ユーグレナ、キューサイを子会社化へ (2020.12.24)


 ユーグレナ(東京都港区)は投資ファンドらと共同で、健康食品・化粧品通信販売のキューサイ(福岡市中央区)を買収することを12月15日発表した。ユーグレナはキューサイを傘下に置くことで、キューサイのシニア層を中心とする通販顧客の約37万人を得ることになり、従来の主要顧客である若年層からシニア層までを網羅した健康食品や化粧品などの新たなヘルスケア事業の領域に乗り出す。

小が大を飲む買収劇
 同日付で、キューサイの親会社、コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングスと株式譲渡契約を締結した。株式譲渡は年明け1月29日に実行される予定。株式取得にあたっては、ユーグレナなど3社の共同出資に加え、銀行借入により得た現金を対価にするとされている。

 買収額は明らかにされていないが、コカ社によると、企業価値420億円にキューサイの連結純有利子負債に係る調整を行い、実際の株式譲渡価額を確定するとしている。

 買収スキームは、ユーグレナのほか投資ファンドのアドバンテッジパートナーズ、リース大手の東京センチュリーの3社が共同出資する、キューサイ株式取得を目的にした特別目的会社を通じて、コカ社が保有するキューサイの全株式を共同取得する。特別目的会社に対する当初出資比率は、アドバンテッジ社が67.22%。ユーグレナが12.84%、東京センチュリーが19.94%だが、株式取得から1年以内を目途にユーグレナの出資比率を49%まで高め、ユーグレナはキューサイを連結子会社化する計画だ。

 ユーグレナの直近売上高は133億円(2021年9月期)で、キューサイよりも事業規模が小さく、小が大を飲み込む企業買収となる。

 今回の買収スキームについて、M&A仲介大手ストライク(東京都千代田区)の荒井邦彦社長は「事業会社と投資会社が組んでM&Aをするのは相互補完がきくという観点からの有効なやり方だ」と話す。

 ユーグレナらの発表によると、今後、買収に関わる3社に加えキューサイがそれぞれのリソースを結集し、シニア層からプレシニア層まで顧客層を広げる。また、顧客の年齢に応じた「健康実現」をサポートする商品、サービスを磨く。これにより、キューサイを「通信販売を中心とする健康食品/化粧品販売企業」から、「ウエルエイジング支援カンパニー」へと進化させるとしている。

 キューサイは1965年創業。ケール青汁などの健康食品、スキンケア化粧品の通信販売を主力事業に、食品分析事業も手掛けている。直近業績は売上高250億円、営業利益28億円。昨年には、「青汁だけの会社からの脱却を図る」として、企業イメージの改革に乗り出すとともに、医薬品通販に参入するなど事業領域を拡げていた。

 キューサイは、2010年にコカ社の前身のコカ・コーラウエストに約360億円で買収され、青汁入り清涼飲料やスキンケアなどを共同開発してきたが、シナジー創出は限定的だったとみられている。

 買収する側のユーグレナは、微細藻類のユーグレナを用いたサプリメントや化粧品などヘルスケア事業を軸に、先月発表した2020年9月期の売上高は約133億円。ただ、売上高は18年の152億円をピークに減少傾向にあり、従来販路の通販以外に、ドラッグストアなど店販の開拓や、ユーグレナの研究成果をテレビCMで解説するなど、ヘルスケア事業のテコ入れを進めていた。

 今回の買収で、ヘルスケア事業の収益基盤を確立して、先行投資を続けている微細藻類を活用したバイオ燃料事業につなげる狙いもあるとみられる。


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