消費者庁 保健機能食品等 品質管理徹底を 処分厳しく 
(2017.10.26)


 消費者庁が保健機能食品などへの景品表示法執行を厳格化している。品質管理を怠るなど、許可要件を満たさない商品を販売することは、優良誤認に該当すると判断し、行政処分する。許可要件からの逸脱がわずかであれ、事業者の「責務」を怠ったものとみなし、厳正に対処していく構えだ。処分の続くことが予想される。

 同庁は19日、医薬品・食品製造販売キッセイ薬品工業に対し、景表法違反があったとして措置命令を行い、発表した。処分対象は、昨年11月まで販売されていた腎不全患者向け低タンパク質食品(特別用途食品)2品。タンパク質含量が許可要件をそれぞれ超過していたにもかかわらず、特別用途食品として消費者庁長官の許可要件を満たしたものであるかのように表示していたとし、優良誤認を適用した。

 ただ、許可基準値からの超過量は最大「0.4㌘」。一方で、同庁は今回、「製品規格値の基準を満たすための品質検査の管理が行われていなかった」ことを違反事実として認定し、「そもそも特別用途食品の要件を満たしていない」(表示対策課)として処分を下した。

 同社はタンパク質含量の分析を、外部機関に委託する形で製造ロットごとに実施していた。だが、「(分析結果を)チェックしていなかった。チェックするための手順書もなかった。そもそも許容値が理解されていなかった」(同)などと同庁に指摘された。同社でも、「社内で許可基準や製品規格に対する誤認があり、その点に対するチェック体制に不備があった」(16年11月2日付ニュースリリース)などと不備があったことを認めている。

 特別用途食品に関する景表法に基づく措置命令は初だが、同庁は今年2月、関与成分量や関与成分そのものが許可要件を充足しない特定保健用食品を販売していた企業に措置命令を下している。企業側の主張と食い違う面もあるが、関与成分の定量分析の未実施など品質管理の不備を違反事実として認定。約5500万円の課徴金の支払いも命じた。

 このトクホの問題を受けて同庁は今年2月、トクホや機能性表示食品について、景表法違反事案に接した場合は「厳正に対処」する法執行方針を公表している。方針に基づき、今回キッセイ薬品に行政処分を下した。

 この方針には、「表示実態の把握」に取り組むことも明記されている。許可あるいは届出範囲を超えた表示が行われていないかどうかの監視を毎年度実施するとしており、ここにきて機能性表示食品の事後監視が強化されているのも、この方針に基づくものと考えられる。

 今年、同庁の買上調査によって関与成分量の不足が発覚したトクホがある。機能性表示食品でもそうした製品が一部で見つかっている。すでに失効届出が提出されたり、販売が取り止められたりしているものもあるが、今後、行政処分が行われる可能性がある。

 今回問題となった特別用途食品2品のタンパク質含量超過が公表されたのは昨年11月2日。トクホの関与成分問題を受け、同庁が実施した特別用途食品の品質管理調査で明らかになり、同庁が公表していた。

 この際同庁は、キッセイ薬品工業に対して許可取消し処分を行う考えはないことを明言している。許可要件を満たさないトクホを販売していた企業に対し、トクホ制度施行以来初の許可取消し処分を下していたにもかかわらずだ。ただ結局、同社は同月7日付で2品とも失効届を行った。

 当時、同庁の岡村和美長官は、「(トクホ関与成分問題のように)不備であることを分かったまま2年以上も放置していたのとは違う」などと述べ、悪質性はなかったとの認識を示していた。それに加え、「薬品会社」(岡村長官)でもある同社の品質管理体制を信頼するかのような発言もしており、単なる「ケアレスミス」と受け止めていたふしがある。実際、岡村長官は、超過量は「微量」だとの認識も示していた。

 それからおよそ1年後に下された今回の措置命令。トクホや機能性表示食品に関する景表法違反に対して厳正に対処する同庁表示対策課の方針は、かなり強固なものと言えそうだ。ケアレスミスだとしても、見逃す気はさらさらないのかもしれない。

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