ファンケル、新中計で方針 中国市場開拓を強化(2021.5.13)

ファンケル合体③

越境ECと一般貿易を両輪に
 ファンケル(横浜市中区)は5月10日、2021年度を初年度とする第3期中期経営計画「前進2023」(~23年度)を公表し、7つ設定した大方針の一つに、「本格的なグローバル化の推進」を掲げた。サプリメント・健康食品については、中国での拡販を推進する構え。以前から手掛けている越境ECに加え、中国国内で販売許可を取得する必要のある保健機能食品の一般貿易販売を本格化する。これにより、将来的に、中国国内で「海外ブランド売上No1」を目指す。

中国サプリ売上 23年度に60億へ
 ファンケルの中国サプリメント事業の2020年度売上高は、ほぼ越境ECのみで20億円。これを23年度に60億円まで引き上げる計画だ。越境ECでの売上高を拡大させるとともに、一般貿易販売による売上を積み上げて実現させる。

 具体的な施策としては、越境ECでは、同販売チャネルの主要ユーザーである女性をターゲットにした美容(ビューティ)サプリメントの販売を強化し、主力カテゴリーに育てる。同時に、その女性の家族をサブターゲットに、生活習慣病対策サプリを売り込む。これにより、健康と美の両面から越境ECでの売上高を拡大させる。

 また、中国の制度に基づく保健食品の一般貿易販売を本格化する。これまでも一般貿易で保健食品を販売してきたが、現在の製品ラインナップはビタミン・ミネラルの5品目にとどまる。これを21年度内に15品目に拡大。現地パートナーである医薬品企業「国薬国際」のネットワークを使い、販売チャネルも拡大させる。従来の免税店や百貨店などに加え、ドラッグストアや病院内薬局などにも進出する。将来的には、ファンケルが現地で許可を得た保健食品を、国有企業の従業員向け健康管理サービスに発展させることも想定している。

 中国のサプリメント市場で存在感を高めるには、中国に進出している海外の有力ブランドとの差別化を図る必要がある。この点については、「日本製品に対する信頼」、国内でも打ち出している〝体内効率〟に代表される「独自性の高いサプリメント」に加え、現地パートナー国薬国際の「幅広いネットワーク」で差別化していきたい考えだ。

新中計業績目標1200億円
 ファンケルは、新しく策定した中計の業績目標として、23年度売上高1200億円(20年度比150億円増)、同営業利益150億円(同35億円増)を、「必達」目標として掲げた。インバウンド需要による売上は織り込んでいない。サプリメントの売上高に関しては、20年度比6.8%増を目指す構え。国内では同3.8%増、海外は32.1%の大幅増を計画する。

 国内のサプリメント事業の拡大に向けた新中計の施策では、以前から進めている①既存サプリメント事業の強化②パーソナル対応③食品剤型の展開によるトライアル機会の創出(BtoBビジネス)の3つを基本戦略としつつ、「少子高齢化社会とコロナにおけるニーズの対応に注力し、高収益ビジネスモデルを目指す」方針を盛り込んだ。一連の施策を推進することで、日本人のサプリメント使用率を引き上げて「健康寿命の延伸と医療費の削減に貢献」したい考えだ。

機能性」など成長ドライバーに
 具体的には、①では、機能性表示食品を中心とした製品開発を進める。40~50代をメインターゲットに、生活習慣に対応する機能性表示食品「内脂サポート」などのサプリメントを成長ドライバーに位置づけ、積極的な広告戦略を展開する。

 ②では、昨年2月発売のオーダーメイドサプリメント「パーソナルワン」について新たな施策を展開し、独自の尿検査技術を用いた分析手法を導入したり、「免疫」に働きかける新製品を発売したりすることを予定している。20年度は、当初計画以上の販売実績3億円の売上を計上した。

 そして③では、資本提携関係にあるキリンホールディングスとのシナジーを図り、同社が開発した機能性食品素材を用いたサプリメントの新製品を開発する。具体的には、「『疲労』をキーワードにしたシナジー製品を考えている。また『脳機能』についても進めている」(5月10日、新中計について会見したファンケル島田和幸社長)。また、腸内環境の領域でも共同研究を推進し、将来の事業成長につなげたい考え。

 他にも、昨年発売した、キリンHDの独自素材『プラズマ乳酸菌』を機能性関与成分として配合し、健康な人の免疫機能維持を訴求する機能性表示食品のラインナップ拡充なども進めていく考えだ。

サプリ専用工場を竣工 今後の需要増にらみ 内製化比率高める狙いも
 ファンケルでは、巨大な人口を抱える中国でのサプリメント事業拡大も視野に、サプリメントなどの製造を手掛ける子会社、ファンケル美健(横浜市栄区)を通じて、静岡県三島市にサプリメント専用の新工場を竣工、4月26日から稼働を開始した。

 日本国内のサプリメント需要の増加も念頭に、今後進展させるグローバル化など急激な需要変動に対応させるため、新工場建設を進めていた。今後、機能性表示食品のサプリメント『内脂サポート』などの生産の内製化を進めるとともに、中国への一般貿易で販売展開する保健食品、資本業務提携するキリングループで、サプリメント販売を手掛ける協和発酵バイオの製品受託などを進めていく。

 三島新工場は、同社のサプリメント製造工場としては横浜・千葉・長野に次ぐ4番目の拠点となる。新工場が稼働することで、タブレットの生産能力は従来比1.3倍、アルミ袋充填では1.4倍に増強される。今後さらに設備を拡充することで、最大で3~3.5倍に生産能力は向上するという。

 三島新工場は、鉄筋鉄骨コンクリート造りの地上6階建てで、延床面積は同社工場最大規模の約3万平方㍍。投資額は建屋、土地代含め約80億円。打錠機はじめ、ハードカプセル充填機や錠剤選別機、高速分包機など最新鋭機器を導入している。

 また、無人夜間運転が可能な錠剤製造機なども導入し自動化や省人化を図った。21年中に健康食品GМP、22年中にFSSC22000の取得を目指す。

 ファンケルは4月26日に新工場設立発表会を開催。そのなかで島田和幸社長は、「ここ数年でサプリメント事業は大きく伸長した。新工場の新設は、将来への布石として欠かせない投資だ」と述べ、今後、加速させるグローバル展開への成長基盤が確立できたと強調した。

 同社のサプリメント事業の業績はここ数年で大きく伸長。けん引したのは機能性表示食品だ。同社の直近業績でサプリメントの売上高は約400億円。そのうち機能性表示食品の占める割合は230億円と過半数に達している。

【写真=上:ファンケル 島田和幸社長 下:約80億円を投じて新設したサプリメント製造専用の新工場】



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