今年の届出 驚く機会 いかほどに (2021.1.14)

機能性表示食品合体①

食事に含まれる鉄、カルシウムやマグネシウムの吸収を促進する機能があることが報告されています──こんな表示まで届出可能なのが今の機能性表示食品である。脂肪等の吸収を「抑制」するなどといった表示はこれまでも多数あったが、その逆、「促進」は初となる。消費者庁が年明け早々、1月4日に行った届出情報更新で公開された。2021年、機能性表示食品の届出に驚かされる機会はどれ位の数にのぼるのだろう。

 冒頭に示した栄養成分吸収促進機能の機能性関与成分は、オリゴ糖の一種であるマルトビオン酸。同成分を製造・販売するサンエイ糖化(愛知県知多市)が届け出た(F646、同654)。F654では、「おなかの調子を整える機能」も合わせたダブル機能表示を届け出ている。

 マルトビオン酸の届出件数は1月8日時点で計9件。これまで、主に「加齢とともに低下する骨密度の維持に役立つ」旨の表示で届出が進んでいたが、その作用メカニズムについてサンエイ糖化らは、カルシウムの吸収促進などを提示してきた。その意味で、新たな届出は作用メカニズムを機能性表示に発展させたものといえる。

 一方、この届出表示よりもインパクトの大きさで勝るのはF623だ。今号の別のページで詳報しているためここでは詳しく触れないが、「加齢とともに低下する血管の柔軟性維持に役立つ機能」を訴求する届出である。

 こうした最近の届出で注目したいのは、昨夏公開されて話題をさらった「健康な人の免疫機能の維持に役立つ」もそうだといえるが、ヘルスクレーム(届出表示)が従来と比してファジーなものが目立ちつつあることだ。カルシウム等の「吸収を促進する機能」も同類だろう。

 この点は、1月4日に公開された次の届出表示と比較すると分かりやすい。
 「日常生活中の中腰・前かかがみ時に生じる腰の不快感を軽減する機能があります」(F647)。
 このように、より具体的に機能を示すのが機能性表示食品ならではのヘルスクレーム、と理解してきた業界関係者が多いだろう。一方で、それに比べると、「免疫機能の維持」「血管の柔軟性維持」「栄養成分の吸収促進」といった届出表示は具体性に欠けると言える。それを維持してどうなる、吸収を促進してどうなる、が明示されていないためだ。

 ただ、こうしたファジーな機能表示の方が、サプリメント・健康食品ならではとも言える。膝がどう、お腹がどう、目がどうといった個別具体的なニーズに応えることも大切だが、どちらかといえば、健康であることを求める生活者の獏としたニーズに応えてきたのが、機能性表示食品登場以前のサプリ・健康食品だったからだ。

 免疫機能や血管の柔軟性を維持する、あるいは栄養成分の吸収を促進することのその先にある機能は、ある種、全ての人にとって普遍的な健康維持・増進機能だろう。それは疾病予防機能と言い換えることもできる。健康をめぐって生活者が真に求めているのはそこに違いない。

 2021年、機能性表示食品の届出件数はさらに増加していくことになる。その中で、ルールを遵守しつつ既存の枠にとらわれない届出がどれ程でてくるか。科学的なコンセンサスを踏まえた企業の創意工夫が新たな市場を創出し、この産業を大きくしていくことになる。(T)

【写真=今回注目の届出=今回の届出情報更新一覧には、計60件の届出が収載された。その中で注目の届出は、本文でも一部触れた腰の不快感軽減機能を訴求するF647(写真上)。同様の機能を訴求する届出は以前にもあったが、より具体的なシチュエーションを提示した。また、納豆菌由来ナットウキナーゼについて、初の届出実績を挙げた日本生物化学研究所に続いてヤクルトヘルスフーズが届け出た(F620、写真下)。機能性関与成分ではないが、フコイダンも配合したサプリメント。】

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