機能性表示食品 第四次改正GL 施行 軽症者データ 領域拡大(2019.4.11)


 2015年4月の誕生以来変化を重ねてきた機能性表示食品制度。施行5年目の初月となる今年4月も、更なる変貌を遂げて迎えた。制度を所管する消費者庁は3月26日、届出ガイドライン(GL)、質疑応答集(Q&A)を一部改正。大幅な改修を施した届出データベース(DB)の運用も同29日から開始した。

認知機能 MCIは健常者に
 昨年3月末に続いて都合4度目となる今回のGL改正の要点は、軽症者が含まれたデータ(軽症者データ)の取扱いに関する考え方が新たに提示されたことだ。また、改修されたDBの運用開始に伴い、植物エキス・分泌物の届出もようやくスタート。届出可能な機能性関与成分の対象が拡大された。

 機能性の科学的根拠として軽症者データを活用することは、これまでも例外的に可能とされていた。ただ、トクホ制度に準じる形で体脂肪関係など7領域に止まった。今回のGL改正ではその領域をトクホの外にまで拡大。『鼻目のアレルギー反応』、『中長期的な血清尿酸値』『食後の血清尿酸値の上昇』の2領域(アレルギー、尿酸値)に関する機能性表示を行う場合についても、GLで新たに示した範囲内で、例外的に軽症者データの使用を認めた。

2領域を追加 アレルギー等
 機能性表示食品の摂取対象者は、境界域を含めた「疾患に罹患していない者」と規定されている。そのため機能性の科学的根拠も原則、対象とする摂取者層に対して確認されていなければならない。その原則の例外が広げられた背景には有識者らの判断があった。

 「機能性表示食品における軽症者データの取扱いに関する調査・検討事業報告書」。消費者庁の委託を受けて、日本健康・栄養食品協会が有識者による検討会やワーキンググループを設置して取りまとめたものだ。ここでの提言が改正GLに反映された。
 同庁は先月26日、GL改正などに合わせて報告書の全容を公表。報告書の提言概要は別掲の通り。

 報告書では、同事業で検討された以外の領域の軽症者デタの取扱いについて、「本業を参考に業界団体等で検討されることが望まれる」とも提言。さらなる使用可能領域の拡大に向けた可能性を持たせた格好だ。

 この調査事業では、軽症者データについてGL改正で例外的に使用可能となった2領域の他に、認知機能についても検討。だが、軽症者域の設定は見送られた。「MCI」と呼ばれる「軽度認知障害」までを、境界域者を含む健常者に区分する考え方をまとめたためだ。

 これを歓迎する業界関係者は少なくない。加齢に伴う認知機能関連の機能性表示を行う場合の科学的根拠については今後、MCIが含まれるデータでも層別解析などを行うことなく使用できるようになる。この点については今回のQ&A改正で設問が新規追加(問41、42)され、「原則40歳以上の軽度認知障害の者は健常者に含めて差し支えない」などとする考え方が明示された。

 「MCIを境界域、軽症域のどちらと捉えるかは専門医でも意見が分かれる」「MCIの治療薬は存在せず、生活習慣の管理以外の対処ができない」。報告書によれば、MCIを健常域者とすることの適切や、MCIの人に機能性表示食品を提供することの適切性も議論された。そのなかでこうした意見が上げられた。他にも次のような前向きな声が上がったという。

 「MCIを健常域と捉え、科学的根拠が検証された食品という対処の選択肢を生み出すことは、MCIの本人だけでなく家族にもメリットになる。適切な機能性表示食品のあり方にもつながる」
 一方で、報告書ではMCIの区分を見直す必要が今後出てくる可能性も指摘。「病理学的な検査でアミロイドβ陽性となったMCIの者は、疾患として扱われるようになる可能性もある」とし、今後の認知疾患の判断基準の変化を注視する必要があると警告している。

 例外的に使用可能な軽症者データの領域が広がった。では、軽症者データで得られた機能性の科学的根拠を届出表示(ヘルスクレーム)に落とし込むにはどうすればいいのか。報告書では、アレルギーに関してのみ具体的な機能性表示例案が記された。

 たとえば、「〝アレルギー物質〟による〝部位〟の〝反応〟を軽減」──などといったものだ。「アレルギー領域には境界域が存在しない」などとする議論があったため具体的な保健の用途例も検討したとのことだが、「アレルギー物質」の項目に入る言葉として花粉やハウスダストなど、「部位」は鼻、目、「反応」はアレルギー反応などを例示している。

機能性どう表示 今後の運用次第
 報告書に示されたので期待してしまいそうだが、報告書ではこの点、「制度運用上検討すべき事項」だとして結論を留保。そのうえで今回のGL改正では、軽症者データの使用について次の一文が新たに盛り込まれた。

