コロナ禍で需要に変化関心高まる「免疫」「栄養素」(2020.5.14)


 新型コロナウイルスの感染拡大は、サプリメント・健康食品に対する消費者ニーズにも変化を及ぼしているようだ。ビタミンDやプロポリス、乳酸菌の需要が伸びており、消費者は免疫機能の維持に関心を高めている様子。また、ビタミン・ミネラルといった栄養素に関連するサプリも売上が伸長しているようで、それを受けてか青汁の需要があらためて高まっているとの話も聞こえる。アフターコロナのサプリメント・健康食品市場は、以前と大きく様変わりする部分も出てくるかもしれない。

アイケア等も売上げ増加
 ビタミンDは218.3%増▽プロポリスは78.5%増▽ビタミンCは71.7%増▽マルチビタミン・ミネラルは52.6%増──。

 ファンケルが4月1日から同月23日までの通信販売におけるサプリメントの売上動向を前年同時期と比較したところ、このような結果になった。伸び率トップは3倍超にも達したビタミンDで、プロポリスは第3位。「免疫への働きが注目されたことが影響している」と同社は分析する。

 免疫との関連で言えば、乳酸菌の需要も高まっている。キリングループによると、「プラズマ乳酸菌」を配合した飲料等の1~3月の販売数量が前年同期比3倍以上に達した。3月単体で比較すると同4倍以上と「過去最高の販売推移」。この背景について同社は〝体調管理〟を巡る消費者ニーズが高まっていると見る。「昨今、体調管理に対する意識が高まるにつれ、乳酸菌の摂取を積極的に心掛けるお客様が増えている」。

 一方、ファンケルではビタミンCやマルチビタミン・ミネラルといった栄養素関連サプリメントの売上も伸びた。『ビタミンC』が7割超伸びたほか、ビタミン類を複合させた『ハイグレードビタミン』が44.2%増、26種の栄養成分をワンパックにまとめた『基本栄養パック』は43.9%増と、4月1日から同23日の期間における通販での伸び率トップ10にそれぞれ入った。

 「不足しがちな必須栄養素をサプリメントでうまく補う方が増えている」ためではないかと同社。外出自粛や在宅勤務に伴う食事の偏りや、運動不足が気になり始めたことを背景に、手軽に栄養素を摂取できるサプリメント・健康食品に対するニーズが高まっていると考えることもできる。
 実際、食物繊維をはじめとする各種栄養素を手軽に摂取できる青汁の需要がここにきてふたたび高まっている様子。ある受託製造企業では「背景ははっきり分からないのだけれど、(ビタミンDなどと同様に)青汁もプラスの影響を受けているような気がする。ここ1カ月で工場が忙しい」と話す。

 総務省統計局の家計調査によると、新型コロナは食品に対する消費行動にも大きな影響を及ぼしたとみられる。3月は「パスタ」の支出額が前年同月比実質44.4%増と大幅に伸びたのを筆頭に、「カップ麺」は15.7%増、「冷凍調理品」は22.2%増などと保存がきく食品への支出が軒並み大きく高まった。前述の受託製造企業では、青汁も、保存できる上に、食物繊維やビタミンなど栄養素をバランスよく手軽に補給できる食品として、ここにきて需要が高まっているのではないかと推測する。

 一方、新型コロナを背景に高まったサプリメント・健康食品に対する需要は、免疫関連や栄養素にとどまらないとみられる。ファンケルの通販では4月、アルコール対応のサプリメント『牡蠣&ウコン たのもし』も、前年同時期比約9割増と大きく伸びた。「自宅でお酒を飲む機会が増えた」ことが要因だと同社では分析する。
 また、一時的な精神ストレス緩和機能を訴求する『ストレスケア』(機能性表示食品)、睡眠の質をケアする『快眠サポート』(同)もそれぞれ同11.9%増と2ケタ伸長したほか、アイケアの機能性表示食品『ブルーベリー ミエルネ』は同20.3%も増加。『えんきん』も堅調だという。外出できないストレスや、テレワークによってパソコン等を使う機会がいつもより増えたことなどが背景にあると考えられそうだ。

 他方で、サプリメント・健康食品の買われ方にも変化が見られている。ファンケルの3月の通販定期お届けコースの新規登録件数は昨年11月と比べて50%以上も伸びた。「日常的かつ継続的なサプリメントの摂取で健康維持を目指す方が増えていることもうかがえる」という。

「注文が増えている」 プロポリス巡り関係事業者
 ファンケルの健康食品通販で4月の売上が8割近く急上昇したプロポリス。他の企業でも売上げを伸ばしている先が目立つ。原材料供給から最終製品販売まで展開するある事業者は、3~4月の売上は昨対比150%以上に達したとする。

 とりわけ3月以降に需要が大きく高まったようだ。「変わらない」と話す事業者も存在するが、前年同時期比で2~5割超の増加を見せているもよう。販売チャネルの影響も受けており、「3密」を回避する必要のある宣伝講習販売では売上が減少。しかし、その分を通販など別のチャネルでの伸びがカバーしている。

 「注文が増えている。しかし納品が追いつかない」。国内プロポリス市場の川上からはこんな声も聞こえる。注文増加の背景には、以前からプロポリス健康食品を販売していた先が、需要に応えようと流通量を増やそうとしている様子がうかがえる。その中で、新規の引き合いも見られている。ただ、「商品化するのに時間が掛かり、注文まで至らない」という声も。新型コロナはプロポリス市場の足元を大きく変化させたようだ。

 原材料販売を手掛ける事業者は、「通常は100キロ売れるのに1年弱ほど掛かるが、例年の2割増しのスピードで在庫が無くなっている状況」と現状を説明する。在庫が枯渇する心配はないとしているが、発注量及び発注回数が例年になく高まっていると話すプロプリス事業者は多い。

 「似たような状況は以前にもあった」と指摘する声もある。ある販社は、今は2003年に流行したSARSの際と似たような状況で、ウイルスが猛威を振るう局面ではプロポリスの需要が高まることがあるとする。
 一方で、関係事業者からは、今後に対する懸念の声も聞かれる。「(プロポリスの産地)ブラジルの養蜂家から値上げの声があがっている」(最終製品販売会社)ためだ。別の原材料販売なども行う事業者は「(ブラジル)現地での価格は3割ほど上がっていると聞いている」と話す。

 「とくに影響はなく、仕入れ値は昨年と変わっていない」と指摘する声もあり、影響が市場全体に広がっているわけではないとみられるが、「ブラジルの天候があまりよくなく、コロナ禍以前から値上がり傾向だった」と話すのは前述の最終製品販売会社。複数の事業者の話を総合すると、天候不順の上で、もともとさほど大きくなかった欧州や中国からの需要がコロナ禍を背景に増加。勢い、取引価格も上昇しているようだ。

 「ブラジル国内でも需要が高まっている。国外にプロポリス源塊を出すことを敬遠しているようだ」。取材ではこう指摘する声も聞かれた。

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