植物セラミド 肌だけでなく脳にも 認知機能維持する可能性(2019.12.26)

植物セラミド アルツハイマー発症予防の可能性 北大①

 肌の潤いを保つ機能性を持つことで知られる植物由来セラミド(グルコシルセラミド)が、アルツハイマー病の予防に有効である可能性を突き止めたと、北海道大学の研究チームが12月19日、都内で記者会見を開いて発表した。今のところ動物に対する知見にとどまるが、こんにゃく芋由来グルコシルセラミドをアルツハイマー病モデルマウスに経口投与したところ、同病の発症原因とされるアミロイドβ蓄積が抑制されたり、短期記憶行動障害が改善されたりしたという。

 この機能性を突き止めたのは、北海道大学大学院先端生命科学研究院の湯山耕平特任准教授、同・五十嵐靖之招聘客員教授らの研究チーム。20日の会見で、セラミドの研究で国際的に著名な五十嵐氏は、「アルツハイマー病の予防は社会的な課題。アミロイドβの蓄積には長い時間がかかる。そのため創薬を難しくさせているが、そこは食品で対応できる可能性がある。毎日の食生活の中で予防していくことが重要だ」と述べた。

 研究成果をまとめた論文は先月14日、自然科学系学術誌「サイエンティック・レポート」に掲載された。この論文著者には、こんにゃく芋由来グルコシルセラミドの原材料供給などを手掛けるダイセルの関係者も含まれる。

 研究チームは今後、臨床試験を実施する計画。現在、試験開始に向けた準備を進めており、こんにゃく芋由来グルコシルセラミドの摂取による認知機能改善作用などを検証する。有効な摂取量なども調べる。ヒトに対する知見を積み上げていくことで、将来的に、機能性表示食品などとして研究成果を社会実装したい考えだ。

 20日の会見で湯山氏は、今回の研究成果の概要を解説した。脳内でアミロイドβを過剰発現するアルツハイマー病モデルマウスに対し、こんにゃく芋から精製したグルコシルセラミドを1日1㍉㌘、2週間継続して経口投与したところ、脳内の大脳皮質や海馬領域でアミロイドβ濃度が低下し、アミロイドβが沈着したアミロイド斑が減少。毒性のより強いアミロイドβオリゴマーも減少した。また、海馬領域ではシナプス障害の抑制も見られた他、行動実験の結果、短期記憶の改善が認められたという。

 あくまでもモデルマウスを対象に明らかにしたのだが、今回の研究成果からは、アミロイドβ標的薬と類似の効果が期待できることが示唆されるといい、アルツハイマー病予防目的の機能性食品素材、さらには新薬開発に貢献できる可能性があるとしている。
 また、作用メカニズムについても一部を明らかにしたという。

 経口投与された植物セラミドがエクソソーム(細胞外小胞)の産生を促進することで、アミロイドβを減少させることなどを突き止めた。五十嵐氏らの研究チームはこれまでの研究で、神経細胞から放出されたエクソソームがアミロイドβを除去する能力を持つことを、培養細胞とアルツハイマー病モデルマウスを使った試験で明らかにしていた。

【写真=12月20日、研究成果を伝える記者会見を都内で開催。本研究の意義を語る北大・五十嵐氏(写真中)。右は研究を主導した同大・湯山氏】

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