大麻規制、「部位」から「成分」へ 厚労省が方針 (2021.5.27)


「実態に合わせる」
 厚生労働省は大麻に関する規制を一部見直す考えを5月14日までに正式に明らかにした。現在は大麻の葉、花穂など「部位」を規制。これを今後、大麻に含まれる幻覚成分THC(テトラヒドロカンナビノール)など「成分」に着目した規制に見直す。

 有識者から、現行の大麻取締法に基づく部位規制は「分かりにくい」などとして見直しを求める声が上がっていた。ただ、現行法下においても実態としては部位ではなくTHCを規制している。そのため実態に合わせた規制の見直しを行うにすぎない。

 今回の大麻規制見直し案は、大麻など薬物対策の今後のあり方を検討する有識者検討会の第6回会合で厚労省が明らかにしたもの。

 同検討会は、同省が今年1月に立ち上げ、現在までに、取りまとめに向けた議論を行う段階まで進んでいる。

 部位規制から成分規制に方向転換する背景には、海外で承認されている大麻由来医薬品について、国内での利用に道を拓く目的がある。

 大麻草から抽出・精製した、幻覚作用のないCBD(カンナビジオール)を主成分にした医薬品が欧米で承認されている。しかし、規制部位を原料にしているため日本では現在、輸入等が認められない。部位規制から成分規制への方向転換は、そうした課題の解消にもつながるものだ。同検討会の検討事項の一つには、大麻由来医薬品の国内での取り扱いも含まれている。

 一方、部位規制から成分規制への転換は、海外からの輸入数量がここ数年で増加している、健康食品などの用途で販売される大麻由来CBD製品の原料について、使用可能な部位が大きく広がる可能性が立ち上がってくることも意味する。

 大麻由来CBD製品に関しては現在、部位規制対象外の「成熟した茎および種子」を原料として用いた製品について、THCが含まれないことを前提条件に、大麻に該当しないと見なされ、輸入販売等が可能となっている。それが部位規制の見直しによって、CBD製品の原料として使用できる大麻の部位を、現在は規制されている葉などにも広げられるようになる可能性がある。

 しかし、そうは言っても、幻覚成分であるTHCが厳しく規制されることに変りはない。しかも、CBD製品の原料として使用できる大麻草の部位拡大は、製品からのTHC検出リスクをこれまで以上に増悪させる可能性があり、逆に、規制や取り締まり強化につながる場合も考えられる。

 厚労省によると、部位規制から成分規制への見直しには、今後、大麻取締法など薬物規制関連法の改正を行う必要がある。そのため、実際に部位規制から成分規制に法運用が変わるまでには相応の時間を要する見通し。CBD製品の輸入販売に当たっては、引き続き現行法に則した対応を進める必要がある。

 また、同省では、今後、THCの「含有量」による規制のあり方を検討する方向性を示している。この点について、CBD製品に及ぼす影響は現時点でははっきりしないものの、海外の動向を踏まえ、CBD製品への残存が許容されるTHCの含量上限値の規定など、規格基準の策定につながっていく可能性もゼロではなさそうだ。今後の検討の行方を注視する必要がある。




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