AIFN、ACCJ主催 「日本の法規制公開シンポジウム」基調討論~①(2014.5.8)

登壇者三人セット 写真①

AIFN、ACCJ主催 「日本の法規制公開シンポジウム」基調討論
「健康食品の規制緩和その意義とあり方」

竹中平蔵氏(慶應義塾大学教授) 「プリンシプルを政府 ルールづくりは民間で」
宮島和美氏(日本通信販売協会理事) 「GMPや届出制など果たすべき義務も」
関口洋一氏(健康食品産業協議会会長) 「個人、社会、企業 三方ともにメリットを」

 オバマ大統領が国賓として来日した翌日の4月26日、国際栄養食品協会(AIFN)と在日米国商工会議所(ACCJ)は昨年に引き続き2回目の開催となる「日本の法規制シンポジウム」を都内で開いた。この中で最も盛り上がったのは、お昼時に催された基調討論だろう。小泉政権時代に規制改革の旗振り役を務め、現安倍政権でも産業競争力会議のメンバーでもある竹中平蔵・慶應義塾大学教授が登壇。そこに、消費者庁で健康食品など食品の機能性表示制度の検討会委員を務める関口洋一・健康食品産業協議会会長(ニッスイ執行役員)と、宮島和美・日本通信販売協会理事(ファンケル社長)が加わるかたちで、健康食品の規制改革の意義と新制度のあり方をめぐる意見を述べた。

成長戦略 どう評価するか

竹中 「去年1年で日本の株価は57%上がった。私たちはバブル経済を1980年代後半に経験しているが、その時の年間株価上昇率は50~60%。アベノミクスは間違いなくグッドスタートであったといえる」

 「その中で安倍総理のメンターでもある米エール大学の浜田宏一先生は成長戦略に関して厳しい評価をした。第一の矢の金融政策はAだ、第二の矢の財政政策はBだ、しかし第三の矢の成長戦略はEだ、ABEで『安倍』だとおっしゃったわけだが、成長戦略は進んでいるのかといえば、私は進んでいると思う。第一、第二の矢は需要を直接増やす政策で、短期に効果が表れる。しかし第三の矢は仕組みを変えなければならないし、経済の需要ではなく供給サイドに非常に大きな影響を与えるものであり、数年単位で時間が掛かる。第一、第二と第三の矢を同じ平面で比べるのはフェアではない。そこはしっかり見なければならない」

 「成長戦略の肝はなにかといえば、一にも二にも規制改革。残念ながら日本には『岩盤規制』と呼ばれる非常に強い規制が幾つか残っている。分かりやすい例でいえば農業や労働の規制。そうした規制の象徴のようなものを、アベノミクスの中でどのように壊していくのかを世界の投資家は見ている」

 「日本の株価は57%上がったと申し上げたが、その背後には外国人が約15兆円の買い越しを行ったことがある。これは史上最高額だ。ところが先月1カ月をとってみると、外国人は1兆円強を売り越している。これが12カ月続けば、単純計算だが、去年の買い越し額が消えてしまう。その意味で、規制改革を日本政府は本気でやるのか世界中が注目している。規制改革は幾つもあるが、安倍総理自らがスピーチの中で触れたサプリメントの機能性表示の話も、その中の極めて重要な部分であろう」

関口 「安倍内閣の規制緩和は情報に対する規制緩和だと思っている。特に健康食品産業における機能性表示というものは、いくら研究しても書いてはいけないと言われてきた。これをあるルールのもとで開示して良いということになれば、私どもとしては、非常に未来は明るいと思っている」

宮島 「化粧品を例にとると、ここ数年は低価格化粧品が非常に売れていた。昨年あたりから若干変わってきたのは、比較的価格の高い商品、あるいは高級化粧品と呼ばれる商品が比較的回転するようになっている。私どもファンケルとしても上級ラインの売上げが非常に良くなってきたこともあり、消費は着実にプラスに動いていると思っている。非常に良い方向に動いている」

