近づく施行 指定成分制度 「注意必要」義務表示へ(2020.1.23)


 昨年6月公布の改正食品衛生法に基づき今年6月1日に施行される、主に健康食品を対象にした新たな食品安全確保規制「指定成分等含有食品制度」について、食品表示制度を所管する消費者庁は、新制度に合わせ、食品表示基準の一部改正を行う方針を固めた。指定成分等含有食品の容器包装に、指定成分等含有食品である旨、指定成分等とは注意を必要とする成分である旨──などの表示を義務付ける。1月16日に消費者委員会への諮問を行い、翌17日からパブリックコメントの募集を開始した。

 消費者委は今月23日に開く食品表示部会で審議する予定。パブコメの募集期間は2月15日まで。消費者庁は食品表示基準第2条第2項の表などを一部改正する考えで、改正基準は、指定成分等含有食品制度の施行と同時に施行する。指定成分等含有食品を販売する企業は義務表示への対応が必要になる。

 消費者庁が示した改正案によると、容器包装に「指定成分等含有食品(〇〇)」と表示することを義務付ける。「〇〇」には指定成分等の名称を記載する。現在、指定成分等の第1弾候補として、プエラリア・ミリフィカ▽ブラックコホシュ▽ドオウレン▽コレウス・フォルスコリー──の4植物由来素材が選定。このまま6月1日から制度施行される見通しだ。

 また、当該食品を販売する事業者(表示責任者)の連絡先や、以下2つの表示も義務付ける方針。「指定成分等とは、食品衛生上の危害の発生を防止する見地から特別の注意を必要とする成分又は物です。」、「体調に異変を感じた際は、速やかに摂取を中止し、医師に相談してください。加えて、体調に異変を感じた旨を表示された連絡先に連絡してください。」──。施行後、健康食品の商品パッケージに「特別の注意を必要とする」などと表示されていることに対する一般消費者の受け止めが注目される。

 厚労省は、指定成分等含有食品制度を通じて、指定成分等含有食品の営業者に対し、健康被害情報や健康被害を生じさせる恐れのある情報を、都道府県等に届け出る義務を課す。届出に必要な事項は今後、厚労省が2月を目途に公布する省令で規定されることになる。
 厚労省はまた、指定成分等含有食品の製造・加工基準にGMPを導入し、基準を規定した告示を新たに制定する方針。指定成分等含有食品の製造者は、原材料も含め、新たな製造・加工基準の順守が求められることになる。この告示も、2月を目途に公布される見通し。

関係者困惑「正しい周知を」
 6月1日施行される指定成分等含有食品制度を巡り、制度対応を求められる業界関係者から困惑の声が上がっている。

 「関係各社から多数の問い合わせをいただいている」と言う指定成分等候補を取扱うある原材料事業者は、現時点では指定成分の「候補」であるにもかかわらず、「販売が中止になる」などと誤解されている場合もあり、現状では制度が正しく周知されていないと指摘。「国民の健康維持の観点からも制度の重要性を認識している」としつつも、「混乱の中で不確定な情報をもって対応せざるを得ない状況に陥っている」と嘆く。

 制度を所管する厚生労働省の食品基準審査課は1月20日、昨年12月に募集を始めていたパブリックコメントの結果を薬事食品・衛生審議会の新開発食品調査部会(食品衛生分科会)に開示した。

 配布資料によると、パブコメでは前述の原材料事業者からの意見の他に、「今後の事業活動に不安が残る」とする声も寄せられた。指定成分等の「設定基準が不明瞭」であり、今後、「どのような成分が指定成分として設定される可能性があるのか」の判断が難しいため不安が残るという。「基準の明確化を何卒お願い申し上げます」と同省に要望した。

 現在までに指定成分候補とされたプエラリア・ミリフィカなど4品目の植物由来素材は、食薬区分の「専ら非医薬品」リストの他、過去に厚労省が健康食品の安全性に関する注意喚起を行った27品目から選定されたものだが、同課はこの日、絞り込みの過程について説明した。まずは「含有されている化合物の生理活性の程度を指標」に、国内外での流通実態▽食経験、実際の健康被害情報の有無▽国内外のアラート情報▽既存制度での管理可能性▽加工方法及び注意を必要とする含有化合物の濃度▽食品としての認知度──を「総合的に考慮して指定した」。

 一方で、パブリックコメントでは、指定成分等候補に選定されたことに対する疑問の声が多く寄せられた素材もあった。4素材の中で市場規模が最も大きいコレウス・フォルスコリーだ。

 コレウスを巡っては共通する意見が寄せられた。海外学術誌に昨年掲載されたコレウス抽出物に関する論文で、1日あたり500㍉㌘までの摂取は「許容範囲内」と報告されているとの指摘だ。この論文の責任著者は、これまでもコレウス抽出物の安全性について報告してきた新開発食品調査部会の委員であったため、「非公開の会議で正当な議論はされたのか」などと指定候補の選定過程を疑問視する声が上がるとともに、「最新の論文に従って指定を見送るか、500㍉㌘/日以上を指定対象とするなど、閾値を設けるべき」だとする要望が寄せられた。

 不要な風評被害を起こさない制度運用を厚労省に強く求める意見も寄せられた。おそらく業界関係者とみられるが、健康被害情報等の届出が義務付けられることで、「あたかも指定成分等含有食品もしくは指定成分が危険なものであるといった誤った認識を消費者が抱きかねない」と懸念。また、「風評被害は事業活動に大きな支障をきたす」とし、「場合によっては訴訟問題に発展しかねない」と指摘している。

 このおそらく業界関係者は、そうした事態を避けるためにも、適切な消費者教育や消費者への情報提供、そして届出された情報の管理──などを踏まえた適正な制度づくりと制度運用を厚労省に求めている。



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