アピ 処方設計で新提案 体系化と見える化 (2020.6.25)

アピ合体④

 国内健康食品受託製造最大手のアピ(岐阜県岐阜市)がサプリメント・健康食品のODMに関わる新たな取り組みを始める。顧客が想定する商品コンセプトを、エビデンスに基づき論理的に素早くかたちにする仕組みを構築。市場データも加味しながら最適な素材や成分の組み合わせ(処方)を提案できるようにした。新サービスとして顧客に提供していく。

 アピが新たに始めるサービスの名称は『API's CF』で、CFはコンセプトフォーミュレーションの略。サービスの内容は、顧客が想定する商品コンセプトに最適化したエビデンスベースの処方提案を行うというもの。第一弾として、免疫システムの維持・増進に絡むサプリメント・健康食品に関するコンセプトフォーミュレーションを提供する。

 免疫の他にも今後、美白▽骨(カルシウム吸収)▽血管(血圧)▽抗糖化──について順次提供していく。いずれも各領域を専門的に担当する同社の研究員が顧客とマンツーマンで打ち合わせながら、顧客が想定したり、望んだりしている製品コンセプトに最適な処方を体系的、かつ、素早く決定できる提案システムを構築した。

 処方決定までの過程で最大の拠り所とするのは、学術論文などに基づく科学的根拠(エビデンス)だ。各領域を担当する研究員が関連文献などを大量に読み込み、各領域に関わる複数の作用メカニズム(例えば免疫の場合は粘膜バリア機能、NK細胞活性など)と、それに対応する一定の科学的根拠が得られている素材・成分を体系化。それに基づき顧客とともに処方など商品設計をシステマティックに検討する。

 加えて、同社で構築した各領域に関する市場調査データも踏まえ、実際に市場に流通している商品の配合素材・成分と比較。また、必要に応じて追加の文献調査や生理活性の強さなどを検証する社内研究を行いながら、顧客の商品コンセプトに応じた配合素材・成分のベストミックスを探る。これにより、機能性や作用メカニズムに関するエビデンスが背景にありながら市場に存在しない新しい設計の商品も提案できるようにした。

 顧客が生化学や食品機能性などに精通していない場合でも、各領域に関わる健康維持・増進を損なう機構や、それに対応する素材・成分の機能性、作用メカニズムなどを分かりやすく解説できるように、親しみやすい図解を独自に用意した。また、各領域に対応する素材・成分のエビデンスの強度や1日あたり摂取目安量、原材料コストなどの体系も一覧化するなど、口頭や学術資料などだけでは伝わりにくい部分の〝見える化〟にこだわった。

研究員が活躍
 『API's CF』は、同社が健康食品受託製造事業の旗印として2017年夏から掲げている「API's ODM」を背景にした新プロジェクト。昨夏スタートさせた『API'sSR』に続く第2弾プロジェクトとして手掛ける。

 同社の研究員がシステマティックレビューを行う『~SR』は、機能性表示食品の開発、届出サポートに特化したサービスだが、『~CF』は主に一般健康食品・サプリメントを対象にしたもの。個別の機能性領域に特化した素材・成分の組み合わせを科学的根拠に基づき選定することで、機能性や体感性などがより得やすい商品を顧客に提供していく狙いもある。

 2つのプロジェクトの背景にあるのは、同社が今期(20年9月期)スタートと同時に実施した大型な組織機構改革だ。その一環として戦略開発本部が新設され、同本部には、新規事業開発部と、それまで独立していた研究開発部門「長良川リサーチセンター」を配置。これにより、事業戦略部門と研究開発部門を有機的に一体化させ、事業戦略に直結した研究開発を進められるにようにした。

 特に『~CF』は、研究開発部門のマンパワーが十分なければ不可能な取り組み。研究員を多く抱える同社の強みを生かしたプロジェクトといえる。同社戦略開発本部の関係者によると、『~CF』に関わる研究員は各領域ごとに1~2名を配置。各研究員は、担当する領域に関連する文献などを100本以上読み込んだ上で資料作成などに当たっているという。今後も対応領域を段階的に拡充していく計画だ。

【図表=第一弾となる免疫に関する「API’s CF」の資料の一部。実際の資料枚数は数10ページに及ぶという。画像上は、免疫機構と作用機序を〝見える化〟した図解。同下は、市販品に含まれる成分の作用機序を文献リサーチした結果】



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