反ドーピング JADA認証 終わる スポーツサプリの転換点(2019.4.11)


 日本アンチ・ドーピング機構(JADA)は3日、これまで続けてきた食品・サプリメントのアンチ・ドーピング認証を廃止し、新たに「スポーツにおけるサプリメントの製品情報公開の枠組みに関するガイドライン」(GL)を策定したと発表した。JADAのアンチ・ドーピング認証については、高額とされる分析料金や分析結果の非開示、広告代理店を通した協賛金納付などに対して、一部企業から疑問の声が挙がっていた。GLは自主的なものだが、実質的には同GLを基本に、「インフォームドチョイス」をはじめとする民間主体のアンチ・ドーピング認証が、今後進むことになる。

 JADAのアンチ・ドーピング認証は「JADAマーク」として知られ、2016年9月時点で、味の素、大塚製薬、明治、森永製菓、ドームの5社が同認証プログラムに参加し、JADAマークを取得していた。

 しかし、分析結果が非開示なことに加え、JADAがスポンサー料の大幅値上げやcGMP認証取得義務化など認証プログラムの改定を打ち出したことに一部企業が反発。16年10月以降、ドームと森永製菓はJADA認証から脱退している。

 また、ドーピング問題に対する社会の関心の高まりを背景に、アンチ・ドーピング認証を希望する中小事業者からは、1回200万円とされるJADAの分析料金に高額との批判の声が挙がっていた。

 さらに一部報道によると、中立が求められるアンチ・ドーピング機関が食品・サプリメントの認証業務を行っていることに、WADA(世界アンチ・ドーピング機構)が懸念を示していたという。

 こうした状況からJADAは17年9月、食品事業者や認証機関、スポーツ庁など関係者からなる「サプリメント認証枠組み検証有識者会議」(委員長・境田正樹東京大学理事)を設置。JADA認証の廃止を念頭に、今後の日本のアンチ・ドーピング認証の新たな枠組み構築について検討を開始した。

 一方、国会では18年6月に議員立法による反ドーピング法(スポーツにおけるドーピングの防止活動の推進に関する法律)が成立した。反ドーピング法におけるサプリメント分野の取り組みは、JADA有識者会議の議論と連動しており、今年3月に決定した反ドーピング法の基本方針では、スポーツ向けサプリメントの生産者や流通事業者のアンチ・ドーピング活動の一環として、「製品の品質、安全性、禁止物質混入リスクの管理に関する枠組みを確立し、自発的に同枠組みに関するガイドラインを定める」、「禁止物質混入リスクに関する情報の発信は、中立的な第三者が対応することが望ましい」ことなどが盛りこまれている。

 こうした基本方針の決定を踏まえて、有識者会議は3日、JADAによる食品・サプリメント分野のアンチ・ドーピング認証廃止と新たなGL策定を発表した。

 GLは、アンチ・ドーピング認証における製品・製造管理・審査ほか、分析結果や審査状況の公開を定めたもの。あくまで自主的なものだが、今後のサプリメントのアンチ・ドーピング認証は、これまでのJADAから、GLの枠組みに沿って、様々な民間認証機関が取り組んでいく状況へと変わっていくことになりそうだ。

有識者がGL策定 民間に完全移行へ
 「スポーツにおけるサプリメントの製品情報公開の枠組みに関するガイドライン」(GL)は、「サプリメント製品の製造を行う企業は、本ガイドラインの内容を十分に理解し、内容に準じた安全性の確認対応を遂行していくことが望ましい」(同GLより)というもの。準拠を義務付けるものではないが、実際は「インフォームドチョイス」を展開するLGC社など民間の認証機関は、同GLに沿って認証業務を行うことになる。

 GLの適用範囲は「スポーツにおけるサプリメント製品」で、「栄養成分を粉体、錠剤、カプセル、ジェル、液体等の医薬品的形状で摂取する」もの。いわゆるスポーツドリンクや一般食品は対象外となる。また、GL準拠を示すような認証マークは設けない。このため認証機関は、従前通りの自前の認証マークを使うことが想定される。

 GLは、製品の分析範囲・項目や分析頻度などを規定しているほか、生産施設の審査基準として、「cGMPに相当する、スポーツにおけるサプリメントに適したGMP」を求めている(図表参照)。

 ただし、一般的な健康食品・サプリメント製造の規範であるcGMPやGMPとアンチ・ドーピングの審査・認証のあり方はイコールではない。cGMPを取得した工場で製造されたサプリだとしても、アンチ・ドーピングに対応した生産管理をしていなければ、ドーピング禁止物質が混入する可能性もある。
 製品分析の実施頻度は年1回以上とされ、対象物質はWADAの統計で検出された禁止物質の上位50%を一次対象範囲とし、「このうち60%を下らない範囲」の物質が分析対象とされた。

 GLでは、製品の分析結果や生産施設の審査結果の公開も求めており、情報公開を行うサイトの運営主体は「中立的な立場の組織であることが望ましい」とされた。具体的にはインターネットサイトで情報公開が行われるものと見られる。

 また、今後、新規にアンチ・ドーピング認証を始める認証機関は、ISO/IEC17021の取得が望ましいとしつつも、今後の課題とした。

 GL策定に伴いJADA認証(JADAマーク)は3月31日付けで廃止されたが、前述の有識者会議は、同日までにJADAマークを取得した製品(味の素、明治、大塚薬品、リアルスタイル社の製品)は、来年3月31日まで同マークの使用を認めるとしている。味の素など4社は、今後1年以内に他の民間認証を取得するか、認証を取り止めるか、いずれかの対応を迫られることになる。

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