日本製サプリ、需要高く 海外に照準、施策進む(2019.11.7)

アムス淺山社長④ ティーライフ旗艦店①

 サプリメントを扱う健康関連企業の海外事業の展開が具体化しつつある。国外の需要を見据え、アジア圏での販売実績を上げているファンケルやアムスライフサイエンスなどに加え、ここ数年業績を伸ばしているティーライフなど、インバウンド消費からジャパンブランドの手応えを得るなどした各企業の海外への取組みが加速している。

ファンケル 来年にロシア進出
 海外事業を成長ドライバーに、サプリメントの中国市場進出を表明していたファンケルが、2020年中にロシアへ進出することを明らかにした。10月30日開催のアナリスト向け決算説明会で明かしたもので、すでに現地の大手ドラッグストアチェーンとの話し合いも進んでおり、今後販売許認可などを得て、ビタミン、ミネラルなどのベースサプリや機能性サプリの順次販売に乗り出す。来年度から予定する中国での本格販売と合わせ、同社の海外事業が勢いを増したかたちだ。

 「ロシアのサプリメント市場は1700億円ほどで、販売の約8割がドラッグストアとされている。日本の半分の市場水準だが、大きな需要がある」――説明会で石神幸宏経営企画本部長はこう述べた。同社の国別インバウンド売上でも、中国やシンガポールなどに続きロシアが5位に入るなど需要が高いと判断し、進出することを決めた模様だ。

 すでに進行している中国での事業進捗も順調だ。20年度中に計画している中国に投入する保健食品の許認可に向けた準備を進める一方で、年明けを目途にサプリメントと薬の相互作用の有無を検索するサービスを中国で開始する。昨年11月から展開しているTモールなど越境ECでのサプリ販売に役立てる。今月5日から上海で開催された中国国際輸入博覧会に出展し、同サービスを披露している。

 同検索サービスは、日本国内では2004年から始めているSDI(Supplement andDrug Interaction)システムを中国仕様としたもの。同社製サプリ約100品と、中国国内で流通している医療用医薬品やOTC医薬品など約11万製品との飲み合わせを検索することができる。この11万製品には約6万種が流通するとされる漢方薬は含まれていないが、今後取り入れることを検討していく。

 先月30日には、20年3月期第2四半期の業績を発表している。売上高は対前年比9.8%増の662億300万円、経常利益は同25.35%増の89億8300万円。インバウンドが堅調に推移したなど業績を押し上げた。

 サプリメント事業の業績は、昨年から注力する機能性表示食品の「内脂サポート」や、今春から展開する「尿酸サポート」に加え、「年代別サプリメント」が好調に推移し、売上高は同4.5%増の229億6200万円だった。損益面では、増収効果による売上総利益が増加したものの、「尿酸サポート」などの生活習慣対策サプリを中心にプロモーションを展開したことなどで、営業利益は同1.9%減の21億8300万円の減益となった。下期には、同社がスター製品とする機能性表示食品をリニューアルする予定で、届出公表されているダイエット食品の「カロリミット」とみられている。
 化粧品事業では、米国を中心に展開する「ボウシャ」が苦戦したが、ファンケル化粧品、アテニア化粧品ともに2ケタの伸び率を示し、売上高は同14.0%増の399億300万円、営業利益も同27.0増の75億3100万円を計上した。

アムスライフ 中国工場の拡張も
 健康食品受託製造のAFC‐HDアムスライフサイエンスが海外事業の拡充に乗り出す。3年後を目途に中国・保健食品の認可を取得し、国内で展開する「AFC」のブランド名を活用して中国現地で健康食品の販売を開始する。2021年初頭に本格稼働を予定する、健康食品、化粧品を製造する中国の生産工場の拡張も検討する。10月24日に都内で開催した決算説明会で、今後取組みを強化する海外事業の施策を明かした。

 先月10日に発表した同社の19年8月期の業績のうち、海外部門の売上高は対前年比45%の大幅な伸び。増額面でも、主力のOEM部門の2億円増を上回る3.7億円の増収を海外部門が上げるなど、ここ数年で着実に事業売上を伸ばしている。

 「まずは、この3年を準備期間として商品のブランディングなどを行う。越境ECによる展開も始めて、中国現地での企業イメージの浸透を図る」(田村茂樹常務取締役)など、22年度以降に計画する中国での本格販売のための土台作りに着手する。事業の進捗が順調に進めば、26年度以降に販売面での拡充、物流網を確立するほか、生産拠点も増やす考え。

 一方、国内での施策では、主力のOEM事業に引き続き注力する。前期は、青汁やダイエットなどドラッグストア向けの定番商材が好調で、機能性表示食品の受注も増えた。前の期の24社42品目から43社82品目に大幅に増えており、今期は営業人員を強化してさらなる受注増に備える。製造面でも、前期の流動層造粒機、ハードカプセル充填機に続き、9月にハードカプ充填機を1台増設するなど生産ラインを拡充している。

 素材開発についても準備が進む。同社では昨年、独自の原材料開発に初めて着手する方針を発表。静岡県立大学薬学部と共同で進めるもので、まずは柑橘類に含まれる機能成分の研究を始めている。20年には、エキスを製剤化する際の設備を導入した開発棟の新設も計画している。

 「国内はもとより、これから取引が始まる中国側の担当者からも独自素材を使った商品が求められている」(淺山雄彦社長)。早い段階での商材導入は難しいとしつつ、22年度以降に予定する原材料開発の事業化をできるだけ早めたい意向だ。独自素材を導入することで、主力のOEM事業にもつなげていく。

ティーライフ 中国で越境EC強化
 健康食品、化粧品通販のティーライフは、中国のECモール「天猫国際」に「Tealife海外旗艦店」を10月21日に開設、越境ECでの本格展開に乗り出す。まずは国内で人気の高いルイボスティーを中心に、植物発酵エキス配合のダイエット食品や乳酸菌入り青汁、プーアール茶など7品をラインナップし、順次健康食品の商材を拡充させる。化粧品については、健食販売の状況をみて、ラインナップに加える考え。

 旗艦店で取り扱うのは、「ルイボスティー」「酵素スムージー」「乳酸菌100億個のチカラ」「葉酸+鉄」「濃縮プーアール茶サプリ」「生酵素粒W」「富士の白雪イヌリン」の7品。
 同社の海外事業の展開は、2017年に台湾に現地法人を立ち上げ、台湾でのネット通販を手掛けたことを皮切りに、昨年11月には中国・上海に現地法人を設けるなど、越境ECを通じてその他のアジア圏への市場進出を拡大させている。今年9月に発表した19年7月期の業績は、売上高で対前年比27.4%増の92億8600万円を計上している。

【写真=独自素材の導入を早めたい意向を示した淺山雄彦社長】

【写真=9月に開設した旗艦店のトップページ】

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