処分、処分、処分の春 消費者庁に加え自治体も(2020.4.9)

埼玉県 ニコリオ①

 昨年度末までに景品表示法に基づく措置命令が相次いで行われた。最終日の3月31日には健康機器の痩身効果表示を巡り大手通販など4社が一斉処分を受けた。また、自治体も法執行を強化している模様で、健康食品通販事業者に景表法及び特定商取引法違反を同時に認定する「ダブル処分」の事例も出ている。

EMS機器痩身表示4社に一斉措置命令
 筋肉に電気刺激を与えることで痩身効果が得られるといわれるEMS(エレクトリカル・マッスル・スティミュレーション)機器の広告表示を巡り、通販など4社が3月31日、消費者庁から景品表示法違反(優良誤認)で措置命令を一斉に受け、社名などを公表された。4社は不実証広告規制に基づき表示の合理的根拠資料を提出したが、同庁は認めなかった。根拠資料で示された効果と広告表示の整合性が問われた。

 同庁の発表によると、措置命令を受けたのは通信販売のオークローンマーケティング、ディノス・セシール、プライムダイレクトの他、EMS機器を製造販売するヤーマンの4社。各社は、通販番組や自社ウェブサイトに上げた動画などを通じ、EMS機器を一定期間試したモニターが腹部の痩身効果を得られたことを訴求。「マイナス19・6センチのお腹引き締めに成功」などと腹部サイズの減少幅も具体的に示していた。

 こうした表示を同庁は「あたかも」EMS機器を腹部に使用することで、その電気刺激によって腹部の筋肉が刺激されることにより、数週間で腹部の痩身効果が得られるかのように表示していたと判断。各社は表示の裏付け資料を提出したが、同庁は優良誤認を認定した。

 同庁表示対策課によると、各社が提出した根拠資料は、①広告に登場するモニターの記録②複数名を被験者にした臨床試験結果──の2つに大別された。臨床試験結果があったにもかかわらず表示の合理的根拠と認めなかった理由は、試験結果に広告表示が対応していなかったためだとする。具体的には、臨床試験は8週間実施している一方で、広告は4週間で効果が得られることを訴求していた。また、腹部の痩身効果について、臨床試験結果は広告で訴求されているよりも効果が小さかったという。

 一方、①を認めなかった理由については、サンプル数が少ないため「一般的な効果が実証されているとは言えない」(表示対策課)。また、体重が大幅に減少したモニターも見られたが、「過度な食事制限などが行われた可能性が十分に排除されていない」(同)。さらに、腹部サイズが大幅に減少している一方で、体重はほとんど減っていないという矛盾が一部モニターに見られ、「この事象について合理的な説明を(処分会社から)得られなかった」(同)などと説明している。
 措置命令を受けた4社は、ホームページに「お詫び」を即日掲載している。

老舗通販にW処分埼玉県、業務停止も
 東京都の健康食品通販事業者が埼玉県から行政処分を受けた。同社が販売していたダイエットサプリメントの広告表示を巡る景品表示法違反(優良誤認、有利誤認)で3月31日に措置命令を受けるとともに、同品に関する誇大広告や、消費者の意に反した定期購入契約をさせようとする行為を行っていた特定商取引法違反で3カ月の一部業務停止命令及び指示処分を受けた。健康食品販売事業者としては異例のダブル処分となった。

 自治体が景表法と特商法を同時に執行する動きは他でも見られている。大阪府が先月18日、高齢者に対し「がんや認知症が治る」などと不実を告げながら過去3年間に総額3億円に上る高額な健康機器を販売していたなどとして、大阪市北区の事業者に措置命令を行うとともに、3カ月間の一部業務停止命令を行った。いわゆる「SF商法」を巡る行政処分。

 埼玉県の発表によると、景表法及び特商法違反で処分したのは健康食品通販のニコリオ(東京都世田谷区、旧ビアンネ)。違反対象商品は『Lakubi(ラクビ)』というダイエットサプリで、自社ウェブサイトやアフィリエイトサイトの表示が両法から違反に問われた。特商法違反で同社代表者に対する3カ月の業務停止命令も行われた。

 県は措置命令を3月31日に発表し、業務停止命令などは翌4月1日に発表。それぞれ発表日は異なるが、県は「実質的には同時処分だ」(消費生活課)とする。

 県によると、調査の端緒となったのは、消費者教育の一環として県内学校と連携して取り組むインターネット広告の不当表示の啓発・監視。約1500名の学生らが授業の一環としてネット広告表示をチェックしており、その中で「引っかかってきた」(消費生活課)。そのため、県として調査に乗り出したという。

 優良誤認や有利誤認の景表法違反で措置命令を受けると、それと一体的に課徴金納付命令を受けることになるが、自治体は課徴金の執行権限までは有さない。ただ、県はこの事件について消費者庁に情報提供を行っており、今後、同庁で調査の上で課徴金納付命令を行う可能性がある。
 同社は4月1日、「命令を真摯に受け止め、十分な再発防止策を講じる」とするコメントをホームページに出した。

642万円の課徴金〝酵素〟巡り3社目
 「酵素ドリンク」について合理的根拠なく痩身効果を得られるかのように表示していたなどとして、昨年3月に消費者庁から景品表示法違反(優良誤認)で措置命令を受けていた健康食品のネット通販などを手掛けるビーボ(東京都港区北青山)が3月31日、同法違反に絡み、642万円の課徴金納付を同庁から命じられた。表示違反期間の18年7月から同年12月までの約5カ月間に、約2億1400万円の売上があったと算定された。

 同庁は昨年3月、酵素など含有成分の作用による痩身効果を根拠なく表示する健康食品の優良誤認で、ビーボを含む5社に対する一斉措置命令を行っていた。そのうち課徴金納付も命じたのは今回のビーボを含めて3社(4月3日時点)となり、3社の課徴金総額は約2億6000万円にも上っている。1社当たりの最高金額は2億4988万円。

 ビーボは、『ベルタ酵素ドリンク』という健康飲料のほか同品を含む「ダイエットパック」というセット商品の自社ウェブサイトでの広告表示が優良誤認に認定された。「食べたい!でも太りたくない!そんなあなたにオススメ!」などと表示し、同品に含有する酵素などの作用によって容易に痩身効果が得られるかのように訴求していたが、同庁は表示の裏付けとなる合理的根拠はなかったと判断した。

【写真=景表法、特商法の両方で違反に問われたアフィリエイトでの表示】

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