一般健康食品、今後どうする(2020.10.22)

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【写真=左:大型ドラッグストアのサプリメント売り場。機能性表示食品と一般健康食品が混在する形で陳列されている=写真は首都圏近郊で2019年3月に撮影
右:左から「iMUSE professionalプラズマ乳酸菌サプリメント」(届出者キリンホールディングス)、「免疫サポートチュアブルタイプ」(同ファンケル)、「順造選 機能性表示クランベリー100」(マルカイコーポレーション)】
 
 機能性表示食品の市場流通品目数が1500を超える。2020年10月19日時点の今年度の届出総数は既に400件を突破しているほか、19年度以前の届出にも未発売のものがまだ残っていると考えられ、販売品目数は今後も増え続ける。ただ、機能性を表示しない一般健康食品も同様に増加している。機能性表示食品と一般健康食品の混在がより深まっていくことになりそうだ。

「現在販売中」1500品目に
 消費者庁が運用する機能性表示食品の届出情報データベースによると、届出者が現在販売中であると申告している機能性表示食品は10月19日時点で1496品目。既に販売中である一方で申告をまだ行っていない届出者の存在を考慮に入れると、既に1500品目に達している可能性がある。

 機能性表示食品の市場規模は20年にも3000億円の大台に乗ると民間調査会社は予測している。19年12月~20年1月に実施した機能性表示食品市場の調査結果を今年4月に公表した富士経済は、20年市場規模を3007億円と推計。18年度比は約39%のプラスを見込む。

 機能性表示食品制度は15年4月に施行された。以来、届出は順調に積み上がり、20年10月12日までに、既に360品目余りに達している取り下げ(届出撤回)を除いても3000品目を超えた。

 差し引き約1500品目が現在までに発売されていないことになるが、一般消費者への販売を原則行わない原材料事業者やOEMメーカーが届け出ているケースも少なからず存在する。それを踏まえても、500~1000品目が発売待機中と推察できそうだ。

 年度別届出公開件数の過去最多記録を更新した19年度は、900品目に迫る882品目の新規届出が公開された。そのうち現在販売中と申告されているのは497品目とおよそ6割にとどまる。

 また、20年10月19日時点で422品目と早くも400品目を突破し、最終的に過去最多記録を更新しそうな今年度(20年度)分の届出において現在販売中は、現時点で30品目とまだ2ケタ台にすぎない。

 既に撤回されたり、OEMメーカーなどが届け出たりといった以外の現在未発売の届出が「現在販売中」に移行することで、機能性表示食品の市場規模はさらに拡大していくことになる。

追い風しかない「機能性」
 届出品目数のさらなる増加も予想される。
 「健康な人の免疫機能の維持に役立つ」旨の機能性表示が初めて「受理」された。これに好感を抱いた業界関係者は少なくない。免疫に限らず、届出は難しい思われてきた機能表示の実現可能性がさらに高まったと受け止めたためだ。

 実際、免疫以外にも、これまで困難あるいは不可能と考えられていた機能表示が、ここにきて消費者庁の形式確認を相次いで通過している。

 例えば、肌の弾力維持、あるいは肌弾力の低下緩和機能である。「何度やってもダメ。もう諦めた」と業界関係者に過去言わしめた機能表示を行うとする届出の公開が昨年度末から今年度にかけて相次いだ。

 また、20年6月には、「トイレが近いと感じている女性の日常生活における排尿に行くわずらわしさをやわらげる機能があると報告されています」との機能表示を行うとする届出が公開。やや回りくどい表現とはいえ、排尿サポート機能に関する届出受理は業界を大いに驚かせた。この届出に基づく機能性表示食品の飲料は20年10月に発売されてもいる。

 こうした表示可能な機能性のバリエーション拡大に加えて、消費者庁が20年4月に運用を開始した「事後チェック指針」も届出増を後押ししそうだ。

 同指針は、機能性表示食品に対する規制の透明性と予見可能性を高める目的で、「科学的根拠」と「広告表示」の主に2つの観点から、消費者庁が業界の意見も聞きながら取りまとめ、運用をはじめたもの。指針を適切に活用することで届出者は、科学的根拠や広告表示を巡り「後ろから刺される」かのような不測の事態を極力回避できるようになった。

