改正入管法 人手不足解消につながるか(2019.2.21)


 健康食品製造業でも人手不足が深刻化するなか、昨年12月8日に改正入管法(改正出入国管理法)が成立した。今年4月の施行に向け、飲食料の製造を所管する農林水産省では、閣議決定した運用方針に基づく受け入れ要件の整備などが進んでいる。しかし、健康食品は日本標準産業分類に明示されていないため、運用方針の対象業種や職種に明記されず、あいまいな状態となっている。農水省では本格運用が始まる10月までにこうした事態の解消を図りたい考えだ。

 入国管理局で規定されている外国人の在留資格は、2018年8月時点で28あり、大きく「高度な専門職」(医師や研究者など)、「技能実習」「留学」「身分」(日系人など)、「特定活動」(外国人看護師・介護福祉士候補など)──に区別される。

 このうち外国人労働者の大部分を占めるとされるのが、「技能実習」と「留学」だ。「技能実習」は外国人技能実習制度に基づき、技能実習を目的に在留するが、実際は低賃金の単純労働のような労働力を確保するための手段になっているとの批判もある。「留学」も実際は日本語学校に通いつつも、多くの時間をコンビニエンスストアや外食産業などで働くケースも多いとされる。

 こうした状況から改正入管法では、建設業や農業、飲食業など、人手不足が指摘される業種で、実習やアルバイトではなく「就労」を目的とした在留資格「特定技能1号」および「特定技能2号」を創設した点が、最大のポイントとなっている。法務省はこれに対応するため、入国管理局を「出入国在留管理庁」に改編する。

食品製造に3万4千人
 「特定技能1号」は、「不足する人材の確保が必要な産業分野に属し、かつある程度の知識、経験、技能が求められる業務に従事する外国人の在留資格」(入国管理局資料)で、在留期間は通算5年。家族の帯同は認められない。資格を得るためには日本語と技能の試験に合格するか、もしくは3年以上の技能実習が必要となる。

 「特定技能2号」は、1号よりさらに熟練した技能を要する業務に従事するための資格で、より高度な試験に合格する必要があるとされる。この資格は家族も帯同でき、更新も可能で長期就労ができるほか、在留期間は永住権取得の条件のひとつである就労期間5年に算入できる。

 政府は昨年12月25日、改正入管法の「基本方針」と「分野別運用方針」を閣議決定し、人材の確保が必要な産業分野として、介護業など14業種を選定。法施行から5年間で最大34万5000人を受け入れる(見込み値)としている。「飲食料品製造業」も14業種に含まれ、農林水産省では、同業種について今後5年間で不足する人材約7万3000人のうち、3万4000人を外国人材で充足するとの試算をまとめている。

 食品製造業の人手不足は深刻だ。農水省によると、2017年の平均有効求人倍率は、全産業平均が1.54なのに対し、飲食料品製造業は2.78で、欠員率は2016年のデータで、製造業全体の1.3%に対し3%となっている。さらに、昨年成立した改正食品衛生法でHACCPに基づく衛生管理が義務化されるため、人手不足に加えて、人材の高度化も求められている状況にある。

 これらを踏まえ、農水省は昨年、飲食料品製造業における「特定技能」の運用方針を策定し、前述の通り、昨年12月25日に分野別運用方針として閣議決定されている。同方針で対象となる飲食料品製造業種は、日本標準産業分類に該当する業種であり、健康食品は同分類に明記されていないため、同方針にも明示されていない。

外国人にもHACCP能力
 同方針では、飲食料品製造業の「特定技能1号」の条件として、同製造業分野の「第2号技能実習」を修了(3年)した者、または「飲食料品製造業技能測定試験(仮称)」と「日本語能力判定テスト(仮称)」あるいは「日本語能力試験(N4以上)」に合格した者としている。第2号技能実習の対象職種は10種類あるが、健康食品関係は明記されていない。

 「飲食料品製造業技能測定試験(仮称)」は国内外で年10回程度、現地語で実施する予定で、直ちにHACCPに対応できる人材を認定する試験としている。「日本語能力判定テスト(仮称)」は国外で年6回程度で来年秋以降に実施。日本語能力試験(N4以上)」はすでに年2回程度、国内外で実施されている。

 また同省は3月末にも「食品産業特定技能協議会(仮称)」を設立する方針。「特定技能1号」などを雇用する企業や団体、出入国在留管理庁への特定技能登録を支援する機関(社会労務士や人材派遣会社など)は、同協議会の構成員になることを義務付ける考えだ。

 同省では「特定技能1号」などの外国人の受け入れ開始を今年10月としているが、前述のように健康食品関連の扱いは明記されないままで、あいまいな状態が続いている。同省では「検討中」(食料産業局)としつつ、苦慮しているようだ。「当面は個別ケースでの判断になるかもしれない。関係する業界団体と調整する必要があるだろう。10月までには何らかの対応を考えていきたい」としている。


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