プラズマローゲンって何? 脳機能改善で提案始まる(2014.3.6)

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 ここにきてその名前が聞かれるようになったプラズマローゲン。この健康食品素材にはどのような機能があるのか。また、関係各社は今後どのように市場展開していくのだろうか。動向を追ってみた。

鶏胸肉抽出物で最終製品も

 プラズマローゲンとは脳や心臓、血液などの人の体内に存在するリン脂質の一種で、グリセロリン脂質の一つ。その摂取により、アルツハイマー型認知症(AD)患者の認知レベルを改善させる可能性のあることが、九州大学の研究で示唆されている。

 プラズマローゲンの脳機能への作用は以前から着目されてきた。06年、東北大学の宮澤陽夫教授が海に生息するホヤから抽出したプラズマローゲンで肝機能改善を報告している。2007年には、鶏胸肉を使用したプラズマローゲンの研究が、農研機構の民間実用化研究促進事業に採択された。同事業は、生活習慣病を緩和する食品の開発を目指す一環として、丸大食品をはじめ帯広畜産大学、レオロジー機能食品研究所などが共同研究を進め、鶏の胸肉からプラズマローゲンを抽出する技術を確立した。また、機能性研究も行い、現在、抗認知症に関する動物実験を進めている。

 脳機能に訴求した最終製品も上市され始めている。プラズマローゲンを主要素材とするサプリメントを製造販売するために新設された企業「プラズマローゲン株式会社」。同社は、会員性リゾートホテルを運営するリゾートトラスト㈱の関連会社で、医療施設運営を支援する㈱アドバンスト・メディカル・ケアらが新設したもので、プラズマ社の代表取締役には、アド社の代表取締役社長が就いている。

 アド社は昨年5月からサプリメント(60粒入り・税込1万3000円)を販売している。販路を見ると、アド社が支援する病院施設のほか、国内約15万人の会員を抱えるリゾート社の会員向け会報誌。また、このほど新たにネット通販も開始しており、プラズマ社が1本あたり945円相当のドリンクを展開している。顧客には半年以上継続して購入する人もいるなど、販売も好調に推移しているという。

 プラズマ社では、自社商品の販売のほかOEM供給にも一部対応している。OEM先の一つがケフィアヨーグルトなどを通信販売する㈱ロイヤルユキであり、同社ではプラズマローゲン配合ドリンクの販売を3月1日からスタート。脳への働きを訴求していきたい考えで、「主力顧客となる高齢者の反応をみながら販売している」という。

 このように、最終商品化がスタートしているが、その動きはまだまだ鈍い。原料供給サイドの動きを見ても、限定的な先行販売を一部で展開しているのに過ぎない様子で、本格供給にいつ乗り出すかが注目される。

俄かに活発 普及啓発

 プラズマ社が配合商品を発売して以降、プラズマローゲンの普及・啓発活動が積極的に催されている。今年2月20日には、レオロジー社の代表取締役で、九州大学の藤野武彦名誉教授が登壇した「プラズマローゲンの研究発表会」が都内で開催された。マスコミなど約50名が参加した。

 同会で講演した藤野教授は、軽度あるいは中度以上のアルツハイマー病患者40名にプラズマローゲン配合食品を摂取してもらう臨床試験の結果を報告。同教授の話によると、6カ月間摂取してもらった結果、プラズマローゲン摂取群はプラセボ群に比べ、統計的に有意な認知機能の改善が確認されたという。

 認知症診断のスクリーニングに広く用いられる知能テストのミニメンタルステート検査の結果でも、プラセボ群やプラズマローゲンを10㍉㌘にした高用量群では変化が見られなかったが、1㍉㌘の低用量群に統計的な有意差が認められた。さらに介護者客観的評価(注意力、実行機能の比較)では、プラセボ群に悪化が見られた一方、摂取群では変化が無い、もしくは悪化が少なかった。ほかに、摂取群の血中プラズマローゲン量が有意に上昇していたという。

 「今回の実験から、プラズマローゲンのアルツハイマー型認知症に対する有効性が示唆された」と藤野教授。しかし、試験者数が少ないことから、「200人規模の試験を4月から開始する」としている。

九大関係者が前面に

 レオロジー社によれば、これまで時間も費用もかかっていたプラズマローゲンの測定を、患者の血液から簡便に検出できる方法を07年に開発した。また09年には、鶏胸肉から大量にプラズマローゲンを抽出する製造方法が発見されたことも相まって、「コストも安く経口投与の実験がやりやすい環境ができあがった」という。

 その後、様々な経口投与試験が進められてきた。九州大学の藤野教授らは、プラズマローゲン含有食をマウスに摂取させたところ、海馬における神経新生の増強が確認された。老化促進マウスだけでなく正常のマウスにも見られたという。また、βアミロイド蛋白の蓄積抑制、脳内プラズマローゲン含量の低下なども抑制した。そのほか、空間認知学習障害を抑えるなどの結果を得た。

 さらに、プラズマローゲンを経口摂取させたマウスの血中プラズマローゲン量が増えることも確認したという。以前は、「プラズマローゲンは酸に弱く経口投与しても胃酸で壊れてしまうと思われていて、研究が進んでこなかった。しかし、経口投与の実験をしてみると、血液に吸収される事が分かった」(藤野教授)としている。この実験結果を契機に、ヒトでの経口摂取試験も進み始めた。

 認知機能障害を持つ40名を被験者にした臨床試験が、九州大学と福岡大学の共同で実施されている。それによると、検査前に30点満点中19.3点だったミニメンタルステート検査のテスト結果が、1日に1000マイクロ㌘のプラズマローゲンを6カ月摂取することにより、平均21.5点にまで改善。被験者によっては、20点から27点(正常と診断されるスコア)まで改善した例も確認された。また、プラズマローゲンの血中濃度は平均89.8%から97%まで大きく上昇する結果になったという。

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