欧を中心に、今夏の果実収穫も不調に終わったとされる。昨年、果実価格は昨対比50~100%増の高騰を見せていた中で、足元では状況の好転材料がほとんど見当たらない。しばらく我慢が必要だ。

 ビルベリー果実は毎夏、北欧、バルト諸国、東欧などで収穫される。
 複数のビルベリー果実エキス市場関係者の話を総合すると、主に来年から供給されることになる、今夏収穫果実を原料にしたビルベリー果実エキスの価格は、おおむね前年並みとなる見通しだ。昨年は果実価格の高騰、加えてユーロ為替の円安傾向も受け、多くのビルベリーエキス原材料事業者がキロ当たり数千円の値上げを行っていた。

 原料果実の収穫地によっては、やや下振れする可能性もある。昨年は壊滅的な収穫状況だったとされる東欧や、リトアニアなどのバルト諸国での収穫が比較的回復したといわれる。

 しかし逆に、収穫地によっては更なる値上げもあり得る。「エキス原料を北欧産果実に限定した場合(㌔当たり)2~3千円の値上げとなりそうだ」とある原材料メーカーでは話す。別の原材料メーカーでは、「特にスウェーデンの収穫が悪かった。昨年に輪を掛けて悪い」としている。

 2シーズン前の16は全体的に収穫量が好調だった。そのため果実価格は適度に抑制され、為替レートも安定的だったためエキス価格にも手ごろ感があった。それが一転、2年連続の収穫不振。昨年は冷夏に伴う日射量不足が主な要因だったのに対し、今年は高温と降雨量不足に見舞われた。

 日本と同様、今年は果実収穫地でも夏が例年より早く訪れた。そのため、当初は果実の成長も全体的に良好で、収穫も好調となることが期待された。しかしその後は暑すぎ、雨も少なすぎた。

 商社関係者はこう話す。「スウェーデンでは大規模な山火事も起こった。(収穫地)全体を照らしても、今年の収穫量はどんなに好意的に見ても昨年並み。そのため、果実価格も昨年から下がることはない」

 一方、昨年の果実価格高騰には、天候以外の要因もあった。果実をそのまま使う高級冷凍食品をはじめとする食品産業からの旺盛な需要が、果実価格をさらに押し上げたといわれる。しかも、その需要は北欧に向かった。その他の地域に比べれば、北欧の収穫量は〝まだまし〟だったためだ。

 昨年はその煽りをエキス産業が受けた格好だが、今年は北欧での収穫が不振。そのため、北欧産果実の現地販売業者は昨年よりも高い価格を提示しているという。

 ただ、全体的に見れば、果実価格が昨年以上に高まることはおそらくないとの見方も上がる。
 「市場価格は需要側との合意によって決まる。昨年の果実価格は、それを超えたらユーザーは利用しない、という今のところの上限だろう。昨年は、最終的には、(果実)価格によって全体的な需要が抑制された。つまり、価格の許容範囲の上限が確認されたという意味だと捉えている」

 こう語るのは前述の原材料メーカー。今後、異常気象など不測の事態が起きた場合は別にして、「経済的メカニズムが作動し(果実価格は)少しずつ中央回帰していくのではないか」と分析する。

 他方、ここ2年の果実価格高騰の背景には、果実の採取コストの上昇もある。とりわけ、高級冷凍食品向けの果実に高い品質が要求されているためだ。全てがそうではないようだが、そうした品質の高い果実がエキス用果実としても使われる。同じ原材料メーカーは次のように話す。

 「例えば、(果実の)大きさ、集め方、集める人、集める場所から糖度の高さ(美味しさ)まで、かなり高いレベルの品質が要求されている。そのため段々とコストが高くなっているが、エキス用果実としては不必要なところにまでコストがかかっている」

 そのため、この原材料メーカーでは現在、果実を採取した地域や採取日の記録、アントシアニン含有量の高い果実の選別、その上での冷凍管理といった、「エキス用」として必要な品質の果実を中心に収穫する事業者の育成を、現地で進めているという。


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