消費者委、機能性表示で答申 9項目の実施前提に(2014.12.11)
消費者委員会は9日、内閣総理大臣から諮問のあった食品の新たな機能性表示制度の食品表示基準案を審議し、「諮問案のとおりとすることが適当」と答申した。2日にも審議していたが、複数の委員が制度の脆弱性を強く指摘したため答申を見送っていた。再審議の上でまとめられた答申書では、諮問案を了承する前提条件として9項目の実施を要求。違法に機能性表示を行う事業者に対して行政処分を行える権限などの法的基盤を、制度の「実施後すみやかに補強・整備すること」などを求めた。
答申を受けて消費者庁は今後、厚生労働省や農林水産省等の関係省庁などと協議を行い、施行通知、ガイドラインの発出準備を進める。来春に新制度を実施する。
2日の審議で消費者委が最も問題視したのは新制度の法的な位置づけや根拠だった。食品の機能性表示制度は、食品表示法第4条1項に定める食品表示基準に規定されるが、特定保健用食品が健康増進法26条第1項に規定されているような法的位置づけがない。
9日の審議後に会見を行った消費者委の河上正二委員長は、「(食品の機能性表示)制度を強固なものにするためには法的基盤の増強が必要だという認識は変わらない」とコメント。だが、「制度が上手くワークすれば、健康食品を健全な方向に向ける一方策として期待できる」とも述べ、それを理由に答申を取りまとめたと話した。
消費者委は2日の審議の時点で、法的基盤の補強・整備など5項目の付帯意見を付けた答申書案を準備していたが、9日にまとめた答申書では付帯意見ではなく「実施を前提」と記載。これにより問題意識をより強く表現した格好だ。「委員会としても制度の執行状況を注視していく」(河上委員長)。
イメージ広告、処分強化も要望
消費者委員会が9日にとりまとめた答申書では、機能性表示食品制度の法的基盤の強化のほかにも、新制度に関する多くの規定が盛り込まれる一方で、消費者委としても内容を確認できぬままとなったガイドラインの内容についても触れ、「(消費者庁)検討会報告書」のうち「食品表示基準に記載されていない事項が全て網羅」されるよう求めた。
また、届出後に科学的根拠がないと判明したり、安全性に問題があったりした場合に「早急にかつ適切な行政処分や罰則」を科せるよう、所管省庁に対して「定員・予算を含め十分な執行体制が構築される」よう要求した。ほかにも、科学的根拠のないイメージ広告などに対する「行政処分の強化」、サプリメントに関して「GMPに基づく製品管理の推進」など、9項目の実施を強く求めた。
一方、事前届出制により届け出された情報がインターネットで公開されて誰でも内容が確認できる制度にしたことなどは評価した。
施行2年待たずに見直しも 消費者庁・川口次長が表明
消費者委員会が9日に開いた食品の新たな機能性表示制度の食品表示基準案の再審議には、前回審議で法的根拠が問題になったこともあり、消費者庁の川口康裕次長が出席し、新制度は「食品表示法の委任の範囲内で食品表示基準に規定される」と改めて法的根拠を説明し、委員に理解を求めた。
川口次長はガイドラインについても説明。委員から、「ガイドラインを理由に行政処分することはできないのではないか」という指摘が出ていたが、「直接の根拠として処分することは勿論できない。あくまでも根拠は食品表示法の要件を満たしているか」になると述べた。
新制度の見直し時期についても言及した。制度上の問題があった場合は、予定の時期よりも前に検討を行うのが「当然のことだと考える」と発言。予定の「施行後2年」に至らない段階でも、施行状況を踏まえて見直しに踏み切る考えを委員に表明した。
【写真は河上正二消費者委員会委員長(写真左)と、川口康裕消費者庁次長(写真右)】