ユーグレナ由来パラミロン 「第3世代の食物繊維の可能性」 (2018.12.6)

パラミロン①

 微細藻類ユーグレナ(ミドリムシ)に含まれる特有のβ‐グルカンの一種、「パラミロン」に関する研究会の第1回学術集会が11月22日、都内で開催され、研究者や業界関係者など約80名が聴講に訪れた。研究会の会長は、「パラミロンは〝たたかう食物繊維〟である」と提唱した。
 講演では、パラミロンを高含有するユーグレナEOD‐1株について、ヒト免疫調整機能、アスリートの疲労感緩和、メタボリックシンドローム予防などに資する可能性が示唆された最新の研究結果が紹介された。
 初の学術集会を開催したのは、昨年9月に発足した「パラミロン研究会」(矢澤一良会長)。副会長は、食物繊維の機能性研究で知られる青江誠一郎・大妻女子大学教授が副会長を務める。
 β‐グルカンは食物繊維の一種。その中でもパラミロンは、β‐1,3‐グルカンのみで構成される点で「非常に珍しいβ‐グルカン」(矢澤会長)という。

 また、この日の講演で言及されたユーグレナEOD‐1株は、パラミロン含量率が70%以上といった高含有率を特長とするもので、「従属栄養培養」と呼ばれる、光合成を行わない新しい手法で培養される。「神戸ユーグレナ」の別名がある。

 講演では、パラミロンについて、腸から肝臓に「シグナルを伝える」といった、従来の食物繊維にはない新たな作用メカニズムを持つ可能性も紹介された。

 この講演を行ったのは青江教授。同教授らが実施した肥満モデルマウスを使った試験の結果、EOD‐1株由来パラミロンに食後血糖値上昇抑制、血中の脂質代謝改善といった機能性を持つことが見出された。また、用量依存的な内臓脂肪の蓄積抑制といった機能性のあることも示唆されたため、メタボリックシンドロームにも有効である可能性があるという。

 一方で、青江教授によるとパラミロンは不溶性の食物繊維でもあるため「消化吸収されない」。
 それにもかかわらず血中脂質改善などの機能性が見出される背景について青江教授は、「胃で効いているわけではないため、従来いわれている食物繊維の機能とは異なる。また、腸内発酵しているわけでもない。すると、小腸や大腸の消化管細胞に直接刺激を与えた可能性が考えられる」との考察を述べ、こうした機能を持つ食物繊維は知られていないとした。

 そのため、パラミロンは「腸に直接刺激を与え、糖質代謝や脂質代謝に影響を与える、第3世代の食物繊維である可能性も考えられる」と語った。

 この他、講演では、大野尚仁・東京薬科大学薬学部免疫学教室教授が「パラミロンの免疫機能に及ぼす影響」、久保明・医療財団法人百葉の会銀座医院院長補佐兼抗加齢センター長が「アスリートと免疫」と題した講演をそれぞれ行った。

 久保氏は、日常的に高強度トレーニングを行う事実上のプロラグビー選手(トップリーグ所属)を対象にしたオープンラベル試験の結果を紹介。4カ月摂取してもらったところ、摂取前後比で疲労感の緩和、便通の改善が確認された他、免疫力が維持されたという。

【写真=上:パラミロンを高含有するユーグレナEOD‐1株。粒状の物質がパラミロン。
      下:パラミロンの電子顕微鏡写真。(画像提供=神鋼環境ソリューション)】

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