アピ PBF(プラントベースフード)原材料市場に参入(2021.1.14)

アピ_PBF原材料市場に参入_第1弾にオーツ麦①

 国内サプリメント・健康食品受託製造最大手のアピ(岐阜県岐阜市)が新たな原材料ビジネスに乗り出す。ヘルスケア志向や環境保護意識の高まりを追い風にした需要拡大が見込まれる、植物性の原材料を活用したプラントベースフード(PBF)市場に、原材料メーカーの立場で参入する。第1弾製品として、欧米で既に高い需要があるオーツ麦のパウダーや糖化液の原材料販売を、今年4月にも開始する予定だ。製造には、新たに導入した加水分解装置による独自技術を活用し、最終製品への加工適性で強みを引き出す。

第3のミルク等へ提案
 PBFは、ベジタリアンやヴィーガンほど厳格でないものの、動物性ではなく植物性の食品を求める生活者の増加を受け、欧米で台頭してきた新たな食のスタイル。その筆頭は、日本でも一部の食品メーカーなどが導入し始めている大豆などを活用した「植物肉」で、限りある資源の持続可能性や、環境保護に対する意識の社会的な高まりも受けながら、市場が急拡大しているとされる。

 一方、日本において植物性の食品は、もともと健康志向の高い食品として消費者に浸透している面がある。その中で、欧米と同様の社会的課題の解消と呼応する食品に対する新たなトレンドの広がりや、さらなる健康志向の高まりによって、植物肉などPBFの国内市場規模は近い将来、1000億円規模にまで成長するとの見方もある。

 こうした動きにアピは着目。PBF市場拡大の流れで、牛乳や豆乳に次ぐ「第3のミルク」の原料として、欧米では既に消費量が多く、今後、日本でも、アーモンドに並ぶ形で需要が高まっていく可能性の高い「オーツ麦」を第1弾製品として選択した。欧州などから調達するオーツ麦を国内自社工場で粉末や糖化液に加工し、今春から食品市場に幅広く提案する。

 オーツ麦の加工に当たっては、同社が技術提携先と連携し、揖斐川工場に一昨年導入した独自の加水分解装置と技術を活用し、先行製品との差別化を図る。本巣工場にも今年2月導入する同技術・装置は、添加物や化学薬品を一切使用せず、熱と圧力だけで、でんぷんなどの高分子を加水分解する。そのため、オーツ麦に含まれる栄養成分等の特性をほぼそのまま留める形で粉末化できるという。

 また同技術・装置では、素材に含まれているでんぷんなどの高分子を加水分解して低分子化することで、風味の改善や溶解性の向上などといった新たな機能や価値を付加できる。他にも、そのままでは水になじみにくい素材について最終製品への加工適性を高め、口あたりに優れた原材料へ変化させることができるという。
 この技術と装置を活用し、同社は今後、第2、3弾のPBF向け植物由来原材料を開発していく方針だ。

機能性表示対応も視野
 第1弾製品として発売するのは、同技術と装置で製造するオーツ麦加水分解パウダー『EX‐OAT』と、同パウダーを糖化してオーツ麦独特の自然な風味をそのまま残しつつ甘さを引き出した『OAT糖化液』の2製品。前者はあらゆるPBF食品の原材料として提案する。また、グルテンフリーやグルテンレスなどが求められる小麦粉代替食品用途でも提案を進める。

 一方、後者は、第3のミルクをはじめとする乳製品および飲料製品全般に売り込む考え。第3のミルクは、ここにきて日本でも消費量が伸び始めているが、今のところアーモンドミルクが独占しているような格好。同社では、その差別化としてオーツミルクを提案し、日本のオーツ麦市場の拡大を図る。「独自の分解工程による風味の良さと、自社工場での酵素反応によって糖化度合を調整できることが強みになる」と同社では話す。

 オーツ麦には、元来、たんぱく質やミネラルなどが豊富に含まれており、栄養価の面でも魅力的な植物性原料といえる。また、β‐グルカンを主体にした食物繊維も多く含まれているため、機能性食品の原材料としても注目される。

 実際、欧米では、冠状動脈心疾患リスク低減に関する疾病リスク低減表示(米国)、食後血糖値の上昇抑制機能などに関するヘルスクレーム(欧州)が許可されており、機能性に関する科学的根拠もある。このためアピでは、オーツ麦由来β‐グルカンに関するシステマティックレビューを実施し、機能性表示食品向けの原材料としても提案していく計画だ。

 同社によると、欧米のPBF市場では、オーツ麦やオーツミルクを使用したアイスクリーム▽マーガリン▽チーズ▽ヨーグルト──など、様々な乳代替食品が販売されているという。加工適性の高さに加え、同社の得意分野である健康訴求によって、機能性表示食品として差別化できるPBFなど一般食品の開発、販売の面からも顧客をサポートする。

【写真=オーツ麦とオーツミルク。欧米では既に高い需要がある(写真はイメージです)】


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