食薬区分、また一部改正へ 専ら非医に7成分追加の案(2020.5.14)


 食薬区分の専ら非医(医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質)リストに複数の成分が新たに追加されそうだ。食薬区分の運用を担当する厚生労働省医薬・生活衛生局の監視指導・麻薬対策課は、先月27日に食薬区分の一部改正案を示し、意見募集(パブコメ)を始めた。専ら非医としてアポエクオリンやヒトミルクオリゴ糖の一種など7成分を追加する考えを示している。

アポエクオリンやHMO関連成分等
 意見募集の期間は今月26日まで。パブコメ終了後、意見を取りまとめた上で、食薬区分の一部改正を通知することになる。今回、監麻課が専ら非医に追加する考えを示した成分は次の通り。

 タマラニッケイの葉▽ゼラニウム・ディエルシアナムの全草▽タデアイの葉、茎▽カツオの肝臓▽アポエクオリン▽N‐アセチル‐α‐Dノイラミニル‐(2→3)‐β‐D‐ガラクトピラノシル‐(1→4)‐D‐グルコースナトリウム塩▽N‐アセチル‐α‐Dノイラミニル‐(2→6)‐β‐D‐ガラクトピラノシル‐(1→4)‐D‐グルコースナトリウム塩──。

 このうち、ゼラニウム・ディエルシアナムは、いわゆる「南米ハーブ」の一種で、数年前から抽出物が日本国内で流通。最終製品も販売されている。

 また、専ら非医リストの化学物質等の項目に追加される見通しのアポエクオリンは、米国でダイエタリーサプリメントとして販売実績があるタンパク質の一種。オワンクラゲから単離された「発光タンパク質」といわれる。

 アポエクオリンを配合した最終製品を販売する米国企業のウェブサイトによると、同成分は認知機能に及ぼす働きが期待できるようだ。臨床試験が実施されていて論文も存在する。ただ、米国では、その科学的根拠の中身について疑問視する見方も上がっているようだ。アポエクオリンを日本市場でどう展開していく計画なのか。厚労省に食薬区分を照会した先の今後の動きが注目だ。

 また、同じく専ら非医リストの化学物質等に追加される見通しの「N‐アセチル」で始まる長い名称を持つ2つの成分は、いずれも「シアリルラクトース」とも呼ばれるヒトミルクオリゴ糖(HMO)の一種。HMOは母乳にも含まれる成分で、近年、サプリメントや乳児栄養の分野で注目が集まっている。同じくHMOの一種であるフコシルラクトースは、昨年の食薬区分一部改正で専ら非医に追加されていた経緯がある。シアリルラクトースも専ら非医に収載されることで、HMOの配合提案は大きく活発化していきそうだ。

 その他、タデアイについては、もともと「根」が専ら非医とされていた中で、葉と茎を追加する考えが新たに示された。また、カツオの肝臓に関しては、現行の専ら非医リストに収載されている「カツオ」(他名等=かつお節/かつお節オリゴペプチド)の部位に肝臓を追加するとともに、「肝臓」(同=ウシ/トリ/ブタ)にカツオを加える方向だ。

 一方で、専ら医薬リストには4成分が追加される見通し。ノルカルボデナフィル▽ノルタダラフィル▽プロポキシフェニルノルアセチルデナフィル▽ジメチルジチオノルカルボデナフィル──といったシルデナフィルやタダラフィルの類似化合物が専ら医薬に追加されることになる。

どうなる区分変更 非医→医薬 新型コロナの影響で宙ぶらりん
 厚労省監麻課が今回示した食薬区分の一部改正案は、同課が昨年12月と今年2月に開催したワーキンググループ(医薬品の成分本質に関するWG)での検討結果を反映したものだ。

 同WGは従来、年に1回程度の開催を常としていたが、ここにきて同課は開催頻度を高めており、令和元年度は都合4回も開催された。これを受けて食薬区分が改正される機会も増加している。3月末に一部改正が通知されたばかりである。

 一方、同課は、専ら非医を専ら医薬に区分変更する動きを活発化させてもいる。6月1日に施行される指定成分等含有食品制度(改正食品衛生法)を背景にしたもので、3月末に通知された直近の食薬区分一部改正では、実に11に上る植物由来物が専ら非医から専ら医薬に区分変更された。流通実態が確認されなかったためとみられるが、経過措置期間も設けられなかった。ただ、中には一部で限定的に流通されている素材が含まれている。

 こうした専ら非医から専ら医薬への区分変更は現在も検討が続いている。区分変更候補の植物由来物には現在流通しているものも含まれており、関係する事業者は今後の行方を注視している。

 昨年12月と今年2月のWGでは、同課が公開した議事概要によると、区分変更案件は議題に上がっていない。監麻課は当初、2月下旬か3月以降に改めてWGを開き、区分変更を議論する算段だったとみられるが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急事態宣言の影響で開催できていない。4月末時点での関係者の話として、今後の開催見通しも立てられていないという。

 専ら非医から専ら医薬への区分変更候補とされている素材を取り扱う事業者は、行方を静観するしかできない状況に置かれることになった。



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