キリンHD ヘルスケア事業を推進 (2019.5.16)


 キリンホールディングスが乳酸菌事業を本格化させる。一昨年からグループ横断で展開する独自乳酸菌のプラズマ乳酸菌と、3月にヤクルトヘルスフーズから取り戻したサプリメントで使用するKW乳酸菌の2素材を軸に、乳酸菌製造に特化した専用工場を新設するとともに、協業品の開発にも積極的に取り組む。同素材を中核にヘルスサイエンス事業の売上高を、18年度の55億円から2021年を目途に150億、27年には230億円に拡大させる。

 同社では4月1日付けで、それまでの事業創造部を「ヘルスサイエンス事業部」に改組。未病・予防という食と医薬品の中間領域の市場をカバーしていく組織として、本格的な活動を開始している。

 事業の中心に据えるのは免疫機能や脳機能分野で、免疫機能ではプラズマ乳酸菌やKW乳酸菌など得意とする乳酸菌に力を入れる。この2素材に続き、新たな第3の素材の展開も検討している。その一環として、20億円を投資して、グループの小岩井乳業東京工場(埼玉県狭山市)内に乳酸菌製造に特化した専用工場「iMUSEヘルスサイエンスファクトリー」を新設。先月25日から稼動を開始している。

 新工場の製造能力は、プラズマ乳酸菌、KW乳酸菌を合わせて年間10㌧で、同社ヘルスサイエンス事業部の佐野環部長によると、年10㌧の製造能力は、「21年に150億円とした売上目標に対応した生産能力」だとしている。

 また、他社との協業製品への乳酸菌供給も前向きに取り組むとしている。新設した工場の生産能力は「自社グループ分の供給を賄う」(佐野部長)ことが中心となりそうだ。外販の展開では、「イミューズ」ブランド立ち上げ当初に、カルビーとの共同開発品が市場に投入され、先月からはカンロが手掛ける機能グミにプラズマ乳酸菌を配合した製品の流通が始まっている。

 これまで「イミューズ」ブランドはプラズマ乳酸菌を用いた商品展開を進めてきたが、KW乳酸菌や今後開発を予定する新たな乳酸菌なども包含させた統一ブランドとして走らせる。すでに同ブランド名を掲げたKW乳酸菌を機能性関与成分とした機能性表示食品のサプリメントを届け出ている。ヘルスクレームは、「目の疲労感の軽減」。

グループ横断で医・食繋ぐ事業
 同社グループが掲げる長期経営構想のひとつ、「医と食をつなぐ事業」では、免疫機能を訴求する乳酸菌事業のほかに、高機能アミノ酸や機能性素材を活用した事業にも力を入れる。同社グループで各種アミノ酸を手掛ける協和発酵バイオの株式95%の取得手続きを先月末に完了させ、同社直下の組織として事業化を加速させる見込みだ。今後は同社を食と医薬品の中間領域をカバーする事業の中核に据え、Eコマースや海外展開にも力を入れる。

 海外展開では、6月にも東南アジア地域に研究開発拠点を構えるとともに、健康管理の意識の高い消費者の多い北米地域へのアプローチを強化する方針。

 一方、昨年7月に三井物産と共に出資した米国のサプリメントメーカー、ソーン・リサーチ社の製品については、当面、日本市場で扱う方針はないとしている。

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