消費者理解度 深まらず 機能性、トクホと誤認も多く(2019.7.25)


 機能性表示食品に対する消費者の正しい理解がなかなか広がらない。消費者庁が昨年度実施した1万人対象のウェブ調査では、機能性表示食品の仕組みを正しく理解する人の割合よりも、特定保健用食品(トクホ)のように国に審査されたものだと誤認している割合の方が高かった。届出が増え続けているなかで、トクホと思い込んで購入する人が増えている可能性がありそうだ。「非常に大きな問題だ」と指摘する声も上がる。

保健機能食品「分からない」
 7月18日に開催された消費者委員会の本会議。「機能性表示食品の理解度の低さは課題。特に、機能性表示食品をトクホと誤認している現状は非常に大きな問題だ」。委員の一人はそう指摘し、早く解決する必要があると対応を求めた。

 この日の議題は、消費者庁が昨年度実施した「食品表示に関する消費者意向調査」の結果について。同調査は、満15歳以上の一般消費者1万人を対象に、食品表示制度に対する理解度をウェブ調査で調べたもの。17年度以降の調査では、毎年度同じ設問を盛り込み、理解度の変化を経年比較している。

 昨年度調査では、保健機能食品の正しい理解を尋ねる設問のうち、正答率が最も低かったのは栄養機能食品だった。わずか10.4%。逆に、最も高かったのはトクホで34.7%だった。

 一方、機能性表示食品は16.9%で、「表示されている効果や安全性について国が審査を行っている」を選んだ人が19.8%と正答率を上回った。17年度調査でも同じような結果が出ている。

 機能性表示食品の届出は2000件を超えた。他方でトクホの許可件数は、機能性表示食品制度の施行以来、鈍化傾向を示す。「機能性表示食品ばかりが増えていて、それを(トクホと)誤認したまま購入している状況は、早く解決する必要がある」。この日の会議で機能性表示食品の理解度の低さを問題視した委員はそう訴えた。

 ただ、消費者の正しい理解が進んでいないのは機能性表示食品だけではない。保健機能食品全体がそうである現実を同調査結果は示唆する。年度調査と比べて正答率はそれぞれ僅かだが高まっており、正しく理解する消費者が少しずつ増えている可能性も認められるが、3食品全てについて正しいと思う選択肢が「分からない」と答えた人が30%台に達した。正答率が3割台半ばと最も高いトクホでさえ、32%の人がそう答えた。

 一方で、制度を正しく理解できていないことは「大きな問題だろうか。機能が表示されていれば、消費者はその食品の機能を知り、商品選択に役立てられる」とある業界関係者は指摘する。実際、医薬部外品をトクホや機能性表示食品など食品と誤認する消費者が存在する可能性も指摘されているが、それによる弊害は知られていない。

 しかし、保健機能食品の消費者理解度が低い現状に対し、この日の会議で別の委員は「それぞれの特徴や、差別化していく部分をセットで啓発していくことも求められる」と意見。また別の委員も「(保健機能食品の違いは)本当に分からない。『バランスの取れた食事~』が大きく表示されているが、分かり切ったことであり必要ない。もっと大事な情報がある。むしろ、3つの食品の違いを明快にプロモーションしてもらいたい」と述べた。

 3つある保健機能食品はそれぞれどう違うのか。この日の会議に出席した、保健機能食品制度を所管する消費者庁食品表示企画課は、そこが分かりにくいことが「理解が進まない一つの要因にもなっている」との考えを述べ、「各制度の良さを生かし、ならではのところを広げていけば、一定の棲み分けに繋がる。そうすると消費者のかたも理解しやすくなる」と理解度向上に向けた方向性を示した。

 そのためにカギとなるのは、トクホ制度に組み込まれている疾病リスク低減表示を拡大できるかどうかだ。まさに国が審査して許可するトクホならではの仕組みで、届出制の機能性表示食品では「キャッチアップできないだろう」と同課は話す。そのための取り組みも具体的に検討しており、今年度、疾病リスク低減表示に関する調査事業を外部委託で実施する方針だ。調査結果を踏まえ、来年度以降、疾病リスク低減表示の拡大に向けた本格検討に入る可能性もある。

 ただ、仮に、トクホの疾病リスク低減表示の拡大が実現したとしても、保健機能食品全体に対する正しい理解が広まるかは不透明だ。栄養機能食品はどうするか。その理解度はトクホ、機能性表示食品と比べて大幅に低い10%前後にとどまる。そもそも、食品表示制度全体に対する消費者の正しい理解が進んでいるとは言えない現状も、消費者意向調査の結果は示唆している。行政による普及啓発や制度改善を後押しする産業界側の取り組みも求められそうだ。



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