業界の今 川上の視点 (2020.9.24)

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 健康産業流通新聞はサプリメント・健康食品受託製造(OEM)企業を対象にしたアンケートを2020年8月末から9月中旬まで実施し、48社から有効回答を得た。同アンケは毎年夏冬に実施し定点観測しているもの。今回は、新型コロナウイルス感染拡大下で初の実施となった。規模の大小を問わず協力をいただいた受託製造企業へのアンケ結果を通し、サプリメント・健康食品業界および市場の今を探る。

19年冬調査から倍増
 今回のアンケ結果でとくに目を見張るのは、機能性表示食品制度施行3年目(17年)から質問項目に毎回盛り込んできた同制度に対する評価を尋ねる設問で、「評価する」の回答が大幅に増加したことだ。

 「評価する」の回答は53%(23社)と過半数に達し、2019年12月の前回調査からほぼ倍増。前回調査で25%を占めていた「評価していない」は1%(3社)にとどまった。
 「どちらともいえない」は46%(20社)で前回とほぼ同じ。このため、これまで機能性表示食品制度を疑問視していた先が一転、制度を高く評価する考えにシフトしたと推測される。

 何があったのか。可能性として考えられるのは、後述する「免疫機能」表示の届出が公開されたことだ。不可能と考えられてきたヘルスクレームが不可能ではなくなったことで、制度に対する期待感が一気に高まったのかもしれない。

 また、機能性表示食品の受託開発・製造が収益に貢献しはじめた可能性も考えられる。
 制度を評価すると回答した企業からは、「制度スタート1~2年目と比較し、現在では売上に占める機能性表示食品の割合が2倍以上になっている」との声が上がった。アンケートとは別に行った取材では、これまでに制度対応を念頭に置いた取り組みを進めてきたおかげで業績が拡大していると、と話す受託企業もあった。

 さらに、以前に比べれば順調に届出が公開されるようになった現状も、評価に拍車をかけていそうだ。今回のアンケでは、「事後チェックで厳しく取り締まるのだとしても、(届出が公開されやすくなったことは)ビジネスの拡大可能性という意味で評価できる」と最近の消費者庁食品表示企画課の動きを歓迎する声も寄せられた。

 とはいえ、「どちらともいえない」と回答した企業の声を聞くと、「中小にはハードルが高い割に効果は限定的」と費用対効果を疑問視する意見がまだまだ根強いこともうかがわれる。
 また、「(機能性表示食品を)消費者はどう思っているのか」「一般消費者の認知が低い」など、機能性表示食品に対する消費者の認知度、理解度の不足を指摘する声も依然なくなっていない。

免疫機能表示を歓迎
 今回のアンケでは、機能性表示食品制度に関する設問をほかにも設けた。事実上解禁された「免疫機能」表示を、受託製造企業はどう受け止めたのか──。

 免疫機能表示を行う届出は20年8月7日に初めて公開され、業界を驚かせた。ヘルスクレームの内容は「プラズマ乳酸菌はpDC(プラズマサイトイド樹状細胞)に働きかけ、健康な人の免疫機能の維持に役立つことが報告されています」だった。

 アンケの結果は「評価する」が27社で最多。「どちらともいえない」は13社。「評価していない」の回答も1社だが寄せられた。

 評価すると回答した企業の声(理由)を見ると、
 「(表示可能な)領域が増えることは市場活性につながる」
 「(免疫機能は)サプリメントの新たな分野として成長が今まで以上に期待できるため」
 「予防や未病は健康食品の範囲のはず。その意味で表示できたほうがいい」
 「なぜ今まで届け出されなかったのか」
 「免疫以外にも機能性表示の範囲がさらに広がることが期待できる」
 「ヘルスクレームの範囲が広がったことを評価。今後の訴求範囲の拡大を注視している」
 と、機能性表示食品で可能なヘルスクレームの広がりを大きく歓迎し、さらなる拡大に期待を寄せる声が目立った。

 一方、「どちらともいえない」に回答した企業では、「業界としては大きな出来事」と評価するも、特に乳酸菌株を独自に保有する大手食品・飲料メーカーが届出を独占していく可能性を指摘。「SR(システマティックレビュー)付の原材料が供給されるかどうか。受託製造企業も恩恵を受けられるのはまだ先になりそう」とする。

 「評価する」と回答した企業からも疑問の声は上がっている。届出が「受理」されたタイミングがコロナ禍であることに対する疑問だ。「このタイミングが適切なのか疑問を感じる」という。

 ただ、今回のアンケでは、むしろ、コロナ禍において免疫機能の維持をサポートする機能性表示食品が登場する意義を指摘する声が多く、「消費者ニーズに応えられる」とする意見も目立った。

コロナ禍製造動向 業績への影響軽微
 新型コロナウイルス感染拡大はサプリメント・健康食品の受託製造動向にどのような影響を与えたのか。今回のアンケートでは、20年4~8月期の受注件数および数量の前年同期比を、大きく増えた▽やや増えた▽変わらない▽やや減った▽減った──の5択で尋ねた。

 その結果、最多は「変わらない」の22社。「大きく増えた」と「やや増えた」は合わせて6社。「やや減った」と「減った」は合わせて12社となった。無回答は8社。

 「変わらない」が過半数を占める結果となったが、アンケートに寄せられた各企業の声からは、変わらないといっても凪模様では決してなかった様子がうかがわれる。

 「販売好調のところもあれば、コロナにより著しく低迷したところもある」──目立ったのはこうした声で、顧客企業(最終製品販売会社)のまだら模様の販売動向が、受託製造企業にも影響を与えた。ただ、まだら模様も均してみれば「ほぼ横ばい」。そのため「変わらない」が多かったのが実態とみられる。

 実際、アンケートとは別に行った取材では、「変わらない」と回答した企業のなかにも、強い緊張感を一時強いられた先もある。「予定されていた新商品の発売が延期されたり、開発案件が途中で止まったりと、一時は強い危機感を抱いた」と話す。

 一方、「やや減った」「減った」と回答した企業から寄せられた声を見ると、そうなった主な要因は、ドラッグストアなど店舗チャネルの不振だ。特に、インバウンド消費で売上を伸ばしていた顧客を持つ受託製造企業は影響が大きかったようで、「(インバウンド以外で)売上を伸ばした顧客もあったが、落ち込みをカバーできなかった」とする。

 店舗チャネルは外出自粛の影響も大きく受けた。その影響を受けたのは、国内外のドラッグストアや調剤薬局、百貨店など店頭ばかりではない。アンケートでは、運動やスポーツの機会が失われたことで関連製品の受注が減ったとする声も寄せられた。

 ただ、通販チャネルは伸びた。「増えた」と回答した企業の大半がその理由として通販で販売される製品の受注増を挙げる。「変わらない」と回答した企業でも、「通販ルートが急激に増え、店舗ルートが激減」など、通販チャネルで販売されるサプリメント・健康食品の伸びを指摘する声が目立った。

 コロナの影響で、消費の比重が全体的にリアルからオンラインに傾いた。そして、「ウィズ・コロナ」の生活がもうしばらく続きそうな中、リアル販売チャネルは戦略の見直しが求められている。と同時に、オンライン販売チャネルは更なる競争の激化に見舞われることになる。

 サプリメント・健康食品も対応が避けられない。販売会社にどのような付加価値を提供できるのか──各受託製造企業が市場で勝ち残っていくための鍵もそこにありそうだ。

【写真=イメージ】



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