上場企業子会社 CBD事業開始の理由 (2021.6.10)

事業戦略インタビュー 細山社長写真修正②

素材ポテンシャルとビジネス 双方で成長期待 プレミア・ウェルネスサイエンス 細山 紳二 代表取締役
 東証マザーズ上場企業の100%子会社がCBD(カンナビジオール)製品を日本に普及させようとしている。化粧品・健康食品の企画・販売などを手掛けるプレミアアンチエイジング(東京都港区)の子会社「プレミア・ウェルネスサイエンス」(東京都港区)である。

 これまでにCBDを製造する海外メーカー2社と国内総代理店契約を締結。また今年3月には昭和大学との間で共同研究契約締結するなどして国内でCBD事業を展開していく体制を整えてきた。

 同社がCBD事業で手掛けるのは自社ブランド商品の開発及び販売と、業務提携した外部企業との協業ブランド商品の開発──の大きく2つ。その上で、CBD製品を機能性表示食品にすることを目指しているというのだから瞠目しないわけにはいかない。細山紳二社長に取材した。

――設立は昨年12月。企業概要を聞かせて下さい。

 「概要としては、ウェルネスサービスの研究開発・販売を主要事業とし、AI/IoTを活用した健康増進アプリケーションや環境保全技術に関する研究・事業開発を行うことを目的としたウェルビーイングカンパニーです」

――事業の第1弾としてCBDを選択しました。理由は?

 「素材のポテンシャルとビジネスの双方で非常に成長が期待できるからです。海外におけるCBDは、食品・化粧品・医薬品など、さまざまな分野で応用が加速中です。米国のCBDブランド数は現時点で1000以上。市場規模は年間1.7兆円前後で、昨対比163%という急成長市場ですが、日本において4つの必須要素をクリアしたブランドだけが、消費者に受け入れられると思います」

――4つの要素を具体的に。

 「CBD含有の製品を事業として適切に成長させていくには、様々な要素を担保しておく必要があります。当社の事業スキームはそれら必須要素を担保した形です。具体的には、①高品質原料の調達②安全性や有効性エビデンスの取得③適切なマーケティングの設計④販売チャネルの確保の4点。その4つを担保しながら、原料の総輸入代理、大学との共同研究などを順次構築しています。最終製品は自社ブランドの他、外部企業との協業ブランドを協議中です。時期がきましたらIRとして公表予定です」

CBDを関与成分に「機能性」の届出視野
――CBD製品にはリスクがあります。例えば、製品中からTHC(テトラヒドロカンナビノール)が検出されるリスク。どうクリアしていきますか。

 「まず、CBD原料の取り扱いは、製造国の法令と日本法令では異なります。当然、その違いを把握した上で、輸入・通関・販売までに発生するすべての要件をクリアする必要があります。輸入前にはフランスの第三者検査機関に成分検査依頼し、通関後も提携している検査機関にてCBDやTHCの成分検査を実施します。さらに製品化後も第三者検査機関で成分分析を依頼する標準フローでリスク回避します」

――大麻取締法は今後、部位規制から成分規制に改められそうです。見解を聞かせて下さい。

 「現行の部位規制を改正するか、しないかは当社にとっては問題ではありません。現段階で既に部位規制も成分規制もどちらもクリアできる品質管理体制となっているからです。部位規制がある前提で、CBD原料メーカーの上位30社をすべて調査し、部位規制と成分規制のどちらの要件もクリアできる企業と契約しました。輸入前の大麻取締法・向精神薬取締法はもちろん、製造販売段階での薬機法・食品表示法・食品衛生法・健康増進法・景品表示法など、すべての法令に準拠した対応を取り、適切なリスクマネージメントができる体制です」

――自社ブランドの販売開始時期について。

 「時期は言えませんが、すでに開発に着手しており、第1弾商品のモニターをしています(6月2日時点)。CBDを機能性関与成分として、3つのヘルスクレームを検討しており、最終的には機能性表示食品の届出を行う予定でいます」

――その上で外部企業との協業も進めるということですね。協業を考えた理由について。

 「消費者に認知され、生活の一部として親しまれるには、確かなブランド力と大規模な販路を持った企業との協業が必要です。当社グループが参入しない商品カテゴリは、その分野を牽引する企業から協業ブランドとして、開発販売し、消費者側で安全なCBD含有商品を手にできる機会を増やすことが重要と考えています。安全なCBD含有商品が流通、普及していく過程で当社自社ブランドの信頼性も向上し、一過性ではなく、長期的な成長を描けると考えています」

――協業の具体的な中身を聞かせて下さい。

 「共に商品開発をする視点から、もう一歩深い取り組みを行います。例えば、開発した商品を売るためのマーケティング戦略設計です。ネットで売るにはデジタルの知見、小売店で売るには棚割の知見、リピート買いは商品の品質や効果性が求められますので、それらをワンストップで提供します。協議段階では、相手先の消費者属性、今後の消費動向や潮流を加味した上で、データに基づく商品企画を行います。合意を得た段階で当社が原料の安定供給を担い、アライアンス先の各大学で商品へのCBD配合設計と、適切な臨床試験を実施し、有用性エビデンスを取得します。その後、協業先にて量産化、既存販路を活用して、美容や健康に敏感な新規層の獲得を狙うといった取り組みです」

ウェルネスの一環 デジタル経済開発も
――最後に全体的な事業戦略をうかがいます。

 「当社の事業は短・中・長期の3つのステージで明確なテーマがあります。短期のテーマは、模倣困難なブランド開発です。順次エビデンスを取得したウェルネス製品を上市し、惹きつけるブランドクリエイティブと、デジタルマーケティングで加速成長を目指します。今回お話したCBDブランドも該当しますが、他に、東京大学と共同研究中の幹細胞培養上清液を配合したアンチエイジングブランドなど、複数のブランドが同時進行しています」

――中長期については?

 「中期のテーマは、デジタル経済圏の開発です。ユーザーのQOL向上を目的に遺伝子情報・生活習慣情報・生体情報などのデータを取得解析し、ウェルネス商品をレコメンド配信する情報基盤技術です。私自身がデジタル出身ですので、既にビジネスアウトラインは終えています。長期のテーマはウェルビーイングシティで、地域住民の健康・美容指数のアップを目的とした技術開発です。説明の便宜上、短中長期としましたが、すべてウェルネスに関連した事業であり、継続して進行されるとご理解ください」

【写真=プレミア・ウェルネスサイエンス細山 紳二 代表取締役】

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