機能性表示食品 届出後規制 改革へ (2019.6.20)


 6日公表された規制改革推進に関する第5次答申に、機能性表示食品制度の運用改善に向けた提言が盛り込まれた。広告表示を含む届出後規制の運用改善を消費者庁に求めたもので、景品表示法の執行方針の明確化の他、適法か否かの予見性や規制の透明性を高めるためのガイドラインの作成、公表などを要求している。答申を受けて政府は規制改革実施計画を今月中に策定し、閣議決定の上で実行に移す。

 答申を取りまとめた政府の規制改革推進会議が、機能性表示食品制度の運用改善を規制改革の答申に盛り込むのは、第1次(17年5月)、第3次(18年6月)答申に続き都合3度目。今回は「国民自身の選択による自律的な健康づくりの視点」から盛り込むことになった。

 第5次答申に盛り込まれた機能性表示食品制度の運用改善の柱は大きく2つ。法執行方針の明確化と、制度運用における消費者庁食品表示企画課と同表示対策課の連携強化の2つだ。いずれも令和元年度の検討・結論・措置(実施)を要求。順当にいけば来年3月末以降から改善された制度の運用が始まる。

 連携強化については、両課連携の上で「事後チェックの透明性向上に係わるガイドライン」を作成、公表することを求めた。また、届出後規制を所管する表示対策課に対し、「第三者的な役割を持つ機関や組織を活用」するなどして透明性のある法執行の仕組みを構築するよう要求した。

 要求の背景にあるのは、景品表示法の執行に関する事業者の予見性の低さだ。機能性表示食品の広告も誇大広告に当ると判断されれば行政処分を受けるが、答申では、「個別文言ではなく内容全体から総合的に違法性を判断するため、事業者が機能性表示食品として届け出る際に景表法上の問題の有無を予見することが困難」だとして執行基準への疑問を提示した。

 一方、法執行方針の明確化では、届出表示(ヘルスクレーム)を裏付ける科学的根拠について、どのような場合に根拠を欠くと見なされ、景表法処分の対象となるのかについて、考え方をガイドラインなどで整理、公表するよう求めた。

 これは、届け出たヘルスクレームが科学的根拠に欠けると判定された場合に執行される法律は、食品表示法に基づく行政指導なのか、それとも景表法の措置命令なのか、事業者の予見性に欠けるとの観点から求めたもの。措置命令は課徴金納付命令も伴うため事業者にとっては極めて重い措置となるが、一体どちらの法律が執行されるのかが不透明なため「(届出に向けた)事業者の萎縮や不公平感をもたらしている」とも答申では指摘している。

 この要求について答申では、食品表示法における「指示及び指導並びに公表の指針」も参照して考え方を示すよう求めた。同指針は、食表法に違反した事業者に対する指導、指示、公表に関する執行指針を端的に示すもの。これを参考に、曖昧な届出後規制における法執行方針を明確化させる方向だ。

第三者機関の活用も要請
 科学的根拠を欠く機能性表示食品の広告宣伝によって届出者が景表法など関係法令で処分を受けることへの規制改革推進会議の基本姿勢は「事業者責任に他ならない」。事業者を突き放している。その上で第5次答申では、機能性表示食品制度の運用改善に向け、消費者庁に対して大きな改革を求めることになった。

 とりわけ、消費者庁表示対策課に求めた、第三者的機関を活用した透明性のある法執行の仕組みが注目だ。業界団体なども関わる形で第三者機関を組織し、そこと同課が連携しながら販売開始前の届出の内容をチェックすることで、景表法上問題となる可能性がある届出を事前に抽出するスキームが想定されているとみられる。

 この仕組みが実効的に運用されれば、届出の範囲内である限り広告表示・宣伝上の問題は原則起きない。販売開始後に、表示対策課が運用する「セカンドオピニオン」など第三者から機能性に関する科学的根拠等への疑義を受けて、届出取り下げに至るケースも減じる可能性がある。

 加えて、「事後チェックの透明性向上に係るガイドライン」が作成されることにもなる。答申では、このガイドラインで「事業者が届出の段階において販売後の関係法令上の問題も自ら把握できるよう」にするとの考えを示している。

 このガイドラインの作成について表示対策課長は今年3月、答申に向けた議論を行った規制改革推進会議ワーキンググループ会合の場で、「事業者の方の意見、現場の意見も踏まえてつくっていくことが必要」だとして、業界の意見も聞きながらガイドライン作成にあたることで透明性を担保したい考えを述べている。

 これまでは適正な届出、それに基づく適正な広告表示に向けた事業者の自主的取り組みにも暗中模索な面もあった。そこに一定の指針が示されることになる。

規制改革推進会議・森下竜一委員 予見性の低さを問題視
 機能性表示食品制度の運用改善を、規制改革推進会議が改めて消費者庁に求めたのはなぜか。同会議委員の森下竜一・大阪大学大学院教授に尋ねた。

 ◇
 機能性表示食品の届出・広告宣伝の表現について議論してきた。これまでに様ざまな問題が起きたからだ。事業者から見て、非常に困惑するケースが多かったと思う。これを放置すると、制度全体に影響を与えると我々は考えた。

 どのような場合に科学的根拠に欠けると判断されるのか。あるいは、どのような場合に景品表示法違反だとされて措置命令を受けるのか。そうした事後規制に対する事業者の予見性が低いとしか言えない現状に対し、我々は大きな問題意識をもった。

 予見性がないということは、法律を守りたくても守れないことを意味する。法定速度が示されていなければスピードを守りようがない。にもかかわらずスピード違反だとして捕まえるのはあまりにアンフェアであり、まずは複雑な広告規制や事後規制に対する事業者の予見性を向上させていくことが重要だと捉え、議論してきた。その結果が今回の答申だ。

 消費者庁にはしっかり取り組んでもらいたい。これまでの混乱や事業者の戸惑いの原因には、届出を受け付ける食品表示課と、事後規制を行う表示対策課で所管する法律が異なり、両課がバラバラに制度運用してきたことがあるだろう。そのため、同じような事例であっても、一方は食品表示法に基づく撤回命令、もう一方には景表法による措置命令などと、非常に合理性と予見性のないことになる。この状態を解消するため両課の連携強化を求めた。

 また、景表法については優良誤認の判定基準がはっきりしない。科学的根拠などに関する事後規制の根拠とされているセカンドオピニオンも透明性が非常に低く、やはり事業者の予見性に欠ける。そこで、第三者的な役割を持つ機関あるいは組織を関係団体と共に消費者庁が構築し、そこにおいて販売開始前までの段階で、科学的根拠などの評価を行うことも求めた。透明性を確保した形で、ダメならダメを事業者に明確に示してもらいたいということだ。

 今回求めた大きく2つの制度運用改善事項が動き出せば、届出・広告宣伝の表現を巡る混乱はある程度収まると思っている。事業者がより届け出がしやすくなることを期待している。しかし当然、届け出た機能性表示の範囲を超えた広告・宣伝は、今後も取り締りの対象になる。あくまでも届出の範囲内で広告宣伝するようにしてもらいたい。

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