専ら医成分、届出相次ぐ 共通 表示内に成分名なく(2021.2.11)


 食薬区分の「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)」(専ら医)リストに収載されている成分を、機能性表示食品の機能性関与成分として届け出る動きが相次いでいる。同リストに収載されている成分名をそのまま機能性関与成分名にした届出がある。一方、別名で届け出たものもあるが、共通しているのは届出表示において成分名を明示しない点だ。届出者の自主判断でそうなったとみられるものの、複数回の差し戻しを経た上で、最終的に公開された届出表示に落ち着いた場合もある。事実上のルールと捉えるのが妥当といえそうだ。

オリザノールに次ぎDNJ
 桑由来モラノリン──こうした名称の機能性関与成分が、1月27日にあった機能性表示食品の届出情報更新で公開された。これまでに公開されたことのなかった機能性関与成分だ。

 届出資料によると、同成分は、専ら医リストの化学物質等の項目に収載されている1‐デオキシノジリマイシン(DNJ)の「別名」。同じく同リスト収載のγ‐オリザノールを機能性関与成分にした届出が昨年12月に公開されており、今回の届出は、専ら医リスト収載成分を機能性関与成分として届け出た「第2弾」に位置づけることができる。

 ただ、この2つの届出は、通常であれば届出表示内で具体的に明示される機能性関与成分名を共通して伏せている。

 桑由来モラノリンの届出表示は、「本品は、糖の吸収を抑え、食後血糖値の上昇を緩やかにする機能があることが報告されている桑由来の成分が含まれています」。

 一方、γ‐オリザノールは「(前略)また本品は、血中の中性脂肪や総コレステロールを低下させる機能が報告されている成分を含みます」と、それぞれ届出表示を見ただけではその機能性が報告されている成分が何だか分からない形になっている。

 「(届出資料の形式確認を行う)消費者庁から(機能性関与成分名を明示しないよう)直接指示されたわけではない」。届出者はこう語り、こうした機能性関与成分名を明示しない届出表示になったのは「自主判断」だとする。
 ただ、届出表示を巡って差し戻しが何度か繰り返されたとも話す。いくつか用意したパターンのうち、最終的に届出番号が付与されたのが機能性関与成分名を伏せたものだった。「(専ら医リストに収載されている)成分特有の事情だろう」と届出者は見る。

 しかし、届出表示内において機能性関与成分名の明示を避けることで、消費者の合理的な商品選択を妨げる可能性がある。届出資料や商品パッケージの表示を確認すれば容易に分かることではあるが、具体的にどの成分に機能性が報告されているのかが分からないためだ。

 また、こうした機能性関与成分名を伏せた届出表示では、特に、広告宣伝の場面で成分名を強調するのは困難と考えられる。それをさせないための事実上のルール化だとも推測できるが、消費者に対する情報提供の面から支障の生じることが懸念される。

別名「モラノリン」で届出
 桑由来モラノリンを届け出たのは、これまでに複数の機能性表示食品の届出実績がある、お茶などの製造・販売を手掛ける小谷穀粉(高知県高知市)だ。以前から製造・販売している粉末の桑(クワ)茶を機能性表示食品として届け出た。届出商品は、モラノリン(DNJ)を天然に含む桑の葉を原材料にした食品となっている。

 DNJは専ら医リストに収載されているが、植物としてのクワの食薬区分は、葉・花・実が「専ら非医薬品」リストに収載。

 加えて、届出資料によると、同社が今回届け出た食品は、「生鮮である桑葉を乾燥し、茶としての利用を目的に切断、粉砕などの簡易な加工を施した食品」であり「製造工程において、当該成分の抽出、濃縮又は純化を目的とした加工をしていない」ことから、「医薬品に該当しないと判断した」としている。

 先に届出が公開されたγ‐オリザノールも、加工度合いの低い食品(発芽玄米ごはん)を届け出たもので、米糠にもともと含まれる同成分を機能性関与成分にしていた。

 専ら医リスト収載成分を機能性関与成分として届け出ることが可能になったのは、政府の規制改革を受けた機能性表示食品制度の運用改善による。

 一昨年3月、消費者庁は届出に関するQ&A(質疑応答集)を改正し、専ら医リスト収載成分を届け出る場合の考え方を明確にした。

 また、食薬区分を所管する厚生労働省も通知(Q&A)を発出。「当該成分の抽出、濃縮又は純化を目的とした加工をしておらず、かつ、食品由来でない当該成分を添加していない場合」などは、医薬品とは判断しないとする考えを示している。

 小谷穀粉によると、機能性関与成分名をDNJではなく桑由来モラノリンとすることは、届出手続きにおける比較的早い段階で決定していた。名称がDNJでは届出が困難と判断。その別名として学会等でも用いられているモラノリンの名称を機能性関与成分名として採用したという。


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