規制改革と機能性表示

竹中 「日本で規制緩和が進まないのは何故か。要因は様々だが、例えば原子力発電と同様、『超安全神話』のようなものがあり、100%、120%の安心・安全を求めようとする。日本の消費者がそうした性向を持っているという面もあるが、それ以上に、規制官庁の方が何か問題があった時にマスコミや国会に叩かれたくない。はっきり言えば、アリバイづくりのために非常に過剰な反応をするところがあると思う。それにより、規制緩和するときに非常に限定的なものにしてしまう傾向がある。しかし、規制緩和をしっかりやっていかないと私たちの経済は回らない」

関口 「機能性表示容認は大事だと安倍総理はおっしゃった。大事だという中には企業の健全な発展のほかにも、平均寿命は伸びた一方で健康寿命の差が男女ともに10歳以上もある社会において、個人にとってはQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上、社会にとっては医療費の削減があるのではないか。健康産業、個人、社会の3つにとってメリットがあるというのが一番大事だと思う」

 「食品の機能性が最も機能を発揮できるところは、健康なヒトが健康なまま過ごせる確率を上げるということ。食品の機能は、白黒はっきり言うのは難しく確率的にしか言えない。前消費者委員会委員の田島眞先生流にいえば『グラジエント』な効果。私ども産業界としては、そういう効果をしっかり検証し、上手に消費者に伝え、先ほど申し上げた三方一両得の状況をつくれれば良い。機能性表示容認を産業界としてもサポートしながら、そうした状況をつくっていきたい」

宮島 「いわゆる健康食品という言われ方をして20年経つ。たしかに草創期の健康食品というのは未だ巷間で言われているように、悪い面をずいぶん喧伝されていたことは事実。しかし、現在は研究機能、生産機能などがはるかに発達し、信頼のおける商品を提供できるようになった。自分達でつくっている商品はすごく大事であり、悪いことばかりメディアで取り上げられるのでは商品が可哀そうだと私は思っている。我々のつくっている健康食品の良い面を取り上げて欲しいし、そういう面をみて欲しい」

 「なにかというと健康食品には否定形がついて回るが、決してそんなことはない。セルフメディケーションの一貫、予防医療の一貫として十分に機能する。お客様によっては、体が悪くなれば薬を飲むという方や三度の食事をしっかり摂って健康を維持するという方のほか、食事に加えてサプリメントも摂るという方もいらっしゃる。お客様には選択する権利があるのだから、正確な情報を流して欲しいと思う。先ほど関口さんが平均寿命と健康寿命のお話しをされたが、我々の提供するサプリメントは十分に健康寿命に貢献できると思っている。せっかく良い機会がきたのだから、ぜひこの機会を前向きに捉え、健康食品は良いものだと考え方を改めていただきたい」

竹中 「関口さんと宮島さんのご意見に触発されて一点申し上げたい。安倍総理が健康食品の機能表示の問題を取り上げたのは、日本の課題である財政健全化の問題に健康食品、サプリメントが極めて大きな役割を果たすという強い認識があるからだと思う」

 「過去20年の日本の財政赤字の拡大をみると、国債費を除いて拡大の95%が社会保障関連となっている。その問題を放置しておいて財政再建はあり得ない。消費税を30%に上げても無理。社会保障関係というと、年金のボリュームが大きいのでその議論が先行するが、伸び率が一番高いのは医療だ。健康という問題を、医療とそれを支える国の財政で解決するだけではなく、マーケットを通した健康食品の問題で解決する。そういう別のルートをしっかり確立しなければこの問題は解決できないという強い確信が安倍総理にはあるのだと思う」

 「健康寿命は今後伸びる。健康寿命が今後5年以上伸び、そこから寝る時間、食事の時間、仕事の時間を取ると、私たちの『可処分時間』というのが出る。いままでより1割近く人生の中で増える。だから金持ちになれるかは分からないが、間違いなく私たちは『時持ち』にはなる。それをつなぐのが健康食品の社会的な、歴史的な役割。マーケットを通して消費者にそれを理解してもらい、市場規模を広げ、国の財政に負担を掛けないでやっていくという大きな時代認識を、安倍総理はお持ちなのではないかと思う」

【続く AIFN、ACCJ主催 「日本の法規制公開シンポジウム」基調討論~②

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