 また、同指針を受ける形で業界団体が連携して立ち上げ、20年6月から運用を始めている、アカデミアらで構成する第三者組織「エビデンスレビュー評価委員会」の存在も届出増に向けた追い風になりそうだ。

 同委員会は、表示しようとする機能性の科学的根拠に疑義が生じた際、届出者の依頼に応じて科学的根拠の妥当性を第三者として評価を行う組織。従来、科学的根拠の妥当性を巡り届出者と消費者庁の見解が対立した場合、届出者の選択肢は事実上、届出撤回以外になかった。同委員会はそうなった場合のいわば「調停機関」。その科学的根拠は合理性を欠くものではないと判断されれば、「景品表示法上問題となるものとは取り扱わない」ことが事後チェック指針には明記されている。

 さらに、トクホ(特定保健用食品)で先行することになったが、公正取引委員会や消費者庁長官が認定する業界自主基準「公正競争規約」も届出の増加を後押ししそうだ。

 機能性表示食品の公正競争規約は現在、健康食品産業協議会と日本通信販売協会を中心に業界団体が連携して策定作業に当たっている。運用開始時期ははっきりしないが、公正競争取引協議会に参加し、規約を遵守する広告表示を行う届出者は原則、景表法など関連法規違反に問われないことになる。

それでも大きい「一般」市場
 このように、機能性表示食品制度は今、業界団体のみならず制度を所管する消費者庁も旗を振る形で、健全な成長・発展に向けて後押しされている。その背景には国の政策もある。

 20年3月に閣議決定された「健康・医療戦略(第2期)」。「免疫機能の改善等を通じた保健用途における新たな表示を実現することを目指す」方針が盛り込まれ、機能性表示食品で免疫表示が実現するきっかけになったことで知られる政策だ。

 同戦略の法的根拠である健康・医療戦略推進法では、同戦略の基本理念について、「世界最高水準の医療の提供」と「健康長寿社会の形成に資する新たな産業活動の創出」によって「我が国経済の成長に資するもの」とする考えを打ち出している。経済成長政策の一環として健康寿命延伸政策が盛り込まれているわけだ。

 国の政策の後押しも受けて機能性表示食品の規模は今後も拡大することになる。ただ、そのことは、機能性を表示できない一般健康食品と、機能性を表示できる機能性表示食品の市場での混在がますます進むことを意味する。それが商品選択にあたっての消費者の混乱を増幅させるおそれもある。

 サプリメント大国である米国のダイエタリーサプリメント市場では現在およそ10万品目の商品が流通しているとの見方がある。日本での実態は判然としないが、市場規模が1兆円を超えているとされることを考えれば、数万品目の規模であることは想像に難くない。

 とすれば、国内サプリメント・健康食品市場の主体は機能性表示食品ではなく一般健康食品であるのが実態。そのなかでは、機能性表示食品の成長・発展に向けて国や業界団体がいくら旗を振ろうとも、市場全体に及ぼす影響は軽微なものにとどまる。国内サプリメント・健康食品市場全体の成長・発展にはつながらない。

 一般健康食品では、機能性を表示できないためか、過剰な広告宣伝や、違法すれすれの販売手法に走る事業者が目立つ。そうした事業者に対する規制強化の姿勢を法執行機関は示しているものの、一般健康食品の規模を考えれば、〝もぐらたたき〟に終始する可能性がある。これでは業界や市場の健全化も期待できない。

 健康の維持・増進に資すると言える一定の科学的根拠がない一般健康食品は仕方がない。しかし、国として「健康長寿社会の形成に資する新たな産業活動の創出」を目指すのであれば、そうではない一般健康食品を機能性表示食品のフィールドに引き上げる新たな施策が求められる。市場規模は、機能性表示食品よりも一般健康食品のほうが断然大きいのだから。


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