指定成分含有食品制度 関係法令揃う 6月施行へ (2020.4.9)


 改正食品衛生法第8条に基づく健康食品など食品に関する新たな安全性確保規制「指定成分等含有食品制度」の関連法令が3月27日までにおおよそ出揃った。厚生労働大臣が指定する指定成分等を含む食品を対象に、健康被害情報の都道府県知事への届出や、適性製造基準(GMP)に基づく製造・品質管理を義務付けるなどする同制度は、6月1日に施行される。これを受けて同制度を所管する厚生労働省は、指定成分等を取り扱う事業者に対し、指定成分等取扱事業者である旨を所轄の保健所に申し出るよう求めている。

 厚労省は先月27日、厚労大臣が指定する指定成分等の第1弾としてプエラリア・ミリフィカ、ブラックコホシュ、ドオウレン、そしてコレウス・フォルスコリの4植物を指定することを告示した。指定成分等とは、「食品衛生上の危害の発生を防止する見地から特別の注意を必要とする成分または物」であって「厚労大臣が薬事食品衛生審議会の意見を聴いて指定したもの」と定義される。 指定されることで、あたかも食品として危険なものであると受け止める誤認や風評が懸念される。この点について厚労省は、指定成分等含有食品について、「ただちに健康被害が生じるようなものではないが、その使用・摂取方法等によっては健康影響を生じさせる可能性が否定できないもの」と公開資料に記述するなどして正確な理解が得られるよう配慮。今後、必要に応じて制度理解促進のための説明会などを開催する考えを示している。

 ただ、厚労省は今後も必要に応じて指定成分等の追加検討を行っていく考えだ。そのため、事業者は今後、将来的に指定される可能性も考慮に入れつつ最終製品に配合する原材料の選定を行う必要が生じることになる。

 一方で、今回指定された4植物は、指定の根拠や理由が必ずしも明確にされたとは言えず、今後の参考にしづらい面もある。厚労省には選定理由・基準をより具体的に周知することが求められる。逆に、指定した一方で健康被害報告がほとんど無かったりするような場合について、指定から外す規定を新たに設けることも必要になる。

 厚労省はこのほか3月27日に、厚労大臣が定める指定成分等含有食品の製造・加工基準を告示した。また、指定成分等含有食品を製造・加工する場合は同基準への適合を義務付けることの規定を盛り込んだ、食品、添加物等の規格基準の一部改正も告示。この他、指定成分等含有食品の健康被害を報告する際に届出書に記載する事項などを定めた食品衛生法施行規則の一部改正省令も公布した。

 厚労省は制度を6月1日に施行する。ただ、5月31日までに製造・加工された食品は「なお従前の例によることができる」としている。ここで言う製造・加工には、容器への充填やパッケージングも含むという。

 また、指定成分等含有食品について届出を義務付ける健康被害の範囲に関し、「因果関係が必ずしも明確でなくても、幅広く情報を報告していただく」の方針を示しており、広範に情報収集していく考えだ。有識者が届出内容を精査し、別途対策の必要性を検討していく考えで、届出のためフォーマットも作成して因果関係の同定に務めるとしている。届出フォーマットについては今後、施行通知を発出するという。

義務表示、経過措置期間なく 「14P以上」「近接」必要に
 指定成分等含有食品の義務表示事項を定めた食品表示基準の一部改正も3月27日に公布された。所管する消費者庁は、経過措置期間を設けず、指定成分等含有食品制度の施行と同時に新基準を適用する。旧基準の包装資材が大量発生する懸念もあり、業界からは経過措置期間を設けるよう要請する声が上がっていたが、表示を通じた制度の補完や消費者への情報伝達が必要であることを理由に応じなかった。同庁が義務表示事項案を初めて公にしたのは今年1月下旬だった。

 指定成分等含有食品に課されることになる義務表示事項は、①指定成分含有食品である旨②食品関連事業者の連絡先③食品衛生上の危害の発生を防止する見地から特別の注意を必要とする成分または物である旨④体調に異変を生じた際は速やかに摂取を中止し医師に相談すべき旨および食品関連事業者に連絡すべき旨──の4つ。

 このうち①と③については14ポイント以上という大きな文字での表示、かつ、「消費者の誤認を防ぐ」ことを理由に双方近接しての表示を義務付けた。指定成分等含有食品を販売する事業者は、新基準に対応するための時間的制約とともに、容器包装表示のデザインに関わる大きな制約も課されることになる。

 また、議論の段階で、「指定成分」という名称をポジティブに受け取る消費者が存在する可能性を識者に指摘されたこともあり、「厚生労働大臣認定」「消費者庁承認」といった国などの承認を受けたと誤認させる表示を禁じた。
さらに、制度施行までの間について、ウェブサイトやカタログあるいは陳列棚の表示を通じて消費者に情報提供することも求めている。

 一方、指定成分等含有食品の法的効力は、指定成分等が含まれていれば機能性表示食品にも及ぶことになる。このため同庁食品表示企画課保健表示室は3月27日、指定成分等含有食品に該当する食品を届け出る場合について、新たな食品表示基準の規定に沿った表示見本を添付することや、既に届け出ている場合は表示事項の変更を行うことの周知を求める事務連絡を業界団体に発出した。

 指定成分等含有食品に該当すると考えられる機能性表示食品は、コレウス・フォルスコリに含まれるフォルスコリンを機能性関与成分にしたサプリメントの届出が1件ある。現在のところ販売は始まっていないとみられる。


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