 「その根拠に基づき可能な表示は、保健の目的が期待できる旨であり、疾病に罹患した者を対象とした食品であると誤認させないよう、適切な表示をすること」
 花粉やアレルギー反応などと表示されていることだけをもって医薬品と誤認されるかどうかは微妙だが、ハードルは高いといえそうだ。

 MCIについても、機能性表示食品における科学的根拠の面では健常者として扱われるものの、だからといってヘルスクレームに「軽度認知障害に適す」などと明記することは許されるのかどうか。これら表示の是非は今後の制度運用に委ねられることになる。





エキス等の届出スタート
 今回の制度改正のもう一つの目玉は、植物エキス、分泌物(以下エキス等)の届出開始だ。有識者検討会を経て機能性関与成分の対象に加えられることになったエキス等に関するGLは、昨年3月末のGL改正時、先んじて公開されていた。届出DBの改修が終わるのが待たれていた。
 今回のGL改正では、事前に示されていたエキス等に関する記載に大きな変更はなく、改正Q&Aでも設問が一つ新規追加されるにとどまった(問76)。
 「GLだけではお手上げ」。エキス等の届出を巡っては以前から業界関係者や識者の間でもこうした声が上がり、さらなる詳細、具体が示されなければ実質的な対応が困難だとする指摘もあった。
 こうした声に押されてか、消費者庁と業界団体は、エキス等に関するQ&Aを検討していたとされる。だが、実際に運用しながら課題を抽出、改善策を提示する方向で落ち着いたもよう。事業者、消費者庁ともに手探りでの船出となる。
 最終製品も含めた同等性の検証、担保が肝となるエキス等の届出要件を巡っては、「ハードルが高い」とする見方が専らだ。届出準備を進めている企業もあるが、業界ではエキス等での届出を行いたい意向が現時点では低い様子。これまで通り、「○○由来△△」を機能性関与成分とする形での届出を行う考えを語る先が多い。
 ただ、エキス等はいわゆる健康食品に多く用いられており、機能性表示食品市場が拡大しているといっても、いわゆる健康食品のほうがまだまだ圧倒的に大きい。
 「機能性表示食品制度の目的には、いわゆる健康食品を駆逐することがあると考えています」(3月7日付本紙報道に対する3月29日付ASCON科学者委員会の見解より引用)。「駆逐」との強い言葉が識者からも出てくるなかでは、いわゆる健康食品を機能性表示食品に引き上げるのが急務といえる。そのためにも、エキス等の届出に業界全体で対応していく必要があるだろう。
 エキス等の届出第1号はどの素材となるか。今後の動きが注目される。届出要件こそ厳しいが、「その他の成分が表示しようとする機能性に関与していないかご確認下さい」などと指摘されて差し戻しを繰り返すのであれば、エキス等で届け出てしまったほうが販売開始も早いかもしれない。




医薬と誤認に注意 事前の確認を要求
 今回のGL改正にはもう一つ別のポイントがある。「可能な機能性表示の範囲」の項目の一部の書き振りが改められた。医薬品と誤認される可能性が厚生労働省から指摘された機能性表示食品のヘルスクレーム「歩行能力の改善」問題に応じたものだ。
 修正されたのは、もともと「(前略)明らかに医薬品と誤認されるおそれのあるものであってはならないこととする」とされていた部分。次のように改められた。
 「届出者は届出資料を作成するに当たって、医薬品に関する情報についても確認し、薬機法第2条に規定する医薬品と誤認されるおそれがないよう、留意すること」(一部略)。
 要は、届け出るヘルスクレームが既存医薬品の効能効果と重ならないか、事前確認の徹底を求める書き振りに改められた。「歩行能力の改善」問題では、そこが届出受理後および販売開始後に問題になってしまっことによる。
 医薬品の効能効果などに関する情報は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)のウェブサイトで検索できる。「歩行能力の改善」問題と同じ轍を踏まないために、同サイトなどを活用した事前確認が求められる。
 ただ、医薬品該当性の判断は、消費者庁ではなく厚労省の専門領域。届け出るヘルスクレームの医薬品との重複はもとより、重複の有無にかかわらず広告宣伝の際の表示も含め、薬機法が規定する医薬品と誤認されないかどうかを総合的に事前確認する必要がありそうだ。
 「歩行能力の改善」問題を消費者庁に最初に情報提供した厚労省監視指導・麻薬対策課によると、問題発覚の端緒となったのは、「歩行能力の改善」を強調して訴求する機能性表示食品の広告だったという。


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