認知機能対応 一般食品でも広がるか(2019.11.21)


 認知機能に及ぼす一般食品の効果を臨床試験で検証した成果を食品メーカー大手が相次いで発表した。ココアの単回摂取やカマンベールチーズにその機能が期待できるという。認知機能関連のヘルスクレームを行う機能性表示食品の届出は現在210件超に上る。そのうち約170件をサプリメントが占有しているが、脳の健康を巡る需要獲得競争に今後、一般食品が大きく関わってくることもあり得そうだ。加えて、最近では生鮮食品でも認知関連機能を訴求する届出が増えている。

カカオフラバノールに着目
 ココアを一杯摂取するだけで記憶力や判断力機能が一時的に維持・増進される──こうしたヒト試験結果を11月7日に発表したのは森永製菓。20~40歳の健常男女7名(試験開始時15名)対象のヒト試験で確認したという。論文も『薬理と治療』の最新号(19年47巻10号)に掲載された。

 発表によると、試験で被験者はカカオフラバノールを30㍉㌘含むココア、またはココアパウダーを含まないココア風味飲料を1回だけ摂取。その30分後に認知機能テスト(コグニトラックス)を実施した結果、ココア摂取群は、即時記憶や反応速度に関する成績が、プラセボ群と比べて有意に高かったという。

 同社によると、カカオフラバノール30㍉㌘は「一杯のココアに含まれる程度」の量。そのため、今回の試験結果からは「カカオフラバノールを含むココアを一杯摂取することで、図形に関する情報を記憶することをサポートする」ことが示されたと解説。その上で「認知機能の一部である記憶力や判断力に関する機能を維持・増進する」と考えられるとし、機能性表示食品として届出を行うことを示唆している。

 『森永ココア』。森永製菓の菓子食品事業の主力製品のひとつで、今秋に発売100周年を迎える。そうした節目に、認知関連機能の維持・増進を訴求する従来なかったココアを打ち出し、新たな需要を開拓していく狙いがありそうだ。

 同社は以前からカカオフラバノールに着目した機能性研究を行っており、これまでに冷え改善機能や、ウォーミングアップ後の柔軟性に対する改善機能などを確認。同成分を機能性関与成分にした機能性表示食品の届出実績も、既につくっている。

MCIを対象に試験
 明治も一般食品に関する臨床試験結果を11月6日に発表した。桜美林大学、東京都健康長寿医療センターと共同実施したもので、カマンベールチーズの摂取によって、軽度認知障害(MCI)を持つ高齢者の血中BDNF(脳由来神経栄養因子)濃度を上昇させることが確認されたという。論文も海外ジャーナルに掲載された。

 BDNFは、アルツハイマー型認知症との関連が報告されている因子で、認知症に伴いBDNFの濃度も低下するといわれる。

 明治とカマンベールチーズの関係については、『北海道十勝カマンベールチーズ』の製造販売元が同社。「チーズの機能性に関する研究は、これまであまり行ってこなかったが、今後は力を入れて進めていきたい」と同社の谷口茂常務(研究本部長)は話す。ただ、機能性表示食品としての届出を行うかどうかについては、「今は考えていない」(同社担当者)としている。

 発表によると、試験はランダム化クロスオーバー比較試験(RCT)によるもの。被験者は東京都内在住のMCIと判断された70歳以上の女性71人。市販のカマンベールチーズを1日2ピース摂取する群と、市販の6ピースプロセスチーズを同じく1日2ピース摂取する群(対照群)に無作為に分け、それぞれ3カ月摂取してもらい、血中のBDNF濃度を測定した。

 その結果、カマンベールチーズ摂取群は、摂取後に血中BDNFが6.18%と有意に上昇したのに対し、対照群は2.66%低下したという。食品入れ替え後の測定でも、カマンベールチーズ摂取群はBDNF濃度が有意に上昇したという。

 明治などによると、カマンベールチーズに含まれる脳や神経に作用する成分としては、オレイン酸アミド、デヒドロエルゴステロールが特定されているという。


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