機能性 サプリ 公正競争規約作成へ 協議会とJADMAが連携(2019.10.10)


 機能性表示食品とサプリメント(いわゆる健康食品)の表示に関する公正競争規約を作成しようとする動きが、業界を横断する形で立ち上がっている。音頭を取るのは、健康食品産業協議会と日本通信販売協会の2団体。早ければ今月中にも規約作成に向けた検討を始めたい考えで、検討には、日本抗加齢協会や日本チェーンドラッグストア協会も加わる見通しだ。健康食品・サプリメントに関わる業界団体が一枚岩になれる千載一遇のチャンスといえる。

業界横断で内容検討
 公正競争規約は、表示や景品類について、業界団体や事業者が自主的に定めるルール。業界自主ルールだが、景品表示法の規定に基づき、公正取引委員会や消費者庁長官の認定を受ける。

 公正競争規約に参加する事業者は、規約内容を遵守している限り、「景品表示法や関係法令上問題とされることがないため、安心して販売活動ができます」(消費者庁HP)とされる。

 逆に、規約に参加していない事業者が不当表示などを行った場合、消費者庁は必要な法的措置を執る。

 健康食品産業協議会(協議会)と日本通信販売協会(JADMA)は今回、機能性表示食品のみならず、いわゆる健康食品の表示に関する公正競争規約の作成まで目指そうとしている。健康食品業界が抱える根本的な課題は、いわゆる健康食品にこそあると捉えているようだ。実際、保健機能食品制度の外に置かれて法制度上の定義や規定がなく、それもあって表示を巡る問題が絶えない。

 協議会とJADMAは10月3日、機能性表示食品といわゆる健康食品の公正競争規約を業界団体が連携して作成したい考えを消費者庁幹部に伝えた。団体関係者によると、同庁は協力する意向を示した。公取委関係者も同様の考えを語っているという。

 両団体は今後、協議会内に公正競争規約準備室を設けて、規約作成に向けた検討を連携して進める計画。他の団体からの検討参加も受け入れていく考えで、まずは日本抗加齢協会が参加する考えを表明している。同協会幹部は10月8日、「両団体と連携して動く」と取材にコメントした。

 また、ドラッグストア大手など133社が正会員として参画している日本チェーンドラッグストア協会も、検討に参加する可能性が高い。現時点では参加を表明していないが、同業界関係者は、「検討を拒否する理由はないだろう。(ドラッグストアの)店頭も、健康食品の表示に悩んでいる。公正競争規約のようなものがあれば有難いという話は以前からあった」と話す。

 協議会とJADMAが連携して取り組む今回の動きの背景には、今年6月に閣議決定された規制改革実施計画がある。

業界〝一枚岩〟へ
 規制改革実施計画では、機能性表示食品について、「事後チェックの透明性向上に係るガイドラインを作成・公表」するとともに「事業者の自主的な表示適正化の取組を支援」することなどを消費者庁に要求。また、透明性の高い法執行の仕組みを構築するためとして、「第三者的な役割を持つ機関あるいは組織の活用等」も求めた。

 これら規制改革事項は、両団体が機能性表示食品に関する景表法運用上の課題点を規制改革推進会議に指摘したことで、同計画に盛り込まれたものだった。

 こうした経緯を踏まえ、両団体は提案者として規制改革事項の実効性担保のために、機能性表示食品の公正競争規約の作成に乗り出す。併せて、いわゆる健康食品に関する規約も作成し、業界横断的に健康食品市場全体の表示是正に取り組み、市場の成長を図る考えだ。規制改革実施計画の土台をまとめた規制改革推進会議関係者も、「提案者である両団体が中心になって活動するのが筋だろう。そのような動きがあるのだとすれば、歓迎したい」と話す。

 機能性表示食品の公正競争規約の作成は比較的スムーズに進む可能性がある。消費者庁が今後示す、事後規制に関するガイドラインを土台にできる。また、両団体は16年4月、機能性表示食品に関する「適正広告自主基準」を連名でまとめており、これも参考にできそうだ。

 一方で、いわゆる健康食品の公正競争規約の作成は難航する可能性がある。規約を定めるにはまず、対象となる商品を定める必要があるが、いわゆる健康食品には基準がないためだ。

 日本健康・栄養食品協会によると、同協会で以前、いわゆる健康食品に関する公正競争規約の作成が可能か検討したことがあった。しかし、基準や定義がないため断念したという。

 ただ、この問題は、対象をカプセル・錠剤など剤型別に区分けし、その上で検討を進めることで解消できる可能性が高い。団体関係者は「いわゆる健康食品として一緒くたに括るのではなく、例えば、まずはカプセル・錠剤に対象を絞って検討を進める。その後対象を順次広げていけばいい。
定義がないからと言って諦めていては何も変わらない」と今後の規約作成の検討に向けた意気込みを語る。

 両団体が今後設置する予定の公正競争規約準備室の室長には、景表法の運用や公正競争規約に精通した公取委OBが迎えられる予定だ。

 また、具体的な検討に当たっては、行政関係者、消費者団体、アカデミアなどからも幅広く意見も聞く。検討は月2~3回が予定されているといい、できるだけ早い時期に公正競争規約の大枠をまとめたい考えだ。

公正競争規約=公正取引委員会や消費者庁長官が認定する、表示や景品類に関する業界自主ルール。景品表示法31条に基づく。不当な顧客誘引の防止▽消費者の合理的な商品選択▽事業者間の公正な競争の確保──の3つを主要な目的とする。認定された規約は、業界の自主規制機関(公正取引協議会)が運用する。公正競争規約に参加したい事業者は、公正取引協議会に加入する。消費者庁によると現在101の公正競争規約が設定されている。そのうち、食品の表示に関する規約は、飲用乳▽果実飲料等▽チョコレート類など34。健康食品関連ではローヤルゼリー、もろみ酢の規約が既に設けられている。


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