プエラリア問題 厚労省対応 製造管理の徹底 指導へ (2017.9.7)


 国民生活センターが「若い女性に危害が多発」しているなどと注意喚起したプエラリア・ミリフィカを含む健康食品をめぐり、厚生労働省は4日、原材料の安全性管理を含め、全製造工程を通じた適正な製造管理の徹底を事業者に指導する方針を決めた。適切な管理に対応できない事業者に対しては、製品の取扱中止も含めた対応を取るよう指導する。また、不正出血や生理不順などの健康被害リスクがあることを消費者に情報提供するよう求める。近く自治体などに通知を出し、自治体を通じた指導に乗り出す。

 厚労省は、月経不順など女性特有の生理作用に影響を及ぼしていると考えられる若い女性からの健康被害情報が急増しているなどとして国センが7月に行った注意喚起を受け、先月24日、およそ5年ぶりに新開発食品評価調査会の有識者委員会合を開き、プエラリア含有健康食品への対応検討に本格着手していた。4日、調査会の第2回会合で適正な製造管理の徹底を事業者に指導する通知を発出するなどの対応策を示し、委員からおおよその了承を得た。

 適正な製造管理の徹底に関する事業者への指導にあたっては、厚労省が05年に発出した通知「錠剤、カプセル状等食品の適正な製造に係る基本的な考え方について」および「原材料の安全性に関する自主点検ガイドライン」の徹底を強く求める通知を発出する方針だ。現状では05年通知への事業者対応が不十分だとの認識があり、特に、「自主点検フローチャート」も提示している原材料の安全性ガイドラインの徹底を強く求める。

 厚労省は対応策を検討するにあたり、プエラリア含有健康食品を取り扱う事業者に対し、GMP(適正製造規範)の遵守状況、活性成分の管理方法などを尋ねる地方自治体を通じた調査を実施。その結果、調査対象となった現在市場に流通している68製品のうち、事業者がGMPを遵守していると回答したのは45品、活性成分の定量は18品にとどまった。
 また、プエラリアに含まれる植物性エストロゲンの中でも強い女性ホルモン様作用を持つとされるミロエストロール、デオキシミロエストロールを定量していたものはなかった。こうした調査結果を調査会の委員は問題視。ミロエストロールなどの活性成分を「管理できていないとGMPを遵守しているとはいえない」「GMPを(最終製品の)製造管理ラインだけと捉えているのではないか。(原材料の品質確保も含めた)両者が遵守される必要がある」と、原材料の安全性確保が実施できていないと指摘する意見が上がっていた。
 一方で、ミロエストロールなどは不安定なため、「定量検査を検査機関に委託することは(現状では)困難」と厚労省も認める。定量分析の受託に対応できる民間分析機関は存在しないともいわれる。
 だが、厚労省はそうした状況下でも「危害の発生を未然に防止する観点」から成分管理を事業者に求める方針。調査会の座長を務めた国立健康・栄養研究所の梅垣敬三氏も、「イライザ法などで測る方法も報告されている。決して測れないわけではない。食品事業者の責務としてやっていただくしかない」とし、事業者は05年通知に基づき原材料の安全性管理を実施するよう要求。厚労省は今後、文献に基づく活性成分の分析方法を事業者に情報提供する

消費者に危害リスク情報提供
 厚労省は、対応策に、事業者から消費者への摂取時の注意事項に関する情報提供の強化も盛り込んだ。委員から「起こり得る悪影響について、事前に消費者に情報提供していくことが重要」だとする意見が上がったためだ。

 厚労省は、「不正出血、生理不順等の健康被害の発生が知られていること」まで消費者に情報提供していく方針。健康被害リスクに関する事前の情報提供を通じ、販売を規制するのでなく、消費者の摂取自体を抑制することで、健康被害を未然に防ぐ狙いがある。

 プエラリア健康食品への厚労省対応をめぐっては、同省が所管する食薬区分の取扱いが注目されていた。プエラリアは1997年ごろに「専ら非医」リストに収載、専ら医薬への区分変更が検討される可能性も取り沙汰されていた。

 結果的に、2回の会合を通じて区分変更を意見する委員はいなかったが、4日の会合では複数の委員から、強いエストロゲン活性を持つ成分を含むプエラリアを食品として販売できる現状を強く疑問視する意見が上がった。日本医師会所属の委員も、「強い対応を考える必要がある」。

 そのような中で委員のひとりは、糖尿病とC型慢性肝炎を基礎疾患として持つ男性がプエラリアを含む健康食品を摂取した後、急速に肝硬変に進行した症例資料を会合に提出。症例は1例であり、因果関係もはっきりしないものの、患者はその後死亡したという。

 ただ、座長の梅垣氏は会合後、「アマメシバのように重篤な事例が多く報告されているわけではない。因果関係もはっきりしていない。根拠がない状況で流通を全部禁止するようなことは難しい」とし、食品としての販売を禁じるような対応には反対。そうではなく、原材料の安全性確保を含めた製造管理におけるGMPの実施の徹底と、消費者への健康リスクを含めた情報提供を強化することで、この問題には対応できるとの考えを強調した。

 一方、厚労省はプエラリア健康食品への対応策をまとめるにあたり、健康食品全体に関する「今後の論点」も取りまとめた。3つの論点の冒頭では、健康食品の適正な製造管理のあり方について「実効性のある仕組みを構築する必要があるのではないか」と問題提起している。

 消費者庁の発足以降、厚労省は健康食品行政から距離を置いていた感が強い。ただプエラリア問題を受け、姿勢を変えるのかもしれない。示した論点は、事業者が原材料も含めた適正な製造管理を実施するための「実効的な仕組みづくり」に、厚労省としても関与すべき必要性を認識していることを示唆したものと考えられる。


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