NAG、提案強化の動き 独自市場創出の狙いも(2014.5.22)


 N‐アセチルグルコサミン(以下NAG)の配合提案がふたたび強化されている。保湿作用の美容食品素材として普及が進んだが、近年では関節対応素材としての需要が増加。グルコサミン塩酸塩より少なくても済む配合量が受け、その代替原料的なニーズが強い傾向だ。ただ、ここにきてグルコサミンとNAGは分けて考えるべきだとする強い主張も出てきた。NAGの独自市場創出に向けて原料メーカーがアクセルを踏んでいる。

 NAGとグルコサミン塩酸塩の構造上大きな違いはアセチル基の有無のみで、どちらもアミノ糖に分類される。だが、生理活性の面からみると作用、メカニズムともに異なるとされる。

 城西大学薬学部の和田政裕教授らは、DNAマイクロアレイを使った動物実験で、NAGのヒアルロン酸産生遺伝子の発現量はグルコサミンより高いこと見出すなど、遺伝子発現の面からもそれぞれ特異性を持つことが示唆されている。

 NAGを主要原料とする最終製品の動きを見ると、キューサイが12年に発売した「グルコサミンZ」(30包入り・税込5091円)の売上げが順調に伸びている。これにより、同社親会社コカ・コーラウエストの13年12月期ヘルスケア・スキンケア事業の売上高は1.2%増の369億7900万円となった。

 同品は、NAGを1包当たり500㍉㌘配合したもの。1日当たり摂取目安量も1包として飲み易さを訴求。関節対応健康食品では引き続き飲み易さに対する消費者ニーズが高いとみられ、同社では13年に発売した別の関節ケア向け商品でもNAGを採用、その消費量を底上げしている。

 NAGの原料市場規模は現在、120~130㌧前後とみられる。焼津水産化学工業が過半数のシェアを握る中で、日本水産、甲陽ケミカルによる国産品のほか韓国製原料を中心に市場構成されており、関節向け需要拡大も受けて各社の販売量は堅調に推移。性状などの面で品質向上を図ったビーエイチエヌでも引き合いを集めている。

 そのような中で原料市場の動きが改めて活発化している。協和発酵バイオが、エビ・カニ由来NAGでこのほど新規参入した。塩酸塩、発酵品の既存ラインアップにNAGを新たに加えることで、提案の幅を広げたかっこう。グルコサミンに関して要望の多かったドリンク類製品開発の需要に応えたいという。

 また、市場初のイカのキチン由来NAGを甲陽ケミカルが今年3月から市場に投入。これに続く新原料として、同じく初の発酵品を年内にも上市する計画だ。従来NAG原料に比べ、量産化により生産コストを抑えられるメリットがあるといい、これにより市場拡大を図る構え。

 エビデンス強化を図る動きも見られる。日本水産では臨床試験を昨年実施し、1日当たり300㍉㌘でも膝関節痛を緩和する効果が確認されたと論文報告した。従来よりも少ない摂取量でも膝に機能することが示唆されたことになる。

 「グルコサミン」という名称を持つこともあり、関節痛緩和目的で配合されることが近年増えているNAGだが、ここにきて原料事業者の一部からは塩酸塩とは分離してマーケティングするべきとの声が強まっている。関節対応というよりはロコモティブシンドローム対応での拡販を狙いたいとする声や、アンチエイジング機能を打ち出していきたいという意向が聞かれる。

Clip to Evernote

ページトップ