大麦 さらなる市場成長へ (2020.10.22)

大麦市場合体③

 【写真=新商品の大麦粉入りドリンク(左上)。従来品には雑穀や麺類などもあり最終商品はバラエティに富む】

 「もち麦」と「バーリーマックス」の2つの品種が中心になり、市場を構成している大麦食品。両品種とも今年も採用商品を複数発売しており、バーリーマックスについては、原材料事業者が採用商品数を把握できないほどだという。また、最近は摂取機会を広げる目的でドリンクやフレークなど新しい形態の商品も発売された。さらなる市場の成長に結び付くか注目されるところだ。

 整腸や食後血糖値上昇抑制、LDLコレステロール低減などの機能性で訴求される大麦。大麦品種のなかでも、これら機能に関与する水溶性食物繊維の一つであるβ‐グルカンを多く含む「もち麦」と、水溶性と不溶性の2種類の食物繊維と同様の機能を持つとされるレジスタントスターチが豊富な「バーリーマックス」が牽引し、コロナ禍でも市場は堅調に推移する。

 バーリーマックスについては原材料供給する帝人が、「採用商品数を把握できない」というほど採用が増加。そのなか、最近は、以前より使われていたシリアルなどの加工食品に加え、スーパーの総菜などでの採用が増えている。また、はくばくと種商が他の雑穀にバーリーマックスを合わせた雑穀米をそれぞれ販売するなど、雑穀メーカーの採用も増えている。

 一方、テレビの情報番組に紹介されたことで、ここ数年で一気に需要が向上したもち麦も好調を維持。今年は、はくばくや種商に加え、日本精麦や濱田精麦などが炊飯用のもち麦商品を相次いで新発売している。

 そのなか、はくばくはもち麦の新商品で今春、ドリンクを初めて発売した。豆乳などにもち麦粉末を加えたもの。発売の理由について同社担当者は「炊飯用だけではもち麦を摂取し始めるきっかけ作りには弱く、摂取機会をより多く創出するため」と説明。ドリンクを契機に今後様ざまな食シーンに応じられる商品を発売していく計画だ。

 こうしたはくばくの計画は、もち麦の認知度が8割以上あった自社調査に基づく。健康に良いイメージが広く知れ渡っているため、手軽に摂れる商品でより多くに飲食してもらい、その有用性を体感してもらうことでさらなる需要創出を図る考えだ。

 また、機能性研究も大麦の需要拡大を後押し。大妻女子大学らは、大麦β‐グルカンは分子量5万ほどの中程度に低分子化しても、糖や脂質改善機能を保持する可能性のあることを動物試験で確認した。大麦粉は水を加えると、内在する酵素により中程度に低分子化してしまうが、この結果から加水加工するパンなどを製造しても、機能性は維持される可能性を示唆する。

 このほか、中国の重慶大学らは共同研究で、大麦β‐グルカンと乳酸菌を併用するとシンバイオティクス効果が期待でき、相乗的に脂肪蓄積を抑える可能性を肥満モデルマウス試験で確認した。

 今年2月の富士経済の発表では、大麦β‐グルカンを機能性関与成分にした米飯や麺類カテゴリーの機能性表示食品の2019年売上は、対前年比23.5%減の2億6000万円と見込み、20年は同3.8%減の2億5000万円と予測した。売上減少の要因はマルヤナギ小倉屋の撤退だという。同社1品の撤回が影響するのは、その他企業の届出商品が今年9月までで30件(撤回含む)と少ないことも影響していそうだ。一方、機能性表示食品は認知向上も期待できる。テレビによる流行に左右されず市場の成長を望むなら、機能性表示食品をより積極的に利用するのも一つの手ではなかろうか。

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