β‐アラニン 米スポーツサプリで定番 (2019.2.21)


 昨年12月に厚生労働省が公表した食薬区分の一部改正案で、化学物質のカテゴリーにおいて「専ら非医薬」リストに新規収載する考えが示されたβ‐アラニンについて、米国企業が日本市場で原材料供給する準備を進めている。

 β‐アラニンは、欧米市場では広く知られたサプリメント成分。運動能力の向上機能をはじめ脳機能に対する働きが期待されている。この米国企業は、日本での販売が可能になり次第、機能性表示食品制度への対応も視野に入れながら、β‐アラニンのリーディングカンパニーとして日本での市場形成をけん引したい考えだ。

 β‐アラニンの日本での販売準備を進めているのは、米国のダイエタリーサプリメント受託製造企業、ナチュラル・オルタナティブ・インターナショナル(以下、NAI社)。特許権に基づきβ‐アラニン配合ダイエタリーサプリメントの製造を独占してきた経緯がある。

 日本市場での原材料供給を予定しているβ‐アラニンは2製品。いずれも『カルノシン(CarnoSyn)』のブランド名で欧米市場を中心に展開されている製品で、GNC社やNOW社、ソーンリサーチ社など、著名ダイエタリーサプリメント企業に採用されている。日本市場でも、ブランド名を全面に出しながら市場開拓を進める方針だ。

 2製品のうち1製品は、以前から日本の協力企業に製造を委託しているもの。これは通常の『カルノシン』(β‐アラニン)で、日本市場向けも同社に製造を委託する。協力企業の名称は現在のところ非開示。

 もう1品は、通常の『カルノシン』を加工したもので最終加工地は米国。β‐アラニンは、摂取すると皮膚がチクチクと感じる「β‐アラニンフラッシュ」などと呼ばれる短期的な現象の起こることが知られるが、この現象を無くすために徐放性を施したもの。通常のβ‐アラニンをサプリメントに配合することに関してNAI社が保有していた特許権の効力期限は最近切れたが、加工品については、日本も含めて特許権の効力期限がしばらく続く。

 β‐アラニンの機能性については、米国で編集されたサプリメント成分・素材のデータベース『ナチュラルメディシンデータベース』(日本語書籍版)によると、特に、負荷の高い運動を行う際の運動能力向上機能について有効性が示唆されている。その中で、大半の試験において『カルノシン』が使用されているという。

 NAI社日本代理人の大澤三平氏は取材に、「『カルノシン』に関する臨床試験論文はこれまでに55報以上。競合品も出てくるだろうが、機能性に関するエビデンスの豊富さと、品質の高さをアピールしながら、日本のβ‐アラニン市場をけん引していきたい」と話している。
 β‐アラニンは、非必須アミノ酸の一種。筋肉中に存在する成分、カルノシンを合成するために使用されるといわれ、β‐アラニンを摂取すると、筋肉中のカルノシン濃度が大きく高まることをNAI社は報告している。

 また、β‐アラニンは、カルノシンやアンセリンなど、イミダゾールジペプチドを構成するアミノ酸でもある。例えばカルノシンは、β‐アラニンとヒスチジンで構成される。このためβ‐アラニンは、抗疲労機能などが訴求されているイミダゾールジペプチドの競合成分ともなりそうだ。

 先の食品区分改正案で厚労省は、β‐アラニンついて、「3‐アミノプロパン酸」の名称で専ら非医薬品リストに新規収載する考えを示した。β‐アラニンの名称は別名(他名等)として収載する考え。

 食薬区分改正案に対するパブリックコメントの受け付けは先月24日に終了。サプリメントなど食品の原材料として日本でも使用できるかどうかは、食薬区分改正案の正式決定を待つ必要がある。加えて、食品衛生上の取り扱いに関する判断を待つ必要もあると考えられ、実際に日本でサプリメント原材料として利用できる時期は現在のところ予測できない。


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