指定成分制度 対象第一弾 4植物が候補リストに (2019.5.23)


 改正食品衛生法で法制化された健康食品の安全性確保にかかわる新たな規制、「指定成分制度」。健康影響情報の届出などが求められることになる指定成分の第1弾候補が20日、明らかにされた。指定成分の位置付けは、ただちに健康影響が生じる訳ではないが、「特別な注意を必要とする」という曖昧なもの。特別な注意の意味を、消費者や事業者が正しく理解できるかどうかが、制度の行方を大きく左右しそうだ。

 15年ぶりの大改正となった改正食衛法は昨年6月に公布された。改正法では、HACCPの制度化などとともに、「特別の注意を必要とする成分等を含む食品による健康被害情報収集制度」として、健康食品に関する新たな安全性規制となる指定成分制度を導入。新8条で規定した。

 指定成分とは、「食品衛生上の危害の発生を防止する見地」に立ち、厚労大臣が指定する「特別の注意を必要とする」成分や物(植物など)を指す。

 新8条では、指定成分を含む食品の製造販売事業者に対し、その食品で健康被害が発生、またはその恐れがある情報を得た場合、都道府県への届出を義務づけた。厚労省は情報への対応を検討した上で、場合によっては販売禁止などの法的措置を講じる。加えて事業者には、指定成分を含む原材料・最終製品の安全性確認、GMPによる適正な製造・品質管理の遵守徹底を告示で求める。

 20日午前に開かれた厚労省の新開発食品調査部会(薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会)。非公開で行われた審議の結果、厚労省が提示した4つの指定成分候補の指定妥当性が了承された。指定成分候補とされたのは、プエラリア・ミリフィカ、ブラックコホシュ、コレウス・フォルスコリー、そしてドオウレンの4植物。

 これら植物を原料にした抽出物など原材料は、製造販売企業ごとに製法や製品規格が異なると考えられるが、厚労省は「注意を要する」という制度の目的を踏まえ、植物名称で指定することで対象を幅広く捉えた。厚労省は今後、食品安全委員会への諮問、パブリックコメントなどを経て、年末までに告示。来年6月までに制度施行する。

食衛法 新8条適用へ
 指定成分制度が創設された背景を振り返ると、これまでの食衛法における健康食品に関する安全性確保規制は、販売禁止措置を講じることができる第6・7条に主に紐付けられていた。

 有害・有毒物質が含むことが自明の場合は6条、食経験が全くない、あるいは通常の摂取方法とは異なる喫食方法で危害が発生した場合などは7条で販売禁止などの重い措置を講じてきた。

 一方、近年では、従来の規制の枠組みに当てはまらない事例も発生している。代表的事例は、強い女性ホルモン様活性を持つ成分を含み、因果関係は不明ではある、月経不順などの健康影響を訴える声が若い女性を中心に相次いだ「プエラリア・ミリフィカ問題」だ。

 厚労省では、事後の調査結果を踏まえ、「製造管理が適切でなく含有量が均一でないこと、摂取目安量が科学的根拠に基づいていないことなどから多くの健康影響が生じた事例だ」と指摘。また、従来の規制の枠組みでは、そうした健康影響や健康被害に関する情報収集が法的に制度化されていないため、「法的措置を講じるに足る必要十分な情報収集ができなかった」と反省する。

 このような背景事情から創設されたのが指定成分制度(新8条規制)だ。施行後、6条・7条規制などとともに運用されていくことになる。

 ただし、新8条の食品安全規制における位置づけは6・7条と大きく異なる。厚労省では、「ただちに健康影響が生じるようなものではない」が「使用・摂取方法等によっては健康影響を生じさせる可能性が否定できないもの」と指定成分の概念を定義。「適切な管理が行われれば製造・販売が可能」としている。

 厚労省は20日の部会で指定成分の選定基準に関する考え方も示した。
 国内外で流通している健康食品のうち、①作用本体である生理活性成分が明確に特定され、過量に摂取すると健康影響が想定される、あるいは健康影響が生じているもの②作用本体である生理活性成分が必ずしも明確に特定されていないが、実際に健康影響が生じているもの──の主に二つ。

 その上で、含有成分や化合物の生理活性▽国内外での流通実態▽食経験▽健康被害情報▽アラート情報▽薬機法など既存制度での管理可能性──などを総合的に考慮し選定する考えだ。

まだ曖昧な指定成分制度 年末までに省令・告示 指定成分の選定 食薬区分にも影響か
 改正食品衛生法に導入された「指定成分制度」の第1弾対象成分候補リストが開示された。一方で、都道府県への届出が義務付けられる健康影響・被害情報の程度、報告の方法など、制度の実行性の担保に必要な細目は曖昧なままだ。

 指定成分含有食品の製造販売事業者に求められる適正な製造・品質管理基準の具体もまだ見えてこない。所管する消費者庁とのすり合わせが必要な表示方法についても不明だ。これらは年末までに省令や告示などで示される見通しだが、事業者が対応準備を進めるためにも、出来るだけ早い策定が求められる。

 また、指定成分制度が施行されることで、指定成分含有食品以外に関する健康影響情報の取扱いや、製造・品質管理基準が曖昧化してしまう可能性も考えられる。

 厚労省では、指定成分制度の施行に合わせ、過去に発出した健康食品の製造や、原材料の安全性に関する行政指導通知の改正も視野に入れている。

 一方、指定成分制度は、食薬区分リストにも影響を及ぼす可能性の高いことが、20日に開催された新開発食品調査部会で分かった。有識者が指定成分候補の選定作業を進める過程で、薬機法による規制が妥当と判断される品目の選別が行われていた。

 20日の部会は、指定成分に関する審議部分は非公開で開催。ただ、配布資料は厚労省のウェブサイトで公開されており、そのうち、指定成分候補の選定経緯が示された資料によると、プエラリア・ミリフィカなど4植物に絞り込んだ今回の指定成分候補リスト「専ら非医薬品リスト」に収載された成分本質と、厚労省が過去に健康食品の安全性について注意喚起した成分などを対象に行われた。

 選定作業では、生理活性や流通実態、食経験、健康被害情報──などを調査し、「特別な注意が必要」、あるいは「注意が必要」な品目を絞り込んでいった。その中から、医薬品医療機器等法による規制が妥当と判断される品目の選別を行ったという。

 医薬品としての規制が妥当と判断された品目名は明かしていない。ただ、関連は不明だが、「(所属する業界団体から)専ら非医リスト成分の取扱いの有無を尋ねるメールを今月受け取った」(原材料事業者)とする話がある。

 同資料によると、直接の選定作業にあたったのは、国立医薬食品衛生研究所生薬部主催で計13回開催されたワーキンググループ(WG)。そこでまとめたリスト素案を、厚労省医薬・生活衛生局の食品基準審査課が事業として立ち上げ、計6回開催した「食品に含まれる指定成分の検討会」にて最終的に取りまとめた。
 指定成分候補の選定作業は今後も必要に応じて継続される予定だという。


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