免疫機能 キリン、ファンケルで攻勢へ (2020.10.8)

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【写真=左上から時計回りに:キリンホールディングス「iMUSE professionalプラズマ乳酸菌サプリメント」:同「iMUSEプラズマ乳酸菌サプリメント」:ファンケル「免疫サポート チュアブルタイプ」 キリンビバレッジ「iMUSEヨーグルトテイスト」:同「iMUSE 水」:同「iMUSEレモン」

 免疫機能を巡ってキリンとファンケルが市場攻勢を掛ける。「健康な人の免疫維持」を訴求する日本初の機能性表示食品をそれぞれ年内に市場投入。販売プロモーションも展開しながら、それぞれ拡販を図る構えだ。双方の商品が機能性関与成分とするのはキリンの独自素材「プラズマ乳酸菌」。従来なかった免疫機能対応食品市場を一気呵成に形成し、市場シェアを独占する可能性がある。

機能性関与成分 プラズマ乳酸菌
 10月5日に消費者庁が行った機能性表示食品の届出情報更新。ファンケルによるサプリメントの届出が新たに公開された。

 『免疫サポート』というサプリメント。機能性関与成分はプラズマ乳酸菌で、届出表示(ヘルスクレーム)はキリンが届け出ていたのと同じ「pDC(プラズマサイトイド樹状細胞)に働きかけ、健康な人の免疫機能の維持に役立つことが報告されています」だった。

 ファンケルからの新たな届出が公開される1週間前の9月28日午後。日本初となる免疫機能を訴求する機能性表示食品の発売計画を、キリンホールディングスなどキリングループが発表した。プラズマ乳酸菌を機能性関与成分にした『iMUSE』(イミューズ)ブランドの機能性表示食品6製品を20年11月上旬より順次新発売する。

 サプリメント3品を発売するのはキリンホールディングス。商品名に「プロフェッショナル」を掲げるサプリメントは、11月上旬から、調剤薬局や病院内売店など全国の医療機関で順次発売する。ほかの2品(60粒入=15日分、28粒入=7日分)の販売チャネルは、グループで通信販売を手掛ける協和発酵バイオの通販サイト。

 一方、飲料3品はキリンビバレッジが同24日から新発売する。販路は、コンビニエンスストアをはじめドラッグストア、スーパー、自動販売機、通販といった全ての販売チャネルとなる。

 サプリメントに比べて手軽に購入できる飲料を通じて、免疫機能表示食品と消費者の接点を大きく広げ、プラズマ乳酸菌の愛用者の取り込みを一気に図る狙い。発売と同時に来年2月末までプレゼントキャンペーンも展開するとした。

 機能性表示食品としてのiMUSEの届出資料は消費者庁が8月7日に一斉公開。それまで「不可能」と考えられていた免疫機能表示が突如実現したことに、業界からは驚きの声が上がっていた。そして、各製品の発売日や製品概要、販路に注目が集まっていた。

 一方のファンケル。届出が公開された約30分後にさっそくニュースリリースを発表。キリンの市場投入からおよそ1カ月後の「12月17日」から販売を開始することを明らかにした。

 販路は、通信販売、ファンケル直営店舗、全国のドラッグストア、コンビニエンスストア、量販店といった同社のサプリメントのフル販売チャネル。ニュースリリースでは、「テレビCMなども展開し拡販していきます」と宣言するとともに、取材に対しては、『えんきん』『カロリミット』などと並ぶ同社の〝スター製品〟に育てていく方針を示した。かなり大型な販売プロモーションを展開していくとみられる。

登場待たれる後を追う素材
 免疫機能表示が可能になったことで、キリンはプラズマ乳酸菌の事業を拡大させる構えを見せている。まず、グループ内での拡大展開を図る方針。また、外部企業に対する素材販売にも力を入れたい考えだ。「社会課題解決を志すパートナー企業に素材やブランドを導出し、商品の共同開発を行う」(キリンHD)としている。

 キリンHDは、プラズマ乳酸菌の素材販売(BtoB)事業を国内外で既に進めている。国内ではカンロのグミキャンディなど、海外では米国で複数のサプリメントメーカーへの販売実績がある。こうしたプラズマ乳酸菌のBtoB事業(原材料供給)を、届出を機に推進していく計画を掲げている。

 そのなかで注目されたのは、昨年、キリンホールディングスと資本業務提携を行ったファンケルの動向だった。同社は20年9月、プラズマ乳酸菌を配合した子ども向けケール飲料を通販と直営店舗で発売している。キリンのiMUSEの届出が公開された以降、ファンケルからも届出が行われることが予想されていた。

 実は、10月5日にあった機能性表示食品の届出情報更新では、ファンケル以外からもプラズマ乳酸菌を機能性関与成分にした「免疫機能」の届出が公開されている。

 キリンホールディングスの子会社、小岩井乳業からの届出だ。iMUSEブランドのヨーグルトとヨーグルト飲料の2品を届け出た。公開された届出資料によると、販売開始予定日は来年1月下旬とされている。

 サプリメント、飲料、そしてヨーグルト。iMUSEブランドがもともとラインナップしてきた品揃えが「免疫対応」の機能性表示食品化することになる。

 それに伴う売上高の拡大を予想するとの見方が業界内では多い。ただ、iMUSEは機能表示がなくとも好調に推移してきたブランドだ。とくに、新型コロナウイルス感染拡大に見舞われた20年の売上収益は前年比2倍以上の伸び。パイそのものは小さいもののサプリメントについては2.5倍の伸長を示しているという。

 そうした中で、機能性表示食品として「健康な人の免疫維持」を消費者に直接訴求できるようになる。さらに、iMUSEのブランド名は掲げないものの、サプリメント形状機能性表示食品の〝雄〟と目されるファンケルがプラズマ乳酸菌を引っ提げて市場に攻勢をかけることになる。販売プロモーションの面でも連携し、シナジーの創出を図ることもあり得そうだ。

 プラズマ乳酸菌の勢いを止められる免疫対応機能性関与成分は今後出てくるのか──。新たな市場はキリングループとファンケルが独占する可性がある。

11月から市場投入 テレビCMなどで拡販
 キリンホールディングスは日本初の「免疫機能」機能性表示食品として、プラズマ乳酸菌を機能性関与成分にした「iMUSE」ブランド6製品を2020年11月上旬から新発売する。

 最初に発売するのは、サプリメント『iMUSE professional』
 調剤薬局やクリニックなど全国の医療機関で11月上旬より順次新発売する。水なしで飲めるチュアブルタブレット。「バリアビタミンC」と同社では呼ぶL‐アスコルビン酸2‐グルコシドも配合。価格は30粒入(1日2粒)で税抜き2200円。

 次いで同11日から新発売するのは『iMUSEプラズマ乳酸菌 サプリメント』。グループの協和発酵バイオの通販サイトなどで発売する。
 こちらはチュアブルではない小粒型タブレット。摂取目安量は1日4粒。60粒入の「15日分」と、28日粒入の「7日分」(同24日発売)の2製品を用意した。価格は15日分が税抜き1833円、7日分が同905円。

 サプリメントのほかにも飲料を、キリンビバレッジが同24日から全国発売する。『キリン iMUSE レモン』、『同水』、『同 ヨーグルトテイスト』の3品。いずれも500㍉㍑のペットボトル。価格は税抜き143円。

 自動販売機も含めた全ての販売チャネルを通じて全国で展開し、商品と消費者の接点を増やす。同社はiMUSEブランドの飲料カテゴリーの役割について、「免疫機能維持を訴求する商品として、お客様への間口最大化を実現」するとしている。

 そして、現時点で正式発表はないが、小岩井乳業が『iMUSE生乳ヨーグルト』と『同ドリンクヨーグルト』の2品を年明け以降に市場投入する見通し。

 サプリメントについてはキリンHDに次いでファンケルが機能性表示食品『免疫サポート』を20年12月17日に新発売する。

 レモンヨーグルト風味に仕上げたチュアブルタイプ。ビタミンDやビタミンCも配合した。価格は、30日分(1日摂取目安量2粒)が税込み3100円、7日分が790円。

 通信販売からドラッグストアなど一般流通まで全ての販売チャネルを通じて展開する。テレビCMなど販売プロモーションも積極的に行いながら拡販を進める。

 チュアブルタイプのほかに「粉末タイプ」も同日発売する。ただし、販路はファンケルの通販と直営店舗のみでの数量限定とする。価格は税込み1235円。


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