公正競争規約 まずは特保(2020.3.26)

トクホ公正マーク 再修正①

 日本健康・栄養食品協会が昨年から検討作業を本格化させていた特定保健用食品(トクホ)の公正競争規約が4月からの新年度早々にもまとまり、運用が始まりそうだ。公正競争規約制度を所管する消費者庁と公正取引委員会は3月13日、日健栄協が取りまとめた規約及び施行規則のそれぞれ案を公表し、意見募集を開始した。新たな規約はここ数年登場しておらず、関連団体によれば、2012年に設定された「仏壇」以来となる。

消費者の利益保護する役割
 公正競争規約は景品表示法の規定に基づくもので、事業者の公正な競争を確保し、また消費者利益を保護するために、消費者庁や公取委が認定する業界自主ルール。規約には景品と表示の2種があり、今回のトクホ公正競争規約は表示に関するもので、運用主体は日健栄協内に設置される見通しの公正取引協議会となる。

 公正競争規約に期待されているのは、消費者が商品・サービスを適正に選択できる環境を守ることだ。それによって業界全体の信頼性向上も期待できる。

 一方、個々の事業者にとってもメリットがある。「景品表示法や関係法令上問題とされることがない」(消費者庁)ことだ。これは、規約に賛同して公正取引協議会に参加する会員が、規約を遵守している限りにおいて適用される考え方とされている。

 健康食品業界では現在、機能性表示食品の公正競争規約の検討作業も進んでいる。日本通信販売協会、健康食品産業協議会はじめ日本抗加齢協会、日本チェーンドラッグストア協会の4団体が連携し、業界横断的に進めているもの。トクホでは前例のない、景表法に基づく措置命令及び課徴金納付命令が既に発生していることを考えれば、トクホの公正競争規約よりも必要性は高い。4団体は、景表法を巡るトラブルの絶えない一般健康食品(サプリメント)に関する規約の策定も視野に入れている。

ジャンル横断稀有な規約に
 機能性表示食品も同様だが、トクホのように多様なジャンルの食品(商品)を束ねる公正競争規約は珍しい。表示に関しては現在64規約が設定されており、食品について見ると、コーヒー飲料▽もろみ酢▽ローヤルゼリー▽はちみつ類▽即席めん▽チューインガム▽鶏卵──、酒類についてはビール▽輸入ビール▽泡盛▽単式蒸留焼酎──などと規約の対象は特定の商品に絞られている。

 各公正取引協議会を会員に迎えて全国公正取引協議会連合会によると、今回のトクホのように商品ジャンル横断的な公正競争規約は「おそらく初のケース」になるという。

 トクホ公正競争規約案及び同施行規則案の全文はウェブサイト「e‐Gov(イーガブ)」(電子政府総合窓口)で閲覧できる。意見募集期間は来月13日まで。このため規約の運用スタートは、同日から少なくとも1~2カ月ほど先になりそうだ。規約の内容に反対したり、疑問を呈したりする意見が多く寄せられれば、更に時間の掛かる場合も想定される。

×「臨床試験」 ○「ヒト試験」
 トクホ公正競争規約案は目的から雑則まで全20条で構成されている。各条の具体的なルールなどを示した施行規則案を見ると、細かな規定も目に付く。

 例えば、必要表示事項(第9条)について、いわゆる「バランス文言」(食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを)は容器包装の全面に表示することとされている。

 また、任意表示事項(25条)では、臨床試験に関する表示規定も示し、「『臨床試験』ではなく『ヒト試験』という用語を用いること」などとされている。規約を遵守する限り、トクホでは「臨床試験済み」などといった表示ができないことになる。

マークも用意 空白には何が 特保マーク? カテゴリー名?
 トクホ公正競争規約では「公正マーク」が設定される予定だ。公正マークはローヤルゼリーやもろみ酢などの公正競争規約にも用意されている。今回公表された施行規則案によれば、規約に従った適正な表示を認められた事業者に対し、容器包装をはじめ広告物やテレビCM、チラシなど容器包装以外にも公正マークを表示できる仕組みを設ける。

 施行規則案では公正マークの図柄も示した(=図)。
 ただ、マークとしては非常に違和感のあるデザインとなっている。マークの中央部に残された大きな空白はいったい何だろう。あえてそのようにデザインにしたのか、あるいは、空白部に何らかの要素を配置する予定があるのか──。

 考えるまでもなく後者が正解と捉えるのが自然だ。とすれば、この空白には何が盛り込まれるのか。
 可能性が高いのは「トクホマーク」だ。円形の空白部にぴったりと収まる。

 一方、カテゴリー名を盛り込むことが検討されているとの話もある。カテゴリー名とは、例えば「血糖」「血圧」「コレステロール」「体脂肪」「おなかの調子」「内臓脂肪」──などといったトクホとして許可されたヘルスクレームのカテゴリーのこと。

 また、空白部にはトクホマークを盛り込みつつ、「トクホ公正取引協議会」の文言の代わりにカテゴリー名を挿入するようなイメージが検討されているとの話もある。

 実際にそうなれば、消費者が商品選択する際に分かりやすく、かつ、消費者に強い印象を残す「公正マーク」となりそうだ。

【イラスト=トクホ公正取引協議会 公正マーク】

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