日健栄協が要望書 トクホ制度 変革求む声 (2019.4.25)


 制度スタートからおよそ30年が経過されようとする特定保健用食品(トクホ)に大きな変革が求められている。届出の勢いが止まらぬ機能性表示食品に対し、トクホは許可件数が低迷。市場規模も減少傾向だ。日本健康・栄養食品協会は今月、トクホの有効活用と制度の発展を求める要望書を消費者庁などに提出した。

疾病リスク低減型が鍵に
 「私どもとしても大変納得するところもある」。消費者庁の岡村長官は10日の定例会見で要望書の内容についてこうコメント。事実上の制度改正を求める日健栄協の要望に一定の理解を示した。

 日健栄協は要望書を5日付でトクホ制度を担当する消費者庁と、許可審査を行う消費者委員会に書面で提出。消費者庁に対しては、トクホと機能性表示食品の「制度に基づいた棲み分け」、疾病リスク低減型トクホの「表示拡充、仕組みの拡大」など大きく3つの視点から制度改善を求めた。

 要望書は消費者庁の動きに合わせて提出された面もある。同庁は今年度、トクホ制度の運用拡大に向けた検討に着手。疾病リスク低減型トクホに関する調査事業を外部委託で実施することを決めており、今後の制度設計や、新たに加える関与成分に関する基礎的調査を行う予定だ。

 疾病リスク低減型トクホは、文字通り疾病リスクの低減に関わる表示を認めるもの。機能性表示食品には認められていないトクホならではの制度だが、現在、認められた関与成分はカルシウムと葉酸のみ。対して諸外国ではより多くの表示が認められている。そこが拡充されることで機能性表食品との一定の棲み分けも可能になる。

 一方、日健栄協が要望した制度の棲み分けは、より根本的な課題に背景を求めたものだ。機能性表示食品はトクホよりも「強いと受け取られる健康強調表示が可能」との現状認識を示した上で、このままではトクホよりも機能性表示食品が「優位であると(消費者や専門家に)誤認させる可能性も生じる」と問題提起する。

 それを解消する手立ても示した。まず、機能性の科学的根拠に沿ったヘルスクレームと表現が行えるように求めた。現状では、あくまでも事業者責任である機能性表示食品が「血圧が高めの方の血圧を改善する機能があることが報告されています」などと表示できるのに対し、トクホは専門家が審査し国から表示許可を得ているにもかかわらず「血圧が高めの方に適した食品です」などと弱い表現にとどまると指摘する。

 また、消費者に馴染みの薄い用語の変更も要望。たとえば「許可表示」を「期待できる効果」、「関与成分」を「有効成分」とするなど分かりやすい表現に変更するよう求め、「より具体的な表示を可能としていただきたい」などと訴えている。

 「検討課題として考えていくことかというふうに認識しているところ」。10日の岡村長官の会見で、同庁食品表示企画課は要望書について「すぐにというわけではない」としつつこうコメントした。同課は今月1日付でトクホや機能性表示食品など保健機能食品制度や栄養表示を担当する総勢20名規模の「保健表示室」を新設。体制は整えられているといえるだけに要望に対する今後の対応が注目だ。

 日健栄協の調べによると2018年のトクホの年間新規許可品目数は38件にとどまり、16年の95件から大きく減少。機能性表示食品制度のスタートを受け、許可申請件数自体が減少傾向にある。また、市場規模についても18年度は6432億円と前年度を僅かだが下回った。とくに機能性表示食品でも届出の多い中性脂肪・体脂肪関係の市場規模は、前年度から3割近い大幅減になったという